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スピード感がクセになる! アウトリガーカヌーで海に出よう

2023.06.29

高校生の時に出合って以来、パドルスポーツ漬けの学生時代を過ごした〈THE NORTH FACE 福岡店〉の澁谷磨さん。現在熱中しているのは、2年前、赴任先の沖縄で出合ったというアウトリガーカヌー。今回は、パドルスポーツ初心者も楽しめるアウトリガーカヌーの遊び方を教えてもらいます。


アウトリガーカヌーとは、細長い船の本体の横に安定性を向上させる浮(うき、別名「アマ」)を設けた船のこと。「アマ」があることでカヌーが安定し、初心者でも気軽に乗ることができます。こうしたカヌーはポリネシアやミクロネシアの島々で、島を行き来する海洋交通の手段として数千年も前に発達したものだといい、ハワイやタヒチといったアウトリガーカヌーが盛んな国では、それにまつわる伝統文化や精神性も含めて継承されています。

日本でもレジャーやスポーツとして行われていますが、海に囲まれた日本ではもっと盛んになってもいいはず!というわけで、アウトリガーカヌーに親しむTIPSをお伝えします。

カヌー

そもそもカヌーとは、パドルを漕いで進む船の総称です。カヌーはカヤックとカナディアンカヌーに大別されますが、その違いは使われるパドルの形状にあります。カヤックはダブルブレード(両側がブレードになっているもの)、カナディアンカヌーはシングルブレード(片方だけがブレードになっているもの)を使うのが基本です。使う場所や用途によって適したカヌー、カヤックを選ぶのがいいでしょう。


僕が取り組んでいるアウトリガーカヌーは船体が細長く、直進性に優れた形状をしており、1人用、2人用、6人用とさまざまなサイズがあります。木製もありますがグラスファイバー製が一般的で、僕が使っている1人乗り用の重量は、本体が10kg前後、アマが2〜3kg。


見た目よりもずっと軽いので、1人でもルーフキャリアに載せることができます。船尾にはラダーがついており、フットペダルでラダーを踏んで舵を取ります。このカヌーは海外メーカーのハリケーンのもので、中古を購入して沖縄でフルリペアしてもらいました。九州には修理してくれる業者がいないので、故障の場合は船を沖縄に送るか、職人に九州まで足を運んでもらわなくてはなりません…… 。というわけで、壊れないように大切に使っています。


海に出るときに欠かせないのがパドルです。アウトリガーカヌーに用いるパドルにはタヒチ型とハワイ型の2種類があり、タヒチ型はラダーがついていない船に使うもので、パドルで漕ぎながら舵を取りやすい形状になっています。僕が使っているパドルは木製のハワイ型で、沖縄の「パドルファクトリー」にフルオーダーメイドしたもの。最新のレーシングパドルはカーボン製が主流ですが、僕の好みは木製。木製ならではのしなりが身体への負荷を和らげてくれる気がします。


そのほか、流れ止めのリーシュコード、ライフジャケット、日焼け対策の帽子、サンダル、麦茶、塩分補給タブレット、クラゲ対策のファストエイドキット、防水ケースに入れたスマホなどは欠かせません。クラゲが出る時期にはC3-Fitのゲイターをプロテクター代わりに着用しています。

服装

ラッシュガードにサーフショーツが一般的ですが、ラッシュガードの着心地が苦手なので、速乾性の素材を使ったTシャツとショーツを組み合わせています。海上は直射日光に加えて照り返しもあり、路面よりも暑くなりますから、大量に汗をかいても長時間、快適さを保ってくれるものがいいですね。たとえば、THE NORTH FACE のトレイル用Tシャツ、「フラッシュドライスリーディークルー」やアイスブレーカーのメリノウールの薄手Tシャツなど。特にメリノウールは肌触りがいいうえ、水に濡れても気にならないし加水分解もしないといいことづくし。使い勝手の良さを実感しているので、店頭でもこのメリットを最大限にお伝えしています。ショーツの下には同じくアイスブレーカーの、スパッツタイプの「オアシス ショーツ」を履いています。


ウエア選定のポイントは、目立つ色。1人で海に出ることが多いので、遭難したときに救助されやすいよう、視認性の高さを意識しています。日焼けから眼を守るサングラスはサンスキー。マグネットで脱着が可能なシールドがついている優れもの。日差しを防ぐという意味でシールドは欠かせないですね。

練習
アウトリガーカヌーの練習に適しているのは、波が落ち着いているので乗りやすい開けた湾内など。逆に海水浴場は波が荒れていることが多く、初心者におすすめできません。現在は週に2日、オフの日に糸島の野北漁港周辺で練習しています。練習では10〜20km程度を漕いでいます。出かける前に風の速さと向きをチェック、雷雨と大シケの時は避けるようにしています。多少コンディションが悪くても場所を変えれば風向きが変わり、どこかしらで入れるのが糸島のよさ。とりあえず海まで行ってみて考えます。12月〜3月はこちらの海水温もかなり下がりますので、練習はお休み。海水温が低いときに海に落ちると、寒さで体が動かず溺れかねません。


練習後には携帯用のタンクに汲んだ真水で船をよく洗います。海水が残っていると悪臭の原因となり、ケースの劣化を招きますので、クルマに積む前に海水を洗い流すことを徹底しています。

アウトリガーカヌーの魅力は、あっという間に沖に出られるスピード! 小さな船を自由自在に操れる感覚も気持ちがいい。果てしなく広い海上に、たった1人でカヌーに乗っていると特別な解放感を味わえます。大声で歌を歌ったり、キレイなクラゲを眺めたり、陸では味わえないフィーリングこそこのスポーツの醍醐味といえるでしょう。各地の海辺には初心者向けにアウトリガーカヌーの体験会や講習を提供しているクラブがあり、幅広い年代の方がアウトリガーカヌーにチャレンジしています。臆せずトライしてみてください。


波や風を掴み、動力を使わずにパドル一つで大海原を渡るアウトリガーカヌーは、特別なスピリットを宿す乗り物だと実感します。自然を敬い、海を守り、カヌーに敬意を払う。そういう姿勢を大切に、たくさんの人にこの乗り物の魅力を伝えられたら嬉しいですね。

(写真 古谷勝/ 文 倉石綾子)

  1. 澁谷磨(しぶや・みがく)
    宮城県出身。高校入学と同時にカヌー・スプリントを始め、卒業後はスポーツ推薦で日本体育大学へ進学。高校、大学を通じて数々の大会に出場し、優秀な成績を収める。大学卒業後は競技を離れ、アパレルの道へ。4年前にゴールドウインに転職し、沖縄の店舗に赴任。昨年、〈THE NORTH FACE福岡店〉に異動になり店長に就任。プライベートでは2年前、沖縄で始めたアウトリガーカヌーを中心に、コンディショニングのためのランニング、気分転換の登山など、福岡市周辺でアクティビティ三昧の毎日を送っている。

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