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スポーツを通じて環境課題に取り組む、「せとだレモンマラソン2024」体験記 中編

2024.03.11

2月24日に開催される「せとだレモンマラソン2024」(広島県尾道市)に参加するGoldwin事業部の伊藤祐実さん、黒田優さん、宮内聡子さん。「GOLDWIN」が協賛するこの大会は、スポーツを楽しめる世界を次の世代へ継承すべく、マイボトルの携行・給水をルール化するなど、環境負荷低減をコンセプトとしている。「せとだレモンマラソン2024」を走る3人が、環境問題 × スポーツの取り組みについて語る。

――みなさんが走る「せとだレモンマラソン2024」は、マイボトルの携行・給水をランナーに義務付けている大会です。まずは参加にあたってどんな思いを抱かれたかを教えてください。

黒田優さん(以下、黒田):同じようにマイボトルの携行を呼びかけているマラソン大会として「湘南国際マラソン」がありますが、こちらでは大会で排出するごみの量を大幅に減らすことができたと聞いていました。私が最後にマラソン大会に出場したのはコロナ禍前でしたが、参加賞がすごく豪華だった一方で、環境問題への意識は感じられませんでしたから、世の中の流れや社会が求めるものがずいぶん変わったんだなと感じます。今後、こういう大会はもっと増えていくんじゃないかな。

伊藤祐実さん(以下、伊藤):個人的には、エイド周りにコップやごみが散乱しているような大会に参加したいとは思わないですね。見た目にも美しくないし、ボランティアの方たちが後で片付けてくれるとはいえ、ごみが投げ捨てられているさまを目にするとギョッとしますよね。

スポーツアパレルの世界では、「環境配慮型」が大前提

――普段の業務や生活のなかで環境問題を意識することはありますか?

伊藤:私が担当するのが、クリーンかつサステナブルであることを特徴とした電動モーターサイクル「CAKE」ということもあり、業務上では環境に関する話題は多いですよ。

黒田:Goldwinのようなスポーツアパレルの世界では、環境に配慮したモノづくりは当然という流れになっています。リサイクル素材を使っていたり、あるいは石油由来でない素材だったり、使用後にリサイクルしやすい仕様になっていたり。素材メーカーとやりとりするときもそれを前提に話が進んでいますね。

宮内聡子さん(以下、宮内):消費者やマーケットのニーズもそうなってきていますよね。特に私が担当するアメリカやヨーロッパの消費者は、環境に配慮したものづくりをしているブランドや商品を選ぶ傾向にあって、サステナブルな新素材が大きな注目を集めています。とはいえ、Goldwinは環境性能に加えてアウトドア・フィールドで使用を想定した高い機能性や日本らしい緻密なデザインも求められるから、そのバランスが今後の課題かな。

黒田:たとえばSpiberが開発する次世代の新素材「Brewed Protein™」は、地球全体の生態系内でのアップサイクルやリサイクルが可能で、「循環型社会への転換に大きく寄与する夢の技術」として世界中で注目されている素材ですが、テクニカル・アウターに使う場合にはさらに耐久性も求められます。「環境を最優先に作ったので、その分、耐久性は劣ります」というわけにはいかないですから。

加えてファッション性も必要で、その3つのバランスを取ることが難しい。現状では、環境性能の高い素材を使い、仕様や作り方で耐久性を向上させてデザイン性も担保するというようなアプローチをとっていますが、ゼロをいきなり100にもっていくとはできません。自然環境にプラスになるようなものづくりに、一歩ずつ前進しているところです。

伊藤:「CAKE」が拠点を構えるヨーロッパの市場を見ていて思うのは、環境配慮と経済的な合理性が合致することで企業や市場が成長する流れがある、ということ。特にモビリティの分野ではその傾向が顕著かな。アパレルの動きはまだまだこれからという感じですが、環境に配慮した素材の使用やそうした取り組みがビジネスとして持続的に展開できるようになれば、変化のスピードは一気に加速すると思う。

宮内:販売する側からいうと、消費者に対して「リサイクル素材に変わったので価格が上がります」って言いづらいんですよね。メーカーとしては、価格が上がった分の付加価値をどこに感じてもらうのか、消費者に対してきちんとしたストーリーを描かないといけない。

伊藤:「多少高くても環境に配慮した製品を選びたいよね」と消費者に思ってもらう、そういう仕掛けがメーカーに、そして自戒もこめてマーケティングに問われていると感じますね。

黒田:そこを担うのがブランドのマーケティングやデザインなんだと思う。

「長く使う」という視点でのものづくり

――個人的な消費行動ではどうですか?なにか意識していることはありますか?

宮内:日常的に行っているのは、プラスチックバッグをもらわないとか、使い捨てのペットボトルを買わないとか。社内ではペットボトルが禁止なので、みんな普通にマイボトルを持っていますよね。

黒田:あとは何かを買う際に、そのメーカーやブランドの背景やストーリー、その製品がどこでどう作られているかはチェックするかな。

伊藤:やっぱり製品のタグを見て、原材料だったり取得している認証機関のマークだったりはチェックします。あとは、リサイクルできないパッケージのものは買わない、とか。私、捨てられないタイプなんですよ。ごみとして廃棄することが苦しくて、捨てられなくなっちゃうの。最近、私が暮らす自治体ではプラごみを回収するようになったんですが、それでようやくごみを捨てられるようになった。

宮内:確かに、回収されるものが増えましたね。古着の回収も増えて、服の処分についてストレスを感じることは少なくなった。やっぱり愛着があって着ていたものを廃棄するのは忍びないから。

黒田:長く使う・着るって大事。以前はフリマ、いまならフリマアプリを活用して、自分にとって不要になったものを流通させるのはすごくいいことだと思う。だから商品企画でも、長く使えるという視点を大切にデザインしています。

伊藤:先ほどの経済的な合理性でいうと、一部の再販はまさに環境配慮と合理性が合致するところにあると思う。消費者も、リセールプライスが高いとか再販する価値のあるものを選ぶ傾向にあるのでは。

――「長く着られる」という観点でものづくりを行う場合、どういう要素がポイントになりますか?

宮内:長い間着られるというのは、トレンドに左右されないとか、幅広いターゲットに受け入れられるとか、つまり普遍的なデザインってことなのかな。

黒田:加えて、着用するシーンを選ばないこと。機能素材を使っていても、デザインが都会的であれば普段使いしてもらえます。もちろん動きやすさも担保されているから、どんなシーンでも着心地がいい。Goldwinでは、「アクティブなシーンでも街でも着られる」という普遍性を大切にしています。

伊藤:初めてマラソン大会に出場するにあたって、手持ちのコンプレッションタイツが古くなっていたので「せとだレモンマラソン」用に新調したんだけれど、むくみの防止にもなるからついつい普段穿きしちゃう。下着も日頃からスポーツブラを身につけているんだけれど、背筋が伸びる感じが心地よくて手放せない。いま着ているウール混のTシャツも、肌触りがいいうえに吸湿性に優れた素材で仕立ててあるので、つい日常着として使ってしまう。もはや機能的なもの以外は着られなくなっちゃった(笑)

黒田:うちの社員には通勤ラン・退勤ランのランナーが少なくないから、どちらのシーンでも使えるアイテムを選ぶ人が多いですよね。

間近に迫った本番に向けて

――いよいよ来週、「せとだレモンマラソン2024」の本番です。この後、3人で皇居の周りを走るということですが、本番に向けてどんなトレーニングを行っていますか?

宮内:私にとっては久々のハーフマラソンなので、先週はランニング→バスケという感じで少し走ってみました。今日は2周くらい走ろうと思っています。

黒田:以前は毎日20kmくらい走っていたけど、学生時代といまとではだいぶ勝手が違うはずなので、まずは1周しようかな。1周してみて考えます。ここで怪我したら元も子もないですし。

伊藤:この後、事業部の仲間たちも合流予定なので、足を止めずに1周したい。それができたら今日は十分です(笑)。

(写真 茂田羽生 / 文 倉石綾子)

  1. 伊藤祐実(いとう・ゆみ)
    三重県伊勢市出身。前職はデザイン・アート関係の会社。ゴールドウインのコーポレート・アイデンティティや60年誌の編集に携わった縁で、2013年に入社。「こころとカラダを整える」を提唱するショップブランド「Saturday in the park」を経て「Goldwin」「C3fit」のマーケティング担当に。今年度から「CAKE」のマーケティングを担当する。体育的なスポーツ経験はほぼないが、ヨガは好き。心身のバランスを調えるアクティビティの効果と価値を信じている。
  1. 黒田優(くろだ・ゆう)
    広島県広島市生まれ。4歳で始めた水泳で全国大会に出場する。高校卒業後に進んだ大学では、ライフセービング部に所属し、静岡県下田市のビーチで活動。ライフセービングのインストラクター資格を取得し、社会貢献活動にも携わる。大学卒業後、アウトドアメーカーの企画・開発としてキャリアを積んだのち、2020年にゴールドウインに入社。現在はGoldwin事業部で商品企画のマネージャーを務めている。
  1. 宮内聡子(みやうち・さとこ)
    神奈川県横浜市生まれ。中学入学と同時にバスケットボール部に入部。以来、生活の中心をバスケが占めるというライフスタイルを大学卒業まで続ける。卒業後は社会人チームに所属、現在も月に2〜3回程度、仲間を募ってプレーを続けている。2008年に新卒でゴールドウインに入社すると、同僚たちとスキーやスノーボード、登山に取り組むように。入社時から海外営業に従事し、現在はGoldwin事業本部の海外販売部のマネージャーとして、主に欧米エリアでのブランドのグローバル進出に尽力している。

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