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ラグビーが100倍楽しくなる、ビギナーのための観戦TIPS

2023.09.29

2019年以来、4年ぶりのビッグムーブメントが訪れているラグビー。連日の熱戦で、すっかりラグビーファンになったという方も少なくないはずです。ここではラグビーを100倍楽しむためのコツを、ラグビー経験者で、カンタベリー事業部に所属する谷口信孝さん(写真左)と國生行大さん(写真右)に解説いただきます。

 

ド迫力!ぶつかりあいとスピードを体感せよ!

谷口
「海外で行われている代表戦をテレビ中継で観戦して、ラグビーというスポーツに興味を持ったら、まずはラグビー場に足を運び、生で観戦していただきたいと思います。というのも、ラグビー場で応援するのとテレビ中継を観戦するのでは、まったく違う楽しさがあるからです。

まずは音。選手同士がぶつかり合う音は迫力満点で、テレビでは得られない臨場感を味わえます。たまに『パーンッ!』という破裂音が聞こえることがありますが、人間の身体って、クリーンヒットするとこんな音がするんだ、ってびっくりするはず。それから選手の大きさを間近に見ることができること。テレビでのサイズ感に比べると、実物は段違いに大きい。その大きさを体感できるのは生観戦ならではですね」

谷口さん

國生
「コンタクトスポーツだからこその力強さ、迫力はラグビーの醍醐味ですね。あと、ポジションがいろいろあるので、背の低い人、足の速い人、身体の大きい人、いろいろな個性を備えた選手が活躍しており、好みの選手を見つけやすい。推しがいると試合の応援にも自ずと力が入ります。

中継ではボールばかりがフォーカスされますが、実はボールを持っていない選手たちの動きもポイントだったりします。後ろの方で守っている選手が次のプレーに向けてなにやら仕掛けている、みたいな動きに注目してみてください。次のプレーを想像しながら観戦すると、さらに奥深いラグビーのおもしろさを感じられるはずです」

國生さん

谷口
「衝突をかわしながらトライに向かうスピード感もラグビーの魅力。ピッチの両端に位置するウィング(ウィング・スリークオーターバック)というポジションは、チーム一の俊足揃い。彼らがボールを持つと凄いんですよ。ものすごくガタイのいい選手がボールを持って猛スピードで駆け抜け、それを2m近い別の大男が全力で追いかける。凄まじい鬼ごっこの様相でドキドキします(笑)」

ポジション図解(谷口さんはFL,No.8がメイン 國生さんは学生時代はFL、現在はSH)

國生
「細かいルールはさておいて、大男たちが死力を尽くす鬼ごっこの感覚で観戦するのはおもしろいかもね。ラグビーはボールをもってトライ、もしくはキックで得点するというシンプルなスポーツなので、ボールか選手の動きに注目して見ていれば、それだけで十分楽しめますから。サッカーのように両チームが入り乱れないので、初心者でも見やすいんです」

 

見応えありの空中戦 

――試合中、「こんなところに注目しよう!」というポイントがあったら教えてください。

谷口
「ボールを持った選手がタックルされて倒れて、そこにボールを奪いに来た他の選手がだんご状になっているところを見かけませんか?あの密集戦をラックというんですが、タックルを受けて倒れた選手のボールを、両チームの選手が手を使わず、押し合って奪い合っているんです。あの状況からどうボールを確保するかが見ものですね。

あとは、高さを競うセットプレーのラインアウト。サッカーでいうスローインです。ラインアウトは、投げ入れられたボールを奪うために2人がかりで1人の選手を持ち上げますが、2m近い選手を2m近い選手が持ち上げるわけだから、ボールをキャッチする最高到達点が4、5mにもなる。これも別の意味で迫力があり、見応えがありますね」

國生
「スタンド前方にいるとジャンパー(持ち上げられた選手)と目が合いますからね(笑)。あとはスパイクが脱げちゃって裸足で走っている選手がいたり、さらにその選手がボールをもらっちゃったり(笑)、とにかくイレギュラーなことがいろいろ起こるから目が離せない。ぜひ、フィールド上のボール以外のところにも目を向けてみてください」

國生さんご本人提供写真(学生時代)

 

生で観戦すれば、憧れの選手と交流できる!

谷口
「ラグビー場で観戦すると何が楽しいかって、選手と交流できることですね。他のスポーツに比べて選手とファンの距離が近いんですよ。日本のトップリーグである『ジャパンラグビー リーグワン(以下、リーグワン)』の試合でも、試合後には選手が観客席の方にやってきてファンと交流しています。選手たち自身、ラグビーの裾野をもっと広げたいという気持ちが強いから、どんなに疲れていてもファンサービスを怠らない。それは代表戦でも同様で、世界中の選手がスタジアムに見に来てくれたファンと交流しています。そういう競技って他にはないと思うんですよね」

谷口さんご本人提供写真

國生
「だから、試合が終わってもすぐに席を立たず、選手との交流を楽しんでほしいですね。コロナ禍の前は、試合後に選手たちが観客席の縁に集まったファンとハイタッチするシーンが恒例でした」

谷口
「映画のエンドロールみたいなものですね。最後にサプライズがあるかも!みたいな気持ちで、最後の最後まで楽しめる。これが生観戦の醍醐味です」

 

日本と海外の応援スタイルの違い

――お二人ともラグビーの本場・ニュージーランドでのプレー経験がありますが、現地の応援スタイルと日本のそれとは違いがあるのでしょうか?

 

國生
「ニュージーランドは応援も個人プレーというのでしょうか、各々がそれぞれのスタイルやタイミングで熱狂しているイメージ。声を出したり立ち上がったり、感情の表現の仕方もフリースタイルです。一方、日本は黙って観戦していて、チャントをきっかけにみんなで一斉に声を出す感じ。統制がとれている感じがあります」

谷口

「ヨーロッパはまた全然違って、どこかから応援歌が自然発生して、それが会場中を埋め尽くしていく。あの一体感には圧倒されます。ホームチームもその一体感をアドバンテージとして試合に反映します。『ファンは16人目のプレーヤー』だと実感します」

國生

「みんなルールに詳しいから、ワンチャンありそうとか、ここは締めていこうという場面で、16人目としてきっちり仕事をしている。要所要所で一体感をもって応援してもらえるから、選手たちもうれしいんじゃないでしょうか。

試合前のハカ(※1)にしても、日本人は相手の文化をリスペクトしようということで静かに見守っていますよね? イングランドのファンなんて、自チームの応援歌を歌って相手のハカをかき消しちゃいますから。熊本の会場で行われた代表戦でのことですが、相手がハカを行っている時に勇気ある日本のファンがニッポンコールで声を出したんですが、誰もついてこなかった(笑)。そういう応援のあり方にも、それぞれの国の文化の違いを感じます」

※1マオリ族の伝統的なダンスであるハカはニュージーランドを中心とする各国のスポーツに取り入れられている。戦士の士気を高める演舞として親しまれており、ダンスを用いて試合の挑戦を行うのが通例である。

 

ユニフォームを着たらもっと楽しめる

――初めての観戦となるといろいろ心構えも必要そうです。会場であると便利なもの、用意しておくといいもの、頭にいれておくことがあったら教えてください。

谷口
「僕が誰かを誘う時はいつも、『着のみ着のままでいいよ!』と言っています。もし応援するチームがあるなら、ぜひユニフォームを買ってそれを身につけて応援してください。推しの選手が見つかったら、会場で選手グッズを購入することもできます。同じものを身にまとうことで一体感が生まれるし、選手のサインをもらえるかもしれない」

谷口さんご本人提供写真(私物のサイン入りユニフォーム)

 

國生
「試合の最後に選手と交流できると言いましたが、そのときにユニフォームを持っていると選手にサインしてもらえる可能性があります。僕が担当しているチームに赤や緑のユニフォームのチームがあるんですが、赤に黒字のサインだと目立たないじゃないですか。というわけで、ファンがサインをもらいやすいよう、多くのチームが白い応援Tシャツを販売しています。好きなチームのユニフォームを着て応援して、試合後はサイン用のTシャツを取り出して。選手だってそういう応援はうれしいはず」

谷口

「そうそう、会場でもビールを販売していますが、大人の方にはお酒との親和性がめちゃ高いスポーツというのもアピールしたい。ラグビーの本場でも飲みながら観戦するスタイルが定着しています。たとえば野球だと、イニング間にみんなで応援歌を歌ったり、5回裏終了時にグラウンドイベントが行われたりというように、ファンもなかなか忙しいですよね。一方、ラグビーには固定の応援スタイルがないので、のんびりビールを飲んでいられます」

 

――酔っ払ったファン同士でいざこざが起きることはないんですか? 

國生
「野球やサッカーはファンが座る場所が敵味方ではっきり分かれますよね。これは発券システムの違いからなのですが、ラグビーの観戦では両チームのファンが入り混じります。だから隣に敵チームのファンが座っていることも珍しくありません。おまけにみんな飲みながら観戦している。それでも観客席でファン同士の小競り合いがあったなんて、見たことないですね」

谷口
「選手同士がユニフォームを交換するように、ファン同士も応援ユニフォームを交換し合い、互いの健闘を称え合っていますよね。ノーサイドの精神がファンにも根付いているんです。敵チームのファンとの交流も、会場でのお楽しみにしていただければと思います」

國生
「ラグビーはもともと荒っぽいスポーツで、それこそ『倒れている選手は踏みつけていい』、みたいなところがありました。だから子どもにはやらせたくない、見せたくないと言われるようになってしまった。そこでルールを改正したんです。

荒っぽいスポーツだからこそ、試合が終わったら紳士的に握手しよう、互いを思いやる気持ちを持とう。そんな風に時代の流れをきちんと反映してきました。選手たちがフィールドで互いの健闘を称え合っているさまを目にしているから、ファン同士も揉め事を起こそうとは思わないのかもしれません」

國生さんご本人提供写真(写真中央)
國生さんご本人提供写真

 

ラグビーは多様性のスポーツ

――個性豊かなプレーヤーが縦横無尽にフィールドを駆け巡り、熱戦を繰り広げる。そんなラグビーの裾野をさらに広げるために、どんなことを期待しますか?

國生
「昔は危険なスポーツと言われていましたが、現在は誰でも始められる、多様性を備えたスポーツになりました。子どもにも勧められるし、実際、2019年には日本代表の戦いぶりを目にした子どもたちがラグビースクールの体験教室に殺到したという話も聞いています。

現在は高校で始めるというケースが多いようですが、子どもたちにはお近くのラグビースクールの門を叩いてみてほしいですね。ラグビーで養われるスポーツマンシップや相手を思いやる気持ちは、すべての競技に通じるはずです。もちろんスタミナや身体能力も」

谷口
「僕の目標は、ラグビーをもっと身近なスポーツにしていくこと。たとえばニュージーランドでは、親と一緒にスーパーに買い物に来ている子どもの手にラグビーボールがあったりします。そのくらい、日常に溶け込んでいるんです。ウエアやギアを手がけるメーカーの一員としては、公園で親子がキャッチボールをしたりサッカーのパス練習をしたりするように、ラグビーボールに触れ合ってもらいたいと思います」

國生
「『リーグワン』の開幕が12月に控えていますが、その前にプレマッチが始まります。選手や関係者は、代表戦の熱気をそのまま国内に持ち込みたいと思っているはず。日本代表として活躍した選手たちがそれぞれの所属チームにもどり、ワクワクするプレーを見せてくれるはずですから、ぜひ、各チームのグラウンドへ足を運んでほしいですね。真冬の開催ですが、試合内容によっては寒さが吹き飛ぶくらいアツくなれるはず」

 谷口
「ラグビーファンってラグビーを広めたくて仕方がないから、みんなすごく親切。会場で観戦すればわかると思いますが、頼まずとも詳細な解説を披露してくれる(笑)。だから、ルールがわからなくてもまったく心配ないです」

 

――最後になりますが、お二人の好きな選手を教えてください。

谷口
「好きな選手、たくさんいるからなあ……めっちゃ足の速い選手はラグビーっぽくていいですね。でもやっぱり、すごく身体が大きい、フィジカルの強い選手が好きですね。相手をなぎ倒していくさまを見るのが好きなんです」

國生
「うーん、そうですね……先ほどもお話したように、いろいろな個性のある選手がそれぞれ活躍しているから、誰か1人を挙げるのは難しいですねえ。強いていうなら、やっぱりリーチ(リーチマイケル、『東芝ブレイブルーパス東京』所属)かなあ。ラグビーってめちゃくちゃハードなスポーツなんですが、ピンチの局面には絶対、そこにいてくれる、みたいな。スタミナ、運動能力、精神面の強さ、危機察知能力のすべてに優れ、絶対的な安心感、信頼感を寄せられる」

谷口
「というように、推しを作るとラグビーはもっと楽しくなりますよ!」

 

  文 倉石綾子/写真 本人提供・SPORTS FIRST MAG )

 

写真左・谷口信孝(たにぐち・のぶたか)

1990年生まれ。大阪府貝塚市出身。小・中学校時代は軟式野球、ソフトボール、ドッヂボールなどさまざまな球技に取り組んだが、高校入学時にラグビー部に入部。高校2年次に肉体改造を行い、パフォーマンスが飛躍的に向上したことをきっかけにラグビーにのめり込む。大学4年時にはラグビーの本場、ニュージーランドで半年間の武者修行を行った。大学卒業後、ゴールドウインに入社。現在もクラブチームに所属してプレーを続けている。

 

写真右・國生行大(こくしょう・ゆきひろ)

1981年生まれ。東京練馬区出身。ラグビー好きの祖父の影響で、小学生のときにラグビースクールに所属。子どもの頃はラグビー部とサッカー部、バスケットボール部を掛け持ちし、ラグビーで養った運動能力を発揮していた。大学までラグビーを続け、卒業後は神戸のクラブチームを経てニュージーランドのクラブチームに所属。帰国後、カンタベリーのショップ勤務をきっかけにゴールドウインに入社。現在はカンタベリー事業部にて、プレーヤーとして経験を活かした販促業務を担っている。

 

 

 

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