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ラントリップの魅力に開眼!「せとだレモンマラソン2024」体験記 後編

2024.03.18

瀬戸内海の島々を結ぶ「瀬戸内しまなみ海道」の中間地点に位置する、“レモンの島”こと生口島(広島県尾道市)。この島で開催される「せとだレモンマラソン」は、瀬戸内海の青い海やたわわに実ったレモンなど、島の情景を楽しみながらロードを駆け抜けるというマラソン大会だ。通常のマラソン大会では給水用カップやペットボトルなどのプラスチックごみが大量に出るのだが、この大会ではごみの出ない給水システムの導入とマイボトル・マイカップの携行をルール化し、環境負荷の低減を掲げている。

そんなメッセージに賛同するGoldwin事業部の3人のランナーがこのレースに初参加。Goldwin事業部で「CAKE」のマーケティングを担当する伊藤祐実さん、同事業部で商品企画のマネージャーを務める黒田優さん、海外販売部のマネージャー、宮内聡子さん、それぞれのレースを振り返る。

940名のランナーがレモンの島に集結

2月24日午前10時。開会式が行われる生口島・瀬戸田町の瀬戸田市民会館に、続々とランナーが集まってきた。ゼッケンにはランナーの居住地も記載されているが、地元・広島県ほか、東京都、神奈川県、大阪府……と実にさまざま。全国から集まった約940人のランナーは、大会オリジナルのレモン体操でウォームアップした後、スタート地点となるしおまち商店街へ向かう。

「しおまち商店街」の会場周辺では、大会関連イベントとしてレモンマルシェが開催されることになっており、レモンや柑橘のドリンク、フードを提供する屋台やキッチンカーが開店準備を始めている。この大会では、マラソンをきっかけに生口島の魅力を多くのランナーに広めたいと、レース前後の滞在や瀬戸田ならではの食体験といった観光コンテンツにも力を入れているのだ。

午前11時、初めに「キッズラン」、次いで「ハーフマラソン(21.0975km)」、そして「シーサイドラン(9.1km)」と、10 分の間隔を空けてカテゴリーごとにランナーたちがスタートする。「シーサイドラン」はしおまち商店街から瀬戸田港の前を左折し、しまなみの「シーサイド」へ。サンセットビーチの前を通って折り返し地点で折り返し、瀬戸田港でゴール。海抜けのロードを気持ちよく走れるエントリー向けのコースだ。「ハーフマラソン」のコースは、しおまち商店街を後にしたら高根大橋を渡って高根島に渡り、島を反時計回りで回った後に再び高根大橋で生口島へ。最後は「シーサイド」に合流して海沿いのフラットなロードを走り、瀬戸田港でゴールする。前半の高根島では山の斜面に広がるレモン畑沿いがコースになっているが、細かなアップダウンが延々と続く。この区間がポイントになりそうだ。

ハーフは前半のアップダウンがカギに

11時10分、ハーフマラソンを走る宮内聡子さんがしおまち商店街をスタート。およそ600mのしおまち商店街は古い建物や昔ながらの商店が軒を連ね、県外からのランナーは観光気分を味わえる界隈だ。商店街の先にある瀬戸田港で右に曲がり、高根大橋へ向かう。高根大橋までは急な登り坂、橋を渡り切ったら今度は急な下りが待ち構える。高根島に渡って橋を下ると多々羅大橋を一望するフラットな道がしばらく続き、そこから海岸沿いを離れて一気に山道へ。道幅も狭くなり、急勾配の坂道が続く。

「この区間はロードの大会と思えないようなキツい山道で、想像以上に脚にきて気持ちも萎えました。それが6kmを過ぎたあたりで突然視界が開け、穏やかな海の風景が広がります。この景色に癒されたことで気持ちも復活して、『このままいけるかも』って持ち直して」(宮内)

一方、「シーサイドラン」を走る伊藤祐実さんと黒田優さんは、宮内さんの10分後にスタート。しおまち商店街を抜け、瀬戸田港でシーサイドに入り、折り返し地点まで進む。

「商店街を抜けるまでは一緒に、その後はそれぞれのペースで走りました。なんとか黒田さんについて行こう、その気持ちだけがモチベーションでした。シーサイドに入って早々に先行され、『いっちゃった!』と思って慌てて追いかけたら、どうも違うランナーを追いかけていたようで。最初のエイドで給水していた黒田さんに後ろから抜かれ、びっくりしました(笑)」(伊藤)

「レース経験があるのに祐実さんに負けると月曜の朝礼で何か言われそうなので(笑)、とにかく抜かされないようにがんばりました。逆に、私のモチベーションは祐実さんが追いかけてくれたことだったかもしれません」(黒田)

個性的なエイドと地元の声援がランナーを後押し

コース上の何ヶ所かで設けられたエイドステーションでは、ランナーは参加賞として渡されたソフトボトルやカップで給水する。ここでは水やレモン水のほか、「はるか」「ネーブル」といった旬の柑橘も振る舞われた。

「とにかくレモン水がおいしくてびっくり。水ってこんなにおいしいものだったのかって」(伊藤)

「朝食はしっかり取ったのですが、エイド食も楽しみました。特によかったのはネーブル!ボトルを携行しながら走るレースは初めてでしたが、全然苦じゃない。どころか、好きなタイミングで水を飲めるのはありがたかった」(宮内)

この大会では、エイドや沿道に集まる地元住民の応援もランナーたちの楽しみの一つ。住民たちが手作りのボードや即席の楽器でランナーたちに声援を送っている姿があちこちで見られた。中には、柑橘のジュースを振る舞う農家の姿も。

「ロケーションもすばらしいけれど、とにかく地元の皆さんの声援に和みました」(黒田)

「ゼッケンにはランナーの居住地が記されているのですが、それを目にしたおばあちゃんたちが『東京からわざわざ走りに来てくれたの!』って、すごく喜んでくれて。方々で声をかけていただいたことが思い出になっています」(伊藤)

そうこうしているうちに、シーサイドを走った2人は無事にゴール。ハーフマラソンを走る宮内さんを応援しようと、瀬戸田港周辺で宮内さんの到着を待ち構える。そのころ宮内さんは、生口島へ戻ろうとしているところだった。

「高根島の一周を終えて高根大橋を渡った最後の下りで、脚が攣ってしまいました。シーサイドの9kmが残っていますが、痛くて走るどこじゃない。こちら側には会社の同僚がいるのでひとしきり弱音を吐いて、シーサイドに差し掛かったら2人が待っていてくれて」(宮内)

「すごく痛そうだし、『もうリタイアしたら?』って言ったら、『ぜったいにやめられない』って言うんです」(伊藤)

足を引きずる宮内さんの後ろを、声をかけながら伴走する伊藤さんと黒田さん。折り返し地点を過ぎると、伊藤さんと黒田さんに加えてほかの仲間たちも伴走に加わり、ドラマのような展開に。それに応えるようにどうにか9kmを走り切り、制限時間ギリギリでゴール!

想定以上のドラマがありつつも、3人ともが無事に完走を果たした「せとだレモンマラソン2024」。ビギナーの伊藤さん、レースは久々という黒田さんと宮内さん、それぞれにとって感慨深い大会となったようだ。

「地元の皆さんの声援も含め、こんなに応援してもらう経験って他ではなかなか味わえませんから、いい思い出になりました。最後はちょっと恥ずかしかったですが」(宮内)

「『シーサイドラン』のランナーは給水にソフトカップを使うのですが、これが使いやすくて良かったです。紙コップが散乱していないエイドで、好きなタイミングで給水するというスタイルは想像以上に快適でしたが、カップとスマホでランショーツのポケットがパンパンになるので、ポケットの容量を考慮したウエアリングが必要かも」(伊藤)

「このあとは温泉に入っておいしいものを食べて、明日は観光して。旅を兼ねて地方の大会に参加するのは楽しいなって、あらためてラントリップの魅力に触れました。参加ランナーも若くておしゃれな人が多くて、市場調査もできて一石二鳥」(黒田)

来年の「せとだレモンマラソン」も、もしかしたらエントリーするかも、という3人。

「初めてのマラソン大会の目標は、『これでランニングをやめない』こと。友人や仲間と走る、こちらで知り合った人と一緒に走る、そうした楽しみを知ることができたのは、今回の最大の収穫だったと思います。今回のような旅感のある大会なら、記録狙いではなく楽しみのために参加してみたいと思っています」(伊藤)

「とはいえ、やっぱり練習不足を痛感したので、次に出る時はもっと練習して自分を追い込まないとだめですね」(宮内)

次回、3人のさらなる走りっぷりに乞うご期待!

(写真 茂田羽生 / 文 倉石綾子)

  1. 伊藤祐実(いとう・ゆみ)
    三重県伊勢市出身。前職はデザイン・アート関係の会社。ゴールドウインのコーポレート・アイデンティティや60年誌の編集に携わった縁で、2013年に入社。「こころとカラダを整える」を提唱するショップブランド「Saturday in the park」を経て「Goldwin」「C3fit」のマーケティング担当に。今年度から「CAKE」のマーケティングを担当する。体育的なスポーツ経験はほぼないが、ヨガは好き。心身のバランスを調えるアクティビティの効果と価値を信じている。
  1. 黒田優(くろだ・ゆう)
    広島県広島市生まれ。4歳で始めた水泳で全国大会に出場する。高校卒業後に進んだ大学では、ライフセービング部に所属し、静岡県下田市のビーチで活動。ライフセービングのインストラクター資格を取得し、社会貢献活動にも携わる。大学卒業後、アウトドアメーカーの企画・開発としてキャリアを積んだのち、2020年にゴールドウインに入社。現在はGoldwin事業部で商品企画のマネージャーを務めている。
  1. 宮内聡子(みやうち・さとこ)
    神奈川県横浜市生まれ。中学入学と同時にバスケットボール部に入部。以来、生活の中心をバスケが占めるというライフスタイルを大学卒業まで続ける。卒業後は社会人チームに所属、現在も月に2〜3回程度、仲間を募ってプレーを続けている。2008年に新卒でゴールドウインに入社すると、同僚たちとスキーやスノーボード、登山に取り組むように。入社時から海外営業に従事し、現在はGoldwin事業本部の海外販売部のマネージャーとして、主に欧米エリアでのブランドのグローバル進出に尽力している。

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