PEOPLE trail running トレイルを走ることが、ひたすら楽しい 川西大河 2021.12.30 twitter 「本当にいろんなお客様がいらっしゃるショップなんですよ」。〈THE NORTH FACE+グランフロント大阪〉で副店長を務める川西大河さんは言う。ショップがあるのは西日本一の巨大ターミナル・JR大阪駅と直結している、数々のアパレルショップがひしめく商業ビルの中だ。 直営店初の「THE NORTH FACE ADVENTURE DESK」案内人 2021年3月のリニューアルオープンに伴い、ショップ内に直営店初の「THE NORTH FACE ADVENTURE DESK」が設置されたのは大きなトピックだった。登山やトレイルランニングに適した山の紹介のほかアクティビティに応じた装備のアドバイスなど、日常を抜け出して自然の中での遊びを存分に楽しむための提案をする。その案内役を担うのが、川西さんだ。 「北海道の留寿都を旅行するご夫婦から旦那さんはトレイルランニングをしたい、その間妊婦の奥さんは近くを散策したいとご相談を受けました。旦那さんはフルマラソンをサブ3で走ると伺って、僕も走ったことがある大雪山をお勧めしたんです。ロープウェイで山頂まで上がれるので奥さんも散策ができますよと。後日、すごく良かったですとわざわざ感想を伝えに来てくださって。旦那さんはそこのコースを2時間54分で走ったそうで、僕の読みもドンピシャでした。嬉しかったですね」 「ADVENTURE DESK」を開設して初めての夏には富士山、屋久島、北アルプスに行くという相談をたくさん受けた。中には「明日から行くんですけど…」なんていう人もいたのだそう。そういった時にも、行けばなんとかなるだろうとショッピング先に選ばれる理由は、大阪随一の商業ビルの中にある大きなショップだからこそ。ありとあらゆる人をフィールドへと誘える可能性を秘めた場所であるがゆえに、川西さんにも幅広いアクティビティの知識が求められる。 トレランのレースは、まるでお祭り 幼少期から家族で登山やキャンプに親しみ、学生時代は部活で陸上・バドミントンに没頭。そして高校卒業後に青少年育成プログラムでカヤックやヨットの引率を経験する中で、アウトドア専門学校への進学を決めた。目標にしたのは山岳ガイド。ここまで聞けば「ADVENTURE DESK」の担当を任命されたのも納得の経歴だ。そして専門学校1年生の時、ついにトレイルランニングに出合う。当時110kmだった『信越五岳トレイルランニングレース』にボランティアとして参加したことがきっかけだった。 「80km地点でコース誘導を担当しました。雨で過酷な状況でも、誰もが笑顔で走って来るんです。そして誘導を終えた後、ゴールに行ってみたら…深夜、制限時間ギリギリに走って来た最後の選手を見て感動で涙が出ました。その時ふいに、どういう気持ちで110kmもの距離を走るのか知りたくなったんです」 専門学校の先生や同級生にもトレイルランナーは多く、決意から間もなく導かれるように斑尾高原へと向かった。季節は秋。ふかふかの落ち葉が敷き詰められたコースを走った感覚はあまりにも気持ちがよく、すにぐ山道を走ることに夢中になった。以降、コンスタントにレースに出場している川西さんに「楽しいと思ったことしかないんです」とビッグスマイルを向けられた。訳を聞けば、レースは上位を目指すものではなく“お祭りに参加する感覚で楽しむ趣味”なのだそうだ。 「参加中、ボランティアさんとお話するのが好きなんです。この辺で美味しいお店はありますか? と聞いて、レース後はお勧めしてもらったお店に行きますね。エイドにある地元の郷土料理も美味しくて、おかわりいいですか? ってたくさん食べてしまうこともあります。ほかにもランナーさんに景色良かったですね、次のエイドまで何kmでしたっけ? なんて走りながら話しかけます。それでは一向にタイムは縮まりません(笑)。長い距離の競技だからこそ、人と関わることができるタイミングも多いんです。そういうコミュニケーションが普段の接客にも生きているのかな」 フィールドで楽しむことが、人を豊かにしてくれる 休日だったこの日、川西さんは同僚と共に箕面山にいた。登山口は阪急箕面駅から歩いて10分ほど。街と山の距離が近いのがいいところですと、「ADVENTURE DESK」に訪れる登山初心者のお客様にも提案している場所でもある。実は川西さんたちは箕面山で『ULTRA RUNNING CLUB』のランイベントを開催したいと下見にやってきたのだ。 想定していたのは、北摂の景色が見渡せるわくわく展望台を経由しながら山中を走り抜け、観光名所でもある箕面大滝へと辿り着くコース。岩場や石の多い場所を確認したり、急勾配なトレイルも走ってみて、参加者を引率することをイメージしていく。川西さんのすぐ後ろを走っていた高祖裕介さんは、トレラン2回目。川西さんの影響を受けて走り始めたばかりだそうだ。 「以前彼の初めてのトレランのために京都を走るコースを組みました。伏見稲荷をスタートして山に入って、清水寺を通ってまた山に入る。そこから銀閣寺や哲学の道にも立ち寄って、観光要素もふんだんに盛り込みました。初めてのトレランは楽しむことが大事! いいコースでしょう?」 川西さんが大切にするのは、“楽しいかどうか”。これまで触れてきたさまざまなアクティビティで感じたワクワク感が、人を育み人生を豊かにするということを体験してきた人だからだ。そんな楽しさが「ADVENTURE DESK」を通して、まだフィールドでの遊びを体験したことがない人に伝わっていったなら…その人たちの世界はどれほどの広がりを見せるだろう。そのキーマンである川西さんが描く今後の夢は? 「ADVENTURE DESKはコロナ禍でスタートしたのでイベントができずにいました。これからはトレランや清掃登山など積極的に屋外へも出て行って、活動の認知を広げていきたいです。個人的には、UTMFに出場する予定を立てています。100マイル走破という目標を掲げているのですが、春に娘が産まれまして……。写真はいつも持って走っています。UTMFが厳しいレースになっても、走る活力になってくれること間違いなしです」 川西大河(かわにし・たいが) 1991年12月25日、兵庫県出身。国際自然環境アウトドア専門学校・野外教育学科卒業後、ゴールドウインに入社。〈THE NORTH FACE +〉の北海道の店舗や西宮ガーデンズでの勤務を経て、2021年3月よりグランフロント大阪へ。トレランに出かける時は自店で展開している「141 CUSTOMS」でサイズとカラーをカスタマイズしたSWALLOWTAIL HOODIEと大好きな羊羹が必須アイテム。 (写真 桑島薫 / 文 桃井麻依子) twitter RANKING SPOTLIGHT ラグビーが100倍楽しくなる、ビギナーのための観戦TIPS KNACK ニュージーランドの風土が産んだ、“経年変化”を楽しむバックパックの魅了松田清忠 SPOTLIGHT 「スポーツ」をキーワードに共鳴し企業の枠を超え、サステナブルな未来に取り組もう<後編>ザ・ノース・フェイス事業部西野美加さん×ソニー株式会社 鶴田健志さん KNACK 500mmは広角レンズ!? 野鳥撮影の奥深きギアを紹介 PEOPLE 祝、〈FUJI〉完走!臆せず挑んで打ち破った100マイルの壁 小林達郎
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