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「富山マラソン2022」徹底攻略
自己ベスト更新も夢じゃない!42.195kmのコースマネジメント

2022.10.31

富山湾に立山連峰の大パノラマと、富山県のシンボリックな風景を楽しめる「富山マラソン」。ゴールドウイン テック・ラボ勤務の西浦孝則さんが紹介する「富山マラソン」攻略術の3回目は、コースマネジメント。「富山マラソン」攻略のポイントと見どころ・走りどころを、あわせてご紹介します。

富山大仏、富山湾。見どころ満載の前半戦

富山マラソンのスタートは高岡市役所前。高岡大仏を横に見ながら、庄川沿いの県道243号を北上し、富山湾へ。新湊大橋を経て湾岸を東走し、足洗潟の手前で内陸に入る。そこからは田園地帯を縫いながらゴールの富岩運河環水公園を目指す。

「全体的にフラットで走りやすいのが富山マラソンの特徴ですが、それほど高速にはならないので、習慣的に走っているランナーにとって参加しやすい大会だと思います。とはいえ、マラソン大会にしては早い時期に開催されるので気温も高めですし、富山では雨の多い時期でもあります。コース対策に加え、暑さ・天候対策も必要です」

それではコースのポイントを、スタート地点から順に見ていこう。

「スタートは高岡市役所前。高岡大仏や古い街並みが連なり、県外のランナーは観光気分を味わえる界隈ですが、スタート直後ということもあり、ランナーが団子状態で連なっていて非常に走りづらい。道幅も狭く、なかなかペースが安定しません。スタートから5kmくらいまでは設定スピードを抑え目にしておくといいでしょう。10〜15km地点になるとランナーもばらけてくるので自分の走りに集中できるはず。このあたりでペースを整えるのがおすすめです」

スタート地点 高岡市役所前

〜5km 高岡大仏周辺

前半に貯金を作るべからず

その次のポイントが、約20km地点から始まる新湊大橋。新湊大橋は富山新港にかかる、日本海側最大の斜張橋(斜めにケーブルを張って支える吊り橋のこと)で総延長はアプローチも含め3.6km。西浦さんいわく「この大会最大の山場」で、ここをどう捉えるかで後半が変わるという。

「天気のいい日には橋の上から日本海や立山連峰、能登半島が一望できる眺望スポットですが、問題は6.0%という勾配(ちなみに、“ベタ踏み坂”としてお馴染みの鳥取県堺港の江島大橋の勾配が6.1%)と強い海風です。この、風を伴う勾配が想像以上に脚にくる。多くの人は前半の上りでペースがガクンと落ち、後半の下りで遅れを取り戻そうと、普段よりギアを上げて駆け降りようとしますが、後半のフラットな区間も上りのように感じさせるほど、ここのアップダウンはパンチがあります。後半でエネルギーの枯渇や脚の攣り、フォーム崩れというトラブルを防ぐためにも、とにかく体力温存に努めましょう」

20km〜 新湊大橋

富山マラソンでは新湊大橋の車道部分がコースになるが、通常時、歩行者は立ち入れないので下見をすることもできない。よって、経験や戦略が大きくものをいう。西浦さん自身、初参戦した前々大会(2019年)では新湊大橋でペースを抑えられず、25km 地点で大幅にベースダウンしてしまった。その反省を生かした昨年は、ここでのペースマネジメントが功を奏し、余裕を持って後半に臨めた。

「マラソンのペースってそこまで速くないので、マラソン初心者で体力のある方はついつい前半を飛ばしがちになるんですね。25kmあたりでガクンとペースが落ちて、『しまった』と思ったときにはもう手遅れ。『前半に貯金は作らない』という意識で走り、スムーズに後半に繋げたいものです」

「30kmまでは助走区間」と考える

その次のポイントが30km地点の田園地帯。フルマラソンには“30kmの壁”があるといわれるが、30km地点にさしかかったときに「もう30km」と思うか、「まだ30km」と感じるか。「『もう30km』と思える余力を残すためにも、ここまではイーブンのペースを維持したい」と西浦さん。

30km〜 田園エリア

「30km地点の田園エリアは風を遮るところもなく、沿道の応援も望めず、ランナーのメンタルの強さが問われます。去年、もっとも辛く感じたのはこのあたりでした。一方で、順位の変動が大きい地点でもあり、とにかく我慢して走り続ければここから挽回することも可能です」
西浦さん自身は30〜35km地点を最速ラップで走れるようにマネジメントするという。

「いうなれば、30kmまでは助走区間。『ここからが本番』という意識で走ります」

後半、ランナーを苦しめるのが40km手前、北代のアップダウン。そこを抜ければもう、ゴールは目の前である。

ゴールは目前 環水公園

「コース全体はフラットなわりに、要所要所でキツいアップダウンがあるので、富山マラソンの前はトレッドミルで傾斜をつけて走り込むというトレーニングも行っています。そのほか、どの大会前にも行う距離走は必ず。今年は膝の故障を抱えているので、自転車を使った追い込みを行っていますが、去年の大会前は月間600kmほどを走っていました。そのほか、大臀筋・中臀筋・ハムストリングの強化を目的としたウェイトトレーニング、シーズンオフの春夏はトラック練習でスピード走を意識しています」

西浦さんのコース戦略を参考に、ベストの走りを目指そう。

(記事TOP写真 水上俊介、記事中写真 古谷勝/ 文 倉石綾子)

  1. 西浦孝則(にしうら・たかのり)
    1993年生まれ。和歌山県出身。野球部だった中学生時代に駅伝選手に抜擢され、県内優勝を経験。高校生から陸上に打ち込み、進学した筑波大学では箱根駅伝を目指す。大学院ではランニングフォームの研究に従事。自他ともに認めるランニングシューズ好きで、現在はゴールドウインテックラボでランニングシューズ開発に携わる。2021年の富山マラソンでは自己ベストを記録し、準優勝を果たす。

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