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SPECIAL TALK
松田丈志さんのフルマラソン直前! 鏑木毅さんと低酸素トレーニングで最終調整

2019.10.23

元競泳選手で、数々の大会でメダルを手にしている松田丈志さん。チームGoldwinのアスリートでもある彼は、競技引退後もフルマラソンやトライアスロンに挑戦を続ける根っからのスポーツマン。今年3度目のフルマラソン挑戦となる「富山マラソン」を目前に控え、トレイルランナーの鏑木毅さんとともに、フル直前のトレーニングに臨みました。

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UTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)で3位を経験し、日本におけるトレイルランニング発展を推し進めてきた鏑木毅さん。一昨年に「NEVER」プロジェクトを立ち上げ、今年50歳でUTMBに再び挑戦しました。ロングディスタンスランにおけるコンディショニングについては、人一倍の経験を持っています。

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富山マラソン挑戦を目前に控えた10月某日。NEUTRALWORKS.TOKYOの低酸素トレーニングルームで、本番直前の仕上げトレーニングを行う松田さんのもとに、鏑木さんが駆けつけました。この日の設定は標高2500m相当の空気の薄さ。トレッドミルで走り始めた松田さんも、セッションを重ねるごとに汗が滲みます。

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最後は自ら設定スピードを上げるほど(!)に、追い込んで走った松田さん。トレーニングを終えてから、低酸素トレーニングの効用、フルマラソンのコンディショニング、そしてお二人のスポーツ愛を語ってもらいました。

水泳選手が走り始めた理由

SFM 松田さんはどうして走るようになったのですか?

松田 基本的に運動が好きなんです。現役を退いたらチャレンジしたいなと思っていたのがフルマラソンとトライアスロンだったんです。でも水泳を辞めた時、こんなに続けるとは思いもしなかったですね。

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SFM 10月末に行われる富山マラソンでもう3回目のマラソンになるんですね。何か挑戦したいと思ったきっかけがあるんですか?

松田 1回目は2016年12月のホノルルマラソン。その時は5時間を切るのがやっとでした(4時間57分)。2回目は今年3月の東京マラソンで4時間25分くらい。それが自己ベストです。フルマラソンもトライアスロンもどちらも経験しましたけど、続けているのは、新たな競技であればもっと自分を高められると思ったからです。

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水泳では200mのバタフライでも自由形でも、もう自己ベストは出せないのは理解しています。限界まで向き合いましたから。でも去年、今年と佐渡国際トライアスロンに出て、タイムを1年で30分縮めることができました。新たな達成感があったし、今年フルマラソンも東京を走りましたけど、ホノルルの時の自分に勝ちたいと思っていて、4時間半を目標にしました。結果それはギリギリでしたけど達成することができた。昨日よりもとか、去年の自分よりもとか、自分を超えられるかどうかってことは、身近な楽しみですし、現役時代と変わらないモチベーション、喜びです。

SFM 鏑木さんは今回松田さんが走る姿を見て率直にどんな印象を受けましたか?

鏑木 まずランニングフォームが綺麗で驚きました。自然な前傾で力みがない。筋肉質な身体なのでもっと力任せになってもおかしくないはずなんですが、一切そんなところがない。ランニングだけやっている人の中には関節がどうしてもギクシャクする人が多んですが、水泳選手ならではといった感じで、関節の可動域が広い。関節をうまく利用した柔らかい走りができていました。

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松田 今もフィジカルトレーニングは続けているんですよ。最近走れてはいないですけど、体全体のコンディションは一般の人よりは整っていると思います。ところどころバランスが悪いと思うところはあったりしますけど、競技としてトレーニングしていた時の感覚で、ちょっと左右差がある場合だったり、身体のちょっとした変化には敏感に感じ取る癖がついていますね。

鏑木 例えばコンディションを10段階に分けたとして、今自分がどれくらいなのかってことは、すぐにわかりますよね。

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松田 そうですね。体が完全に壊れる前に修正する習慣は、競技をやる中で身につきました。なるべく早くコンディションを戻すのが大事じゃないですか。でも走り方に関しては、佐渡トライアスロンに出るにあたって、特に意識するようになった部分なので、鏑木さんに褒めていただけるのは嬉しいですね。水泳選手は体重もあるし、走ることに関しては苦手な分野なんです。

SFM 競技として水泳をやっていた頃は走る習慣っていうのはあったんですか?

松田 筋トレの前に体を温める程度で、それも15分くらいのものです。鍛えるために走る、というのは全くやってきませんでしたね。

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鏑木 坂ダッシュとかもやらなかった?

松田 坂ダッシュとか、出力を上げるトレーニングはやりましたけど、持久力を鍛えるようなことは一切やらなかったです。

SFM 今回は低酸素室でのトレーニングでした。1000mのインターバルを3本、余裕を持ってやっているように見えました。

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スイマー、ランナーが語る低酸素トレーニングのメリット

松田 水泳競技では低酸素環境でのトレーニングはすでにスタンダードなものです。脂肪が落ちやすく、筋肉がつきやすいというメリットがあるんです。筋トレひとつにしても、加圧トレーニングしているようなものなので。平地で3ヶ月ダラダラやるよりは1ヶ月高地に行ってトレーニングするほうが効果が出やすい。

現役時代はアメリカのフラッグスタッフという標高2100mくらいに位置する場所で20回くらい、1ヶ月くらいの合宿をしていたんですが、まずは1週間身体を高地に順応させて、そこから徐々に強度を上げていくのが合宿時のルーティンでした。なので、低酸素環境でのトレーニングには慣れています。とはいえ、今日もキツかったですよ。初めてのランでのインターバルトレーニング、しかもそれが低酸素環境だったので。

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鏑木 僕もUTMBの前に1ヶ月ほど現地に行って高地トレーニングをしたんですが、それまでの自分から一段、二段とコンディションが上がった感覚がありました。身体で実感できるからモチベーションもキープできる。今回トレーニングを見させてもらって、一本一本の集中力はさすがだなと思いました。

低酸素環境では突然心拍数が上がって危険な状態に陥ることもあります。でも松田さんは身体が慣れてからはSpO2(酸素飽和度)も82、83で安定していて、トレーニングとして1本1本しっかり追い込んでいました。もう1、2本いける余裕を持った状態だったと思うし、それくらいの状態で継続することが大事なんです。いいトレーニングになりましたね。

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松田 いい刺激が入りました。でも感覚的には、多分そこまでダメージは残らないと思っています。明日これで動けなくなるような感じではないですね。

フルマラソン直前の、低酸素トレーニングの頻度について

鏑木 理想を言えばレースまでにもう2回くらい今回のようなトレーニングができるといいですね。本番まで残り2週間を切ったくらいでもう一回、最後の一回は一週間を切ってから。キツいようならインターバルの本数を2本に減らしてもいい。それでフルマラソン前のコンディショニングとしてはばっちりだと思います。

ちなみに松田さんのVO2Max(最大酸素摂取量)はどれくらいですか? 70くらい?

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松田 僕はVO2Maxはそんなに高くないんです。62とか63くらいですね。現役時代、僕よりVO2Maxが大きい選手はたくさんいました。水泳って心肺機能よりも泳ぎの技術の部分が大きいんです。柴田亜衣さんは確か60もなかったんじゃないかな。それでもアテネオリンピックの800mで金メダルを獲っていますから。

今回は9月に佐渡国際トライアスロンが終わってから気が抜けてしまって、全然走ってなかったんです。このまま富山マラソンを走ることになったら相当苦しむだろうとわかっていたので、いい練習になりました。

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鏑木 でもトライアスロンに出ている貯金は大きいですよ。泳いで、バイクを漕いだ後にハーフマラソン走っているわけだから。レースまで近いし、もともと持っている能力を呼び戻せたんじゃないかなと思います。そういえば前橋のトライアスロンも出たんですよね。

松田 前橋はビギナー向けの大会ということもあって、ランは2kmだけなんです。でもせっかくだからその2kmは頑張りました。キロ4分30~40秒くらいで走ったと思います。普段そんなペースで走ることもないので、いい刺激入れだと思って。

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鏑木さんにみる、ランナーの低酸素室利用法

SFM 鏑木さんは低酸素室を利用する際はどのように利用されるのですか?

鏑木 低酸素ルームの効果としては2つあって、ひとつは心肺機能の強化、もうひとつは脂肪燃焼効率を高めることなんです。心肺機能を鍛える時は今日の松田さんのようにインターバルトレーニングをしますし、脂肪燃焼効率を上げる時は、ペースは上げずに2時間から3時間、ゆっくりと低酸素環境に身体を慣らすようにして、じっくりと内側から燃やすように走ります。

暑い時期は外でトレーニングして追い込もうとしても追い込めないですから、どうしても追い込まなくてはいけない時には必ず低酸素室を利用するようにしていましたね。今回松田さんにインターバルをしてもらったのは、無理に長い距離を走る回数を増やすよりも、むしろ今回のような高強度のトレーニングをして仕上げていったほうがいいと思ったからです。

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距離を踏む練習を多くすると、関節を痛めるリスクも高いですし、一回あたりの疲労や負荷も大きいですから。もちろんマラソンで自己ベストを目指していくなら、距離を伸ばしていくことも大事ですが、それは長期的なプランを組めるような時に取り入れてもらえればと思います。普段はどれくらい走られているんですか?

松田 9月の佐渡トライアスロンに出るまでは1日5kmから10kmのジョグを基本にしていました。1km平均5分30秒から6分くらいです。それから佐渡国際トライアスロンに向けてタバタ式トレーニングを取り入れました。100mをダッシュして10秒休んでまた100mダッシュするっていうのを繰り返す。トレッドミルであれば時速18キロ~20キロにして20秒間。それを繰り返していました。

鏑木 松田さんは心肺機能のベースが圧倒的に高い。これは本当にアドバンテージです。ランニングにおいてはまだまだ伸び代もあるし、今回のような低酸素でのトレーニングを取り入れてもらって、どんどんレベルアップしてもらいえればと思います。

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松田 インターバルも初めてでしたし、低酸素室で行うということもあって集中しました。集中してないと危険というのもありますけど、ここは集中しやすい環境ですね。人間てこういうアドレナリンが出て、気持ちが高められている時にしか強くならないと思うんですよね。自分で気持ちのスイッチを入れた時しか、成長できない。

鏑木 アスリートって常に“次のレベル”を求めますよね。上がっていくことを楽しんでいる。

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スポーツを通じて、常に成長していくことを楽しむ

松田 ちょっとずつランニングに慣れてきている実感があるんですよね。引退した時は“水の人間”だったので、走り方も重かったし、少し走るだけで筋肉痛になっていたんです。でも、最近は走り出しも、レベルが低いなりにではありますけど、軽くなってきている感覚があります。ほんの少しずつですけど。この感覚はもうちょと味わっていきたいなと思いますよね。

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SFM 鏑木さんも「NEVER」プロジェクトを立ち上げてUTMBに再挑戦しましたが、松田さんと近い感覚だったんでしょうか?鏑木さんの場合は少しずつ取り戻す感覚なのかと思うのですが。

鏑木 年齢的に、かつては3位を獲得した時の走りはもうできない。でも今できる最高の走りをしてみたいというのがモチベーションのひとつとしてあります。50歳でどこまであの頃に近づけるだろう。今のベストの走りができれば、どんな結果になろうと満足できるんじゃないかなと。そしてUTMBではそれができたと思えました。それからはいつまでも“今の自分のベスト”を求めていきたいなと思うようになりました。

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松田 僕の場合は楽しむためには何か目標を決めることが必要と思っていて、やり遂げた時の達成感だったり、逆に達成できなかった時の悔しさだったり。結果が全てではなくて、目標に向かって取り組むことを楽しんで続けたいと思っています。続けているうちに、次は何をしなくてはいけないか課題が見えてくるので、楽しんで続けることで、また新しい出口が見え、また新しい挑戦につながっていくのかなと思います。

そういう意味で新しいチャレンジであるマラソンは、今楽しくなってきています。トライアスロンでも、バイクもまだ十分タイムを縮められるし、ランははもっともっとタイムを縮めていけると思っているし。そうやって高みを目指していく喜びがある。

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鏑木 やっぱり楽しくないと続けられないですよね。僕自身は追い込むことが好きだから、追い込むことの中に楽しみを作ることを意識していました。それが結果ここまで長く続けられた理由だと思っています。自然体で、自分と向き合うことで思いもしなかった高みが見えることもある。松田さんは体を動かす喜びをよく知っていると思いますが、じっくり楽しみながらランニングと向き合ってもらえればと思います。

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日々ランニングが楽しくなっているという松田さんも「走るからには全力で走りたいです」と意気込む。ゴールドウインがゴールドパートナーをつとめる富山マラソンは、2019年10月27日(日)に開催される。ランナーとして、アスリートとしてスポーツする楽しさを見せてくれる松田さんの活動から目が離せない。

  1. 松田丈志(まつだ たけし)
    1984年生まれ。宮崎県延岡市氏出身の元競泳選手。バタフライと自由形を主な種目に、日本代表としてアテネ・北京・ロンドン・リオと五輪4大会連続出場。銀1つ、銅3つのメダルを手にする。2016年の現役引退後はニュースキャスターや競技解説、久世由美子コーチとの共著で『夢を喜びに変える 自超力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を出版するなど活動は多岐に。プライベートではトライアスロン、マラソンにも挑戦。現役時代と変わらず自身の高みを模索し続ける。
  1. 鏑木 毅(かぶらき つよし)
    1968年生まれ。群馬県出身。2009年のUTMB3位、ウエスタンステイツ100マイル準優勝など、世界トップレベルの実績を残してきたプロトレイルランナー。競技者の傍ら、レースディレクターとしてトレイルランニングの普及にも力を注ぎ、アジア初の本格的100マイルトレイルレース、UTMFの実行委員長も務める。2018年に「never」プロジェクトを立ち上げ、50歳で再びUTMBに挑戦。「まだ終われない」を合言葉にトレイルランナーたちのハートを刺激し続ける。
  1. NEUTRALWORKS.TOKYO
    外苑前にあるアスレチック・ライフスタイルショップ。3階にある『OXYGEN with MIURA DOLPHINS』では、2000mから4000mまで酸素濃度がコントロールされたプライベート環境で、低酸素トレーニングを行うことができる。自分の身体の状態やレベルに合わせてトレーニングスタイルや時間をカスタマイズすることが可能。ほか疲れをとるだけのリカバリーではなく、身体を「再起動」させ、本来のカラダの動きを取り戻すことをテーマとした、プロスキーヤー佐々木明監修によるパーソナルストレッチルーム『REBOOTstretch』、最新クラスの高性能水素発生装置による水素吸引サービス『HYDROGEN』などのサービスも。

NEUTRALWORKS.ROOMS
OXYGEN with MIURA DOLPHINS
(NEUTRALWORKS.TOKYO内)
東京都港区北青山2-7-22 H・T・神宮外苑ビル3F
03-6455-5964
営業時間13:00~20:00(低酸素ルーム) 要予約
goldwin.co.jp/neutralworks/

(写真 依田純子)

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