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ストーリーに迫ります

Sports First Mag.主催
トークイベント「RUNNING LIFE BALANCE」 at THE NORTH FACE Sphere

2023.01.31

1月17日、THE NORTH FACEのアスレチックカテゴリーがラインナップするフラッグシップストア〈THE NORTH FACE Sphere〉でトークイベントを開催しました。

当メディア『SPORTS FIRST MAG』が主催する初のリアルイベントのテーマは、「RUNNING LIFE BALANCE」。ランニング、主にトレイルランニングに取り組む3名の方をゲストに迎え、どのように生活とランニングのバランスを取っているのかを、それぞれの立場から語ってもらいました。ファシリテーターは、Takram所属の佐々木康裕さん。聴衆の皆さんに刺さる興味深いトークが引き出され、会場にはトレイルランニングというひとつのスポーツを通じて共鳴し合う一体感が広がりました。

〈登壇者紹介〉
佐々木康裕 (ファシリテーター)
クリエイティブファームTakramに所属し、幅広い業界でコンサルティングプロジェクトを手がけるビジネスデザイナー。スローメディア「Lobsterr」を運営するLobsterr Publishing共同創業者。コロナをきっかけにランニングがルーティンになり、最近はトレイルランニングレースにも参加している。

鵜野貴行
1983年、静岡県生まれ。メッセンジャーを経てゴールドウインに入社。入社後、トレイルラニングに目覚め、超長距離といわれるジャンルのレースに積極的に参戦。「UTMF」は2014年に完走。ランニング専門店〈THE NORTH FACE FLIGHT TOKYO〉に勤務後、〈THE NORTH FACE Sphere〉に着任し店長として勤務。

矢崎智也
北海道出身、二児の父。コーヒーの栽培方法を見つめ直し、土壌の再生と気候変動問題の解決へ寄与することをミッションにポートランドで発足したスペシャルティコーヒーロースター〈OVERVIEW COFFEE JAPAN〉で主にカスタマーコミュニケーションを担当する。トレイルランニングではウルトラディスタンスを中心に情熱を捧げる。

フィエルド花
元プロバレエダンサー。香港と日本にルーツをもつ。デジタルマーケティングの会社に勤めながら、モデルやバレエのメソッドを取り入れたエクササイズ動画をYouTubeで配信するなど幅広く活動。香港でトレイルランニングに目覚め、今年から日本国内の大会にも多数出場、好成績を残している。@ballerinahanah

トレイルランニングとの出合いと関わり方

佐々木さん(以下佐):こんばんは。今日、ファシリテーターを務める佐々木です。僕は始めたばかりで初心者なりの楽しみ方をしていますが、今日集まっていただいた3名は、トレイルランニングを中心に“SPORTS FIRST”を体現している方々です。みなさんがトレイルランニングを始めたきっかけと、どのくらい生活の中でトレイルランニングが占めているのか教えてください。

花さん(以下花):私は香港生まれ香港育ちの元バレリーナです。高校を卒業した後にバレエの道に進んだのですが、怪我をしてしまい、香港に戻り大学に入りました。大学を卒業してちょうど1年前に日本に来て、会社員として働きながらトレイルランニングをやっています。

トレイルランニングに出合ったのは大学生の時です。現在ザ・ノース・フェイス契約アスリートの土井陵選手が出場した〈HK4TUC(Hong Kong Four Trails Ultra Challenge)〉という300km(298km)のレースに私の母がサポーターとして参加しました。その時、母について行ったのですが、私みたいにハーフで歳も近い女の子が完走しているのを見て、その姿がとてもかっこよかった。そこで、私もやってみたいと思いました。

レースに出始めたのは香港から日本へ来る少し前からで、日本に来てからのこの一年は6、7回ほど出ました。

:すごいですね。2ヶ月に1回くらいのペースになるかと思いますが、大会を中心に生活している感じでしょうか。

:そんな感じかもしれないです。

:矢崎さんはいかがですか?

矢崎さん(以下矢):僕はコーヒーブランドの〈OVERVIEW COFFEE〉でセールス・マーケティングの仕事をしながらトレイルランニングをしています。

11年前、東京マラソンに当選したことが走るきっかけとなりました。同じ時期、〈ULTRA TRAIL Mt. FUJI(FUJI)〉が開催されることを知って、面白そうだなと。いつかこれに出てみたいと思って続けていますが、その大会にはまだ出られていません。

当時、ライブストリーミングのゴールシーンを見ていたんですが、自分の知っているランニングレースとは全く違うものでした。みんなゆっくりゴールしたり家族と一緒にゴールしたりといった光景が良いなと。その年のULTRA TRAIL Mt. FUJIの翌週くらいだったと思いますが、横山峰弘選手(ザ・ノース・フェイス所属)がゲストで来るイベントに参加して、それが僕のトレイルデビューでした。

色々なトレイルランニングのコミュニティに属しているうちに多くの人と関わり合いができましたが、今は割と一人で黙々と走ることが多いですね。

そして先にお伝えしておくと、僕は“SPORTS FIRST”ではなく、“家族FIRST”です(笑)。

:矢崎さんも、いつかご家族で一緒にゴールしたいと思ったわけですね。鵜野さんはいかがですか。

鵜野さん(以下鵜):私がトレイルランニングに出合ったのは、ザ・ノース・フェイスで働き始めてからです。もう12年になるんですけれど、入社後すぐにトレイルランニングを始めるきっかけがありました。

もともと登山をやっていたんですが、山の中で走る人を見かけると楽しそうだなと思っていました。ある日の昼休みにご飯を食べながら、当時の先輩に『トレイルランニングに興味あります』と話したんです。先輩は『じゃ、早速エントリーしよう!』と言って、会話が始まってものの5分で、17kmのレースにエントリーして支払いまで済んでいました(笑)。

埼玉の秩父の方で開催された宝登山のトレイルレースでした。最初のレースはうまくいかなかった。下ればゴールだと思って全力を出したら、また登るんですよ。標高差は10m、20mほどの小さな山なんですけど全然登れなくて。

苦い経験でしたが、うまくいかないことも含めて、これは楽しいなと。ひとつひとつクリアしていくことに達成感があり、自分の性に合ってるなと思ったんです。その翌月から月に1、2回くらいのペースでエントリーして、最初の年は10回くらいレースに出ました。それから12年間ずっとトレイルランニングが大好きでやってきて、今は年に1、2回のレースに絞っています。

:やっぱりそのくらいになりますよね。でも最初たくさん出ちゃうんですよね。

:そう、出過ぎちゃいますね。

:マイペースに楽しめるようになってきたのは最近です。

:鵜野さんの10年前が、今の花さんという感じですかね。

:そうですね(笑)。

:僕も最初は出過ぎて怪我をしました。

:気をつけます。

仕事とトレイルランニング

:プロフェッショナルの分野でもそれぞれ興味深い活動をされている皆さんは、お忙しい中、どんなふうにトレイルランニングを両立しているのでしょう。仕事とのバランスのとり方を教えてください。

:妻と3歳の娘がおり3人家族なんですけど、優先順位としては家庭が第一にありますので、矢崎さんと同じく”家族FIRST”です。私の場合はショップ店員なので、ありがたいことに仕事と趣味が並列しています。妻には仕事だと言ってトレイルランニングに出かけたり、走る機会を作りたいのであればイベントを企画してしまえばいい。お客様にトレイルランニングを実体験としてお伝えできるし、セッションできる機会にもなるんです。仕事を“走る機会を作ること”に最大限活用しています。

:なるほど。なんかずるいですね(笑)。花さんはどうですか?

:そうですね、私は一人暮らしなので自由度は高いと思います。でも、普通に会社員として働いてるので、トレーニングをどう組み入れようかと考えたら、仕事の前か後、それかランチタイムのこの3択なんですよね。それを上手くパズルみたいにして、組み替えています。

在宅勤務か出社するか選べるのはすごくありがたい環境で、朝起きれず、夜も予定が入っているなら、在宅勤務にしてランチタイムを削ってランニングをします。また、友達と予定が入ったなら遊んだ後とか、パズルみたいにしてトレーニングの時間をはめています。

:朝走るときは、何時くらいに起きるんですか。

:朝走るとしたら、6時とかです。

:早いですね。矢崎さんはどうですか?

:僕も同じで、やっぱり自分が自由に使える時間をどう組み立てるかになってきます。

以前は片道14kmくらいの距離を走って通勤するのが一番効率が良かった。行きだけの日もあれば帰りだけの日もあるし、どっちも走る日もありました。今はちょっと走れる距離じゃないので、朝早く起きて走るとか、山を走るときは夜中に走ったりとかですね。

あとは仕事を極力時間内で終わらせられるように考えたり、集中するっていうことは大事なのかなと。

:矢崎さんはリモートワークもありますか?

:はい、割と多いですね。

:やっぱりリモートになるとコントロールできて走りやすくなりますよね。

家族とトレイルランニング

:先ほどからお二人が『家族、家族』と過剰に言うのが続いて、配信先(本イベントはインスタライブでも配信)に家族がいるかもしれないと考えながらなのかなと感じるんですけれども(笑)、あえて聞いてみたいと思います。ご家族の理解はお子さんがいらっしゃると更に大事かと思います。どんなふうにバランスを取ってるのか教えてください。

:家族は、理解してくれています。以上(笑)。

:ぜひ教えてください(笑)。

:いや、結構そこは正直難しいですよ。例えば仕事はタスクが決まってたりとか、時間が決まってたりするから、自分一人だったら後の使える時間をやりくりできるけど、家族との時間はその範囲の間にあって、それも膨らんだり萎んだりするからすごく難しいですよね。

なので逆に、何か良い方法ありますか(笑)。

:相談の場になりますね。

ただ、結果的に大会に出る回数はどんどん減ってきました。今は1年に1回出るか出ないかという頻度にして、トレーニングに時間をかけて、一回の大会にしっかり準備をして出ることがすごく良いルーチンになっています。

日々時間を作りつつ、レースが近づいてきたら協力してもらって集中的にやらせてもらうという、何とかこのサイクルを回している“風”です(笑)。

:どうしても、(決め事をしないと)とめどなくランニングをしてしまうので、私の場合も家族の時間を7時から21時くらいまでと決めて、それ以外で、朝なら5時に起きて走り始めれば1~1.5時間くらい走れます。7時に『おはよう』と出迎えれば、妻も子供も笑顔で『おはよう』と言ってくれます。

家族のペースに合わせつつ、自分がちょっとずらしてランニングに打ち込むというライフスタイルです。

:逆にご家族にポジティブな影響を与えることはありますか。

:アウトドアな女性ではないんですが家族3人でならばと妻も一緒に、娘は私がチャイルドキャリアで担いで、高尾山とか鎌倉や逗子の方にハイキングに行ったりして、徐々に自然の中で楽しむことを伝えています。

あとは、チャレンジしたり何かに熱中している姿を見せたいなと思っています。それによって自分のライフスタイルが充実してくることを背中で見せたいなと、頑張っています。

:私は親がトレイルランナーなので、家族旅行とかは基本的に山でした。どの国へ行っても、そこにある山は登るといった感じでした。

ある時、スペインからフランスへドライブしている途中で、「あ!アンドラにはコマ・ペドローザがあるじゃない!」と、ドライブを中断。アンドラ(フランスとスペイン国境のピレネー山脈の谷間にある小さな内陸国)の最高峰に登ってからドライブを続けるということがありました。その頃は山に興味がなくて嫌々連れてかれていましたが、いつかお二人のお子さんにも分かる日が来るかもしれないです。

:良いお話ですね。

:たしかに、旅行に行く先の選び方がトレイルランニングを始めて変わったなと思いますね。この前京都に行ったのですが、比叡山を走って帰ってきました。

僕はコロナの始まりと共に始めたので海外には行けてないんですけど、ニューヨークの北部”アップステート”というエリアに国立公園があるんですよね。次、ニューヨークに行くとしたらマンハッタンではなく、トレイルに行くんだろうなと思っています。花さんのお父さんとお母さんに似た感覚になってきたなという感じですね。

それぞれ辿り着いたトレーニング方法

:お集まりいただいた聴衆のみなさんの関心の大きなもののひとつにトレーニング方法がありそうです。登壇者の3名はレースで良い成績を残しているので、どういうトレーニングをしているのかが気になるところです。

:私は、週に1回トラックでインターバル走などのスピード練習をすることと、週末に1回山でトレーニングすることを決めています。その2点をルーチン化させて、それ以外はジョグ、ペース走、ロードなど適当に、週6回ほぼ毎日走っています。

:週6回ですか。大会前になるとトレーニングを変えたりもされるんですか。

:そうですね。今までは山を登って、距離を稼いでいればOKという考え方だったんですが、日本へ来てから少し変わりました。陸上出身の方が周りに多くて、そこからヒントを得たりして、もっとロードの走力をつけるためのトレーニングを始めました。

:工夫したトレーニングの中で、効果を実感したものは何かありますか。

:一番効果を感じたのは、めちゃくちゃゆっくりなペースで走るスロージョグです。今まではスローといっても、そこまで速さを落とすことができていなかったんです。

でも、極力ゆっくりなペースのスロージョグを取り入れたら、スピード練習の質が上がるという効果がありました。強度の高いスピード練習の時に、それをこなす体力が残っていることがとても重要だったんです。驚きの発見でした。

:ゆっくり走るのって逆に難しいですよね。

:そうなんです。ゆっくり走ると練習した感覚が薄くて、力を出し切ろうとしてしまうんですけど、最近は抑えることを学びました。

:面白いですね。矢崎さんはどんなトレーニングをされているのでしょう。

:僕は、100kmを超えるようなウルトラディスタンス、大会でいうと100マイルのような距離を走るのが好きなんですけど、続けているうちに自分の理想が固まってきました。

何を目指したいかというと、スタートからゴールまで同じ気持ち、同じペースのままで走れて、気づいたらゴールしていたみたいなレース展開が理想だなと。そのイメージから逆算して、トレーニングを組み立てています。

最近はオンラインコーチングでメニューを作ってもらっています。月曜日は休み、火曜日は坂道を5本インターバル走、水曜日はジョグ、木曜日は結構ハードな10分間ペース走×2〜3本など。メリハリのあるメニューをコーチに組んでもらい、自分はそのタスクに集中するだけ。自分ではあれこれ考えず、設定ペースを守り、毎日過不足なく積めるトレーニングをしてます。

:考えなくて良いって結構楽ですね。

:楽ですね。色々考えてやっていたフェーズがあり、ここに行き着くんだろうなということも分かってきました。ならば、もっとトレーニングに集中しようと思ったんです。

何もわからず手探りで走っていた頃から10年間、公式に則ってやったり、いろいろ試してきて今があります。楽しみ方がどんどん変わってきているのは、続けていく秘訣かなぁと思いますね。

:オンラインコーチはすごく気になります。どんなやりとりをしているんですか。

:僕が利用しているサービスは、時計の心拍やスピードのログが全てコーチに共有されます。同時に数値に対して体感はどうだったかを報告して、細かい擦り合わせをしています。

:それは“この大会に出たい”とか“こういうコースを走れるようになりたい”とかを先にコーチに伝えるんですか。

:そうですね。コーチとのやりとりは逆算できる目標設定がある方が共通言語ができてメニューが組みやすくなります。

:鵜野さんはいかがですか。

:私もここ数年は、100マイルや更に長い300km以上の距離を長時間かけて淡々と積むレースが好きです。

以前矢崎さんも緻密にやっていましたけど、マフェトン理論(*1)を続けています。自分の場合、6:30/kmくらいで心拍数140〜141を上限にして、1回につきミニマム2時間。2日目も同じく走って、3日目は休息日、というように3日で1パックを永遠に繰り返します。

*1) マフェトン理論:マフェトン理論は生物学で学士号を取得し、後にカイロプラクティックの世界でドクターとなるフィリップ・マフェトンが唱えた理論。体脂肪を効率的にエネルギーに変換し持久系スポーツに役立てるというもの。 具体的には、「180 – 年齢」を目標心拍数として一日に30分以上運動する。 運動前後にウォーミングアップとクーリングダウンを行い、それぞれに15分以上をかけて目標心拍数まで心拍を上昇、運動開始時の心拍数まで下降させる。

スピード練とかペース走とかはせず、景色を見ながら走る。それが非常に心地良くて続けられている理由かなと思っています。団子屋を見つけたらふらっと団子を食べてまた走るというのが好きですね。

:なるほど。走る時は基本的に心拍だけを見ながら走る感じですね。

:心拍と時間だけで、距離はもう見ないようにしています。

:佐々木さんもやっていますよね?

:はい、僕もマフェトンをやっています。それまでは、大体150〜160くらいで走っていてすぐバテちゃっていたんです。僕は40歳なので、「180 – 40」で140なんですね。鵜野さんが仰っていたように景色を楽しみながら走れます。これで本当にトレーニングになるのかな?という感じですが、日々のランニングに行く気持ちが楽になったりして。

マフェトン理論はすでに有名ですが、トレーニングのスタイルの候補として考えても良いんじゃないかなと思います。

これからどうトレイルランニングと付き合っていく?

:ここまで皆さんの話を聞いて、似ているところも個性的なところもありました。それぞれ、これからトレイルランニングとどんな関係を築いていきたいと考えていますか?

:私はトレイルランニングに出合って人生が変わったと思っています。自然の中に身を置くことで心身ともに豊かになりますよね。是非多くの皆さんに体感していただきたい。そんな思いで店頭に立ち、自分の経験を踏まえてウェアやギアを通してお伝えしています。『トレイルランニング』というより、もっと気軽な遊びとしてハードルを下げて伝えられたら良いのかなと。

私自身、80歳、90歳になっても体が動く限りは山の中にいたいと思っています。下りをかっ飛ばすと動物になったようで『生きてるんだな』と実感しますが、そんなことを楽しみながら続けていきたいなと思っています。

:山の中にいると、野生的な楽しさを感じますよね。

:はい。なんか、子供に戻ったような感覚が。

:それがいいですよね。矢崎さんはどうでしょう。

:僕は、レース中に自然に溶けて自分が何も無くなるような感覚を味わいたいんです。どうしたら行き着けるのか、トレーニングしながらここ3年ほどずっと考えてるんですよ。

もちろん目標のレベルで走るためのトレーニングをしているわけですが、タイムや順位はそれほど重要ではありません。競技としてではなくて、レースというある尺のなかでどんな走りができるのかを楽しみにしていたりします。

:興味深いので、“自然と溶け合いたい”とはどんなことか、もうちょっと教えていただいても良いですか。

:木はそこに生えているし、風はそこに吹くじゃないですか。自分も同じように自然のなかに流れているといいなって。

:感覚的に分かります。

:自然に逆らいたくないんですよね。

:なるほど。自分の輪郭を自然の中に溶かして一体化するみたいな感じ?

:そうですね。風が吹く向きを感じて、自分も吹かれるように。自分の輪郭はないけどからだは動いてるというような、うまく伝えにくいのですが。

:水が流れるような?

:そうですね、ロードランニングでも気持ち良いリズムで走れている時ってあまり何も考えずにからだが動いている感覚になることがあります。山の中の方がより感じる瞬間があるので、その時間が少しでも長く維持できたら最高だなと。

:最高ですね、その境地に達したら是非教えてください。

:頑張ります(笑)。

:花さんはどうですか。

:私も順位とかタイムにこだわりたくないという、そのこだわりがあります。やっぱり長く続けていくには、楽しむ気持ちが大事だなと。

バレエの道を極めていた時は楽しさを見失うほど追い込んでしまいました。ついには怪我をしてプロとしては踊れなくなってしまった。間違いだったとは言い切れませんが、その経験を教訓に、トレイルランニングは楽しむ気持ちを忘れず、気楽に続けていきたいと思っています。

:ありがとうございます。最後は皆さん、記録とか順位とかじゃなく楽しんでやっていきたいという点は、共通していましたね。

今日は「RUNNING LIFE BALANCE」というテーマでトークしてきましたが、御三方はランナーなんだなというのが率直な感想です。

僕がすごく好きな偉大なる作家、村上春樹さんは著書『走ることについて語るときに僕の語ること』をこう結んでいました。

『もし僕の墓碑銘なんてものがあるとして、その文句を自分で選ぶことができるのならこう刻んでもらいたいと思う。“村上春樹 作家(そしてランナー) 1949-20** 少なくとも最後まで歩かなかった”』

今日登壇された皆さんも、ランナーとしてひとつひとつのゴールを自分の足で走り抜けながら歳を重ねていく人生を過ごしたいと思っていらっしゃるのではないかなと思いました。

『SPORTS FIRST MAG』は、スポーツを一番に考えるウェブマガジンです。始めたきっかけ、熱中する理由、達成したい目標などは個性豊か。しかし、“スポーツを一番に考えること”は、生活にポジティブな影響をもたらすことが共通しています。私たちがスポーツを続けるためには、仕事や家庭、生活のあらゆる関係とバランスが取れていることが大切だということを教えてくれるのです。

『SPORTS FIRST MAG』のInstagramアカウントを開設しました。今後もゴールドウインの社員のスポーツファーストな取り組みを紹介し、イベントなども引き続き企画していきたいと考えております。最新の情報を発信していますので、ぜひチェックしてください。

(写真 古谷 勝)

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