KNACK

スポーツを楽しむコツ

スポーツ・アウトドアの魅力や、ウェアのメンテナンスなど、
スポーツを楽しむコツを紹介します。

11月6日開催!「富山マラソン2022」徹底攻略
フルマラソンを制する、効果的な補給とそのタイミング

2022.10.25

完走を目指す人、記録を狙うランナー、レベルの違いはあれど、フルマラソンを走り切るために必要なのがレース中の補給計画です。2021年の「富山マラソン」で準優勝に輝いたエリート市民ランナー、ゴールドウイン テック・ラボに勤める西浦孝則さんが教える「富山マラソン」攻略術の2回目は、スマートな補給食の中身とそのタイミングについて。

ジェルで効率よくエネルギーを補給
フルマラソンに欠かせない補給食は、どの段階で何を摂取するのか、あらかじめ補給計画を立てて本番に臨みたいもの。エネルギーに変換される補給食をタイミングよく摂取できるかどうかが、結果を大きく左右するからだ。まず、補給で注目すべきは糖質。マラソンを走るときにエネルギー源として主に使われるのはグリコーゲン(糖)であり、エネルギーが枯渇しないよう、計画的に糖質を摂取してエネルギー補給に努める。

それでは、自己ベスト更新を狙う西浦さんの本番の補給計画を伺ってみよう。西浦さんが用意する補給食は、走りながらエネルギーを手軽にチャージできるジェル。10km、20km、30km、35kmを目安に摂取する予定で、計4つのジェルをランショーツのポケットに入れて携行する。

「10km、20kmで摂取するのは、トップアスリートにも愛用者が多い『MAURTEN』のGEL100。1個あたり約25gの炭水化物が含まれた高濃度のエネルギージェルで、味は好みではないのですが、糖質量が多く吸収がいい。着色料やフレーバー、防腐剤など余計な成分が入っていないところもお薦めできるポイントです。

後半に摂取するのは、糖質に加えて筋肉の材料となるアミノ酸や脚つりを防ぐマグネシウムも取れるジェル。『アミノバイタル』は程よく酸味が効いていて、ダレてくる後半のカンフル材になってくれます。ランナー用のジェルは各社からいくつも出ていますが、成分で特に重視するのは糖質量でその他にアミノ酸やカフェイン等の成分をチェックします。また、好みの味かどうかで選んでいます。

摂取のタイミングを10kmごとと決めているのは、気分転換にもなるから。『あと何km走ったらジェルを取る』、そう思うだけで気持ちの切り替えになります」

脚つりなどのトラブル防止には電解質補給を心がけて

「水をスポーツドリンクに変えたり、走りながら手軽に電解質をチャージできる『塩熱サプリ』を取ったり。不安のある人は新湊大橋(約20km地点)に差しかかる前に摂取しておくといいと思います。ちなみに『塩熱サプリ』は富山の企業が製造しているんですよ」

富山名物尽くしのエイドがすごい

補給食というとエイドを利用するランナーも多いだろう。実は、郷土のグルメが勢揃いするエイドも「富山マラソン」の醍醐味。富山湾といえば白エビやホタルイカが有名だが、新湊大橋の手前に設けられたエイドには、地元で水揚げされた白エビの天むすや名物の鱒寿司が並ぶ。これはランナーからも好評らしく、品切れになることもあるとか。

湊屋食堂の白エビ天むす

「そのほか、富山のメーカーが製造したクリームパンやあんパン、フルーツゼリーや白エビせんべい、かりんとう饅頭、立山杉の年輪から意匠を得たという地元菓子店の『杢目羊羹』など、お土産として人気の品もエイドに並びます。『富山マラソンはエイドがすごい』と言われるゆえんです。県外から参加されるランナーには、ぜひエイドのグルメも楽しんでいただきたいです」

鈴木亭の杢目羊羹

レースの前後に気をつけること

西浦さんがレース中に補給するのはジェルだけだが、レース前後には糖質に加えて別の栄養素もしっかり摂取する。

「普段の生活でカーボローディングは意識しませんが、レース前日と当日の朝は糖質量が多くて消化吸収のいいものを多めに摂ります。これをスタート時間の2時間半〜3時間前に済ませておきます。その日の気分によってメニューはいろいろですが、出番が多いのは白米、うどん、パンなど。当日の朝は『MAURTEN』のドリンクタイプ500mlを追加し、カーボローディングします。

レース直後はリカバリー目的の栄養チャージを速やかに。タブレットもしくは顆粒タイプのアミノ酸、クエン酸を摂取します。なるべく早く平常モードに戻れるよう、その日は温泉に行くなどして体を休めてコンディショニングに努めます」

日々の食事はストイックになりすぎない

脂っぽいものは控えめに、レバーなど鉄分豊富な食材を意識的に口にする、脂肪を優先的にエネルギーとして燃やせる体づくりのためにMCTオイルを摂取するなど、ストレスを感じない程度に普段の食事にも気を配っている。

「トレーニングの中で日常的に摂取しているのがBCAAです。好みは、人工甘味料不使用の『ULTORA』。以前はプロテインを飲んでいましたが、お腹がゆるくなるのでBCAAに変えました。アルコールは普段からあまり口にしませんが、レース1ヶ月前から完全に断つようにしています。飲んでも1〜2日で抜けますが、やっぱりむくみで体が重くなりますね」

自分の体質や目標タイムに合った補給計画を立てたら、次はいよいよコースのシミュレーション。次回は「富山マラソン」の特徴と攻略ポイントをご紹介します。

(写真 古谷勝/ 文 倉石綾子)

  1. 西浦孝則(にしうら・たかのり)
    1993年生まれ。和歌山県出身。野球部だった中学生時代に駅伝選手に抜擢され、県内優勝を経験。高校生から陸上に打ち込み、進学した筑波大学では箱根駅伝を目指す。大学院ではランニングフォームの研究に従事。自他ともに認めるランニングシューズ好きで、現在はゴールドウイン テック・ラボでランニングシューズ開発に携わる。2021年の富山マラソンでは自己ベストを記録し、準優勝を果たす。

RECOMMEND POSTS

RELATED SPORTS