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開催直前!GOLDWIN社員が選んだUTMF鉄板装備

2022.04.20

日本を代表するウルトラトレイルレース、「ウルトラトレイル マウントフジ(以下、UTMF)」が来たる4月22〜24日にかけて開催されます。3年ぶりの開催に備え、トレイルランナーはどんな準備を行なっているのか。レースに参加するGOLDWIN社員の装備と心構えに迫ります。

タイム至上主義から“楽しむ”へマインドシフト

ランニング歴15年を誇るのは〈THE NORTH FACE FLIGHT TOKYO〉に勤務する山口兼孝さん。中学2年時に入部した陸上部では5000mと3000m障害でレースに出場するなど、学生時代はトラックをメインに走ってきました。5000m15分半という自己ベストや3000m障害で関東大会出場という経歴を持つものの、いつしかタイムや記録を追いかける走り方に疑問を感じるようになったといいます。

そんなときに体験したのがトレイルランニングでした。「トレイル自体はどこか障害レースと似ている」といいますが、トラックやロードより自由で応用性の高いトレイルの魅力にすっかりハマってしまったとか。

「UTMFは前回(2019年)大会が初参加。その前年はSTYを完走しています。UTMFに対しては僕がトップトレイルランナーを輩出している山梨県出身ということもあり、トレイルを走り始めたときから『いつかは自分も……』という気持ちをもっていました」

社内には経験豊富なトレイルランナーが多く、経験値や戦略性がものをいうトレイルを走るモチベーションになっているという山口さん。前回は残念ながら足の故障によりA5(勝山)でリタイアしてしまったということから、今回は“無理なく・怪我なく・楽しく”完走を目指しています。

山口さんなりのレース戦略では前回リタイアしたU5の前後の長いロードがポイントに。大会に出ると「ついついレースモードになってしまう」という山口さんにとっての鬼門です。

「後半に備えてこの長いロードをいかに抑えられるか。つい走りたくなりますが、ここで力を温存して後半につなげたい。夜間のいちばん眠い時間帯にさしかかる区間でもあり、眠気との戦いにもなりそう」

経験豊富なランナーが、UTMFに備えるもの

2019年大会は大雪に見舞われたことから凍結や低体温症のリスクが懸念され、レース中にコース短縮となってしまいました。今回の装備は、前回の反省を踏まえつつ、より快適性を重視したセレクトになっています。

ハイパーエアーGTXフーディ

「普段から身につけていて使い勝手がわかっているアイテムから、快適なものだけを厳選しています。Gore-Texシェイクドライを使ったシェル、『ハイパーエアーGTXフーディ』はとにかく軽くて抜けがよく、水の弾き方も他と比較になりません。どんなに汗をかいても肌離れがよく、着ていて快適です。3年ほど愛用しています」

フライトハイパーベントヌプシクルー

「今回、日中は気温が高めと予想していますがそんなシーンにぴったりのトップスが『フライトハイパーベントヌプシクルー』。汗をかく部位に合わせて異なるメッシュ素材を配置、オーバーヒートを軽減する設計になっているので、涼しく快適に走れます。今回はこの下にドライレイヤーを着用しますが、真夏の大会ならこれ一枚で走っています。小さめのロゴを配したデザインは〈FLIGHT TOKYO〉の別注モデル。ここでしか手に入りません!」

オーバーミトンとグローブ

「前回、100マイルという距離もあってさまざまな想定をしていましたが、それでもやっぱり寒かった。通常は携行しないゴアテックスのオーバーミトンは、前回、必要性を痛感したアイテムのひとつ。普通のグローブで走っていて、とにかく指先が寒かったんです。今回はこの下にポーラーテックパワーグリッドのグローブを用意しています」

FLIGHT VECTIV™

「シューズはTHE NORTH FACEが新たに開発したシューズテクノロジー、VECTIV™を搭載したシリーズから、最も軽量でレース仕様の設計になっているFLIGHT VECTIVをチョイス。3モデルすべてを持っていてシーンによって履き分けていますが、FLIGHT VECTIVの硬めの履き心地が自分のフィーリングにいちばんぴったりきます」

そのほかシェルパンツ、インサレーショントップス、ロングパンツ、予備も含めてヘッドランプ3台、ファーストエイドキット、携行食を「TR10」に。

「僕は昼と夜で着替えようと思って、富士急ハイランドのエイドに荷物をデポします。冷えによる体力消耗を防ぐ意味もありますが、着替えることで気分転換になります」

レース前の過ごし方のポイントとして、「とにかく寝る!」と山口さん。どんなにコンディションを整え、装備を完璧に揃えても寝不足では台無し。たっぷり睡眠をとって体調を整えることがレースを楽しむコツだと考えています。

「30〜35時間でゴールできたら最高ですが、今回は“怪我なく完走”が最優先。レースとなるとついついタイムにきりきりしてしまうのですが、冷静さを保ってレースのさまざまな局面を楽しむ余裕をもっていたいですね」

初ウルトラ・初UTMFを目一杯楽しみたい!

〈THE NORTH FACE コクーンシティ コクーン2〉などでエリアマネージャーを務める五嶋淳司さんはランニング歴3年。大幅な減量後、体力アップを目的にランニングを始めました。

「10kgほど軽くなって久々に走ってみたら、驚くほど身体が軽くなって走ることが楽しくなったんです。それですっかりランニング好きになってしまいました」

学生時代は陸上部やサッカー部に所属して走り込んだ経験があり、もともと走ることは苦ではなかったといいますが、それにしても今年に入ってからの月間走行距離は310〜320kmというから相当な走り込みです。

トレイルランニングをはじめたきっかけは高尾山。2019年に目標としていた富山マラソンの前哨戦として上州武尊のトレイルランニングの大会にエントリー。その練習のために走った初トレイルが高尾山でした。

「ロードではありえないようなスピードで駆け降りられて、純粋に気持ちがよかったんです。大学時代、日々コンディションが変わり、一つとして同じシチュエーションがないところに魅力を感じてスノーボードにハマったのですが、トレイルランニングにもそれと同じ要素を感じました。天候、体調、装備によって、走りもタイムもフィーリングも変わる。『ここまでいったらおしまい』というゴールが見えない、その奥行きの深さが好きなのだと思います」

トレイルランニングを始めたのがコロナ禍の直前ということもあり、レース参戦経験は多くありません。昨年、一昨年は「IZU TRAIL Journey」、「奥信濃100トレイルランニングレースなどを走っていますが、100マイルは未知の世界。だからこそ心構えも準備にも、熱が入ります。

「3月に豪華メンツでコースの試走にいきました。“GOLDWIN最速”と異名をとるシューズ開発の木村豪文さん、UTMFはすでに完走済みの村井絢子さん、そして経験豊富ですが、同じく今回初UTMFとなる田嶌一徳さん、それにTNFアスリートのトレイルランナー、志村裕貴さんというメンバーに混じらせてもらったのでついていくだけで精一杯でしたが、やはり得るものは大きかったですね」

試走の結果、五嶋さんが注目したのは前半の天子山地の登りとその後の長いくだり。

「天子山地は上りがきつかったのですが、試走を経験したおかげで心を強く保って臨めそう。下りもついついスピードを出してしまいそうなので、抑えるつもりです。最後の40km、トリッキーな岩場の杓子が思った以上に滑りやすくキツかった。試走時はまだ雪が残っていたこともあり、ヒヤッとする場面が何度かありました。ここは注意深くいきたいですね。いちばん辛いのが、ラストの霜山のなだらかな登り。これも試走で経験できたので、心を折らずに走れそう」

初めての100マイル、トラブル対応型の装備で慎重に

装備は初めての100マイルに備え、さまざまなシーンを想定しての内容となりました。通常のレースなら持って行かないというものもあえてパッキング、不測の事態にも最低限の対応が可能な装備だといいます。

携行食

「携行食は柿の種とトレイルミックスをブレンドしてジェルのボトルに。一口ずつ口の中に放りこめるから便利なんです。柿の種は重量のわりに糖質がとれますし、トレイルミックスはチーズ入りのタイプならタンパク質がとれます。当日はこれにチョコレートも入れて味わいの変化をもたせます」

フライウェイトレーシングショーツ

「ウエアリングのポイントはベースレイヤーとショーツ。ショーツは軽く、汗抜けがよく、機能的に作られているモデルで、ウエスト周りのポケットが便利。足捌きのよさも好みな一枚です」

100(ワンハンドレッド)ドライタンク

「ベースレイヤーはどんなレースでも必ず着用しています。汗冷えを防ぐし、どんなに汗をかいてもベタつかない点がいい」

VECTIV™ Infinite

「シューズはクッション性と硬さのバンラスがちょうどいいVECTIV™のInfinite。上位モデルとの違いはカーボンのあり・なしですが、自分にとってはカーボンなしの硬さがちょうどいい。普段から履いているお気に入りのモデルです」

UTMFの目標を「まず出ること、そして完走すること」という五嶋さん。実はUTMFの第1回大会をエリア長として視察、スタート地点でのお祭り騒ぎの雰囲気を存分に味わったといいます。

「当時はこのレース独特の雰囲気を肌で感じて、とにかくなにかお手伝いしたい、ここを走る人たちのためになにか役に立つことをしたい、そんな気持ちでした。ここを走るなんてとんでもないと思っていたけれど、今年、ついに自分がこのスタートに立とうとしている。感慨深いものがありますね」

少ないレース経験のなかでもいろいろな失敗を重ね、少しずつ前進している実感があるという五嶋さん。

「多くのランナーが強い思いを抱いて参加するレースですから、自分も目一杯、楽しみたいと思っています」

2人のレースリポートは近日公開いたします!

(写真 古谷勝 / 文 倉石綾子)

  1. 山口 兼孝(やまぐち・かねたか)
  2. 1993年生まれ、山梨県出身。中学生で陸上競技を始める。大学時代にトレイルを走るようになり、2015年「峰山トレイルレース」でトレイルランニングのレースを初体験。トレイルランニングをきっかけに山歩きやナビゲーションレース、キャンプと、アウトドア志向のライフスタイルへとシフトしてきた。現在は〈THE NORTH FACE FLIGHT TOKYO〉に勤務しており、自身の経験を顧客と共有できるような接客を心がけている。

  1. 五嶋 淳司(ごしま・じゅんじ)
  2. 1974年生まれ、愛知県出身。学生時代は陸上部やサッカー部に所属、大学でスノーボードに目覚め、卒業後はフライフィッシングなどさまざまなアウトドアアクティビティに親しむ。体を絞ったことからランニングをはじめ、久々に参加した2019年の富山マラソンで3:41を記録。サブ3.5を目標に走り込んでいる。昨年より〈THE NORTH FACE コクーンシティ コクーン2〉などでエリアマネージャーを務める。

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