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キャンプも接客も、誰かの喜ぶ顔が見たい  田邉航也

2023.09.07

「テントのサイズが大きくなりました」

ひとしきり渓流釣りを楽しんだあとは、待ちに待ったキャンプの時間だ。元々テント泊の登山をしていた田邉さんにとって、夏のアクティビティとしてキャンプをするようになったのは自然なことだった。

「キャンプで一番楽しいのは、自然の中でゆっくりできることですね。今日は道志に来ていますが、ここは少し上がったところへ行くとだいぶ自然が色濃くて、静か。そういう場所で誰にも干渉されずにゆっくりするのが好きなんです。」


今回はパートナーの帆南さんと、たまたま上京していた妹さんも一緒にキャンプを楽しむことになった。結婚前から二人でキャンプをすることも多く、家族となったいまでも一緒に自然の中で遊べるキャンプは広がりを見せている。道具立てもどんどんと変化してきたという。


「今日のようなスタイルのキャンプになったのも、実は今年からなんです。最初はほとんどビバーク、野営するような装備で寝ていたんですが、奥さんと一緒に行くようになってから少しずつキャンプ道具も揃えるようになりました。今ではだいぶテントのサイズも大きくなりました(笑)」


この日持ち出したテントはTHE NORTH FACEの〈Lander 4〉。大人4人が快適に眠ることのできる4シーズンテントだからそれなりに大きいが、キャンプ初心者でも簡単に設営できる手軽さが魅力だという。この日のように、ゲストが増えても余裕で対応できるキャパシティもある。

帆南さんも妹さんも、田邉さんが釣りから帰ってくるのが待ちきれなかった様子。それもそのはず、今日のキャンプのシェフを務めるのは田邉さん。ついつい釣りは「あと一匹釣れたら川を上がろう」となって切り上げるのが難しくなるもの。田邊さんの退渓を待ちわびた二人は、お腹が空いていて当然だ。

食べるだけじゃないキャンプご飯の魅力

学生時代に競技スキーに打ち込んできた田邉さん。アスリートの身体を作るものが食であることもあり、また一人暮らしでも美味しいものを食べたいと自然と自炊をするようになった。料理の腕も向上し、人に食べて貰う機会も増えたが、誰かに美味しいと言ってもらえるのが何よりも嬉しいという。だからキャンプでも率先して料理を楽しむ。外で食べるご飯の美味しさは、やっぱり格別なのだ。

最後に釣ったイワナが釣り針を飲んでしまい、リリースが難しかったためキャッチ&イートすることに。手際よくイワナをさばいたかと思うと、あっという間にバターソテーのいい香りが立ち込めた。魚の扱いは学生時代にしていた養魚場のアルバイトで覚えたというが、今まではあまり釣った魚を食べることはしてこなかったそう。でもこの日のイワナは美味しさには、田邉さんも手応えを掴んだ様子。今後キャンプご飯のレパートリーが広がるかもしれない。



続いて登場したのは見た目にも華やかなサンドウィッチ。厚切りのハムをたっぷりと挟み込んでから、パンにナイフを入れた。彩りも肉厚も満点の断面が顔を覗かせた瞬間、女性陣からはこの日一番の歓声が上がった。食べる人も、作る人も思わず笑みが溢れる。キャンプ料理はこんなにもエンターテインメントなのだ。



「妹が広島から来るというので、何か写真映えするものを作ってあげたいなと思って。妹はなにかと写真映えするものが好きなもので(笑)」

そうやって少し照れ笑いする田邉さん。続いてカマンベールチーズを落としたアヒージョも作り上げたが、これも妹さんのリクエストによるもの。料理の魅力は誰かに美味しいと言ってもらえること、と語っていたように、誰かに喜んでもらいたいというホスピタリティ精神は彼の行動原理のひとつのように見える。



いつかは雪上で

それは彼の仕事に対する姿勢にも表れている。接客という仕事柄、お客様に喜んでもらえることは嬉しいものだが、だからといってただ喜ばせるためだけに適当なお勧めはしない。

「やっぱり自分が実際に使いよく理解している製品をお勧めしたいですし、製品の良し悪しははっきりとお伝えします。そうやって接客したお客様がまたお店に戻ってきてくれると嬉しいですね」


自分が信じることのできるものをお勧めする。接客業に携わる者としての真摯な思いは、製品の販売だけにとどまらない。目下のところ実現したいのは、新しくスキーを始めたい人の背中を押すような、店舗でのイベント開催だ。すでに山登りのイベントは〈THE NORTH FACE 神田店〉で開催の実績があるが、始めるのに敷居の高いスキーに人々を誘うような、そんな催しができないかと夢見ている。


「いつか雪上のイベントをしたいと思っています。スキーは自分の中で一番好きなスポーツですが、新たに始めるにはハードルの高いスポーツでもあります。でもスキーを始めるきっかけを作れて、それで楽しいと思ってもらえる魅力あるイベントができたら一番嬉しいですね。そしてまたお店でお会いできたら。」

田邉さんはどこまでも人の喜ぶ顔が好きな人だった。家族が美味しそうにキャンプご飯を食べる姿を優しい眼差しで見つめている。彼のこの表情が、雪上で見られる日もそう遠くはなさそうだ。

(写真 田辺信彦 / 文 小俣雄風太)

  1. 田邉航也(たなべ・こうや)
    1996年広島生まれ。3歳の頃からスキーを始め、学生時代はアルペンスキーに打ち込む。大学生時代には養魚場でアルバイトをする魚好きの顔も。大学卒業後、株式会社ゴールドウインに入社。〈THE NORTH FACE 神田店〉に配属され、現在5年目。現在もシーズンにはバックカントリースキーを楽しむ。2023年の春は群馬県の至仏山で季節外れの雪に歓喜した。近年は夏場に渓流釣りとキャンプを楽しんでいる。

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