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いつからかスポーツが一番になった

スポーツを一番に考える、SPORTS FIRST な想いを持った
ゴールドウイン社員のライフスタイルに迫ります。

フィールドで培った経験を、店作りに反映させる 田村忠士

2022.02.07

札幌近郊のゲレンデやバックカントリーでテレマークスキーを楽しむのは、〈THE NORTH FACE + サッポロファクトリー店〉のマネージャーを務める田村忠士さん。出身は、国内随一のスキー天国、小樽。生まれ育った実家もスキー場にほど近く、そんな地の利もあって“スキーは足代わり”という子ども時代を過ごした。

「身体を動かしていないと具合が悪い」という田村さん、冬はスキー、グリーンシーズンはSUPやカヤックを使った釣りざんまい。春には午前中の釣り×午後のバックカントリーという両刀使いを楽しむ。そんな田村さんがアウトドアに目覚めたきっかけは、高校卒業後に観た映画『岳』だった。

「スキーはやっていましたけれど、アウトドアアクティビティは全然。『岳』を見て、登山やボルダリングに興味を持つようになりました。もちろん、パーコレーターを使って淹れる山のコーヒーにも(笑)。もともと好きだった古着やアメカジにはアウトドアのエッセンスがありますから、靴だけ買い揃えたらすぐに山に行けたというのも大きかったと思います」

子どものときに知らなかった、新雪を滑る感覚

無雪期の登山を始めたら、冬山でも遊びたくなってきた。スノーシューで雪山をハイキングしていたとき、バックカントリーを滑るスキーヤーの姿に目を留めた。

「そうか、こういうところも滑れるのかって、このとき山スキーの存在に気づかされました。僕が子どものころにはパウダー用のギアなんてなかったから、ゲレンデの新雪は邪魔ものにすぎなかった。だからなんだか新鮮で。試しにバックカントリーを滑ってみたら、風景は圧倒的だし人はいないしで、すっかり虜になりました」

以来10数年、冬はオフのたびにバックカントリーに入る生活を続けてきた。最近は家族が増えたこともあり頻度は抑え気味だが、「街と山がシームレスに繋がっている」という札幌のロケーションを活かして日常とアウトドアアクティビティをうまく両立させている。

「バックカントリーの場合、登って滑って、一本でおしまい。だから昼には街に戻ってきて家族との時間を確保できます。最近は午前中にバックカントリー、午後は家族とゲレンデを滑る、なんて過ごし方も増えてきました」

自分の理想の遊びを提案する

〈THE NORTH FACE + サッポロファクトリー店〉は、田村さんのライフスタイルをそのまま反映させたような店構えだ。THE NORTH FACEの店舗のなかで国内最大級の面積を誇る店内にはアウトドアスポーツを楽しむためのアウトドアゾーン、都会と自然をつなぐアイテムを揃えたライフスタイルゾーン、さらにはスリーピングバッグやテント、コンテナ類などを扱うギアコーナーなどが充実する。直営店としては取り扱うアイテム数、ブランド数とも屈指とあって、訪れる人を飽きさせない、多彩な提案を心がけている。

「日常で使うもの、アウトドアで使うもの、どちらも提案していますが、やっぱりアウトドアアクティビティに興味を持っていただきたいという気持ちがありますから、展示やディスプレイもそれを意識して作り込んでいます」

たとえば、現在のギアコーナーのディスプレイは田村さんの理想のスキーツアーを表現したものだ。トレーラーの前で滑りに行くために身支度を整える2人のスキーヤーと、その姿を捉えるために機材をチェックするフォトグラファー。トレーラーのなかはマットとスリーピングバッグが敷かれ、ランタンやカトラリーが居心地良さげな雰囲気を引き立てている。

「キャンピングカーにスキーを積んでトレーラーを引いて各地を巡る……スキーヤーなら誰しも憧れますよね。僕もトレーラーにスキーとカヤックも積んで、東北のいろいろなエリアを巡ってみたいと思っていて、そんな理想の旅像をディスプレイに活かしました。〈THE NORTH FACE + サッポロファクトリー店〉はPOP代わりに使う動画の内容とディスプレイをリンクさせている点が特徴ですが、今回はプロスキーヤーの姿を雪上で捉え続けるフォトグラファー、菅沼浩さんを題材にした映像作品、『THE PHOTOGRAPHER – Hiroshi Suganuma』をモチーフにしています」

大切にしているのは、経験に紐づくリアルな視点

立体的に世界観を作り込むディスプレイのテーマは、スキーだったりトレイルランニングだったりと、季節に応じてさまざま。だが、それぞれのアクティビティに経験のあるスタッフの、スキルや知識、経験を反映させるようにしている。リアルな視点を差し込むことで説得力がぐんと増すからだ。だからスタッフには大いに遊んでほしいと思っている。フィールドで遊んだ数だけ、経験は知識やスキルになり、それは売り場に反映されるからだ。

「ディスプレイの内容は僕やスタッフが選びますが、スタッフ全員に常に伝えているのは、お客さまがどんなきっかけでアウトドアを始めるかわからないよ、ということです。お店にはアウトドア愛好家だけでなく、日常着や散歩用のアイテムを探しに来る方もいらっしゃいます。たとえ散歩用に購入されたとしても、『あのときに買ったあのアイテムにはこんな機能がある、こんな使い方ができると言っていたな』と思い出していただければ、それが山に登るきっかけになるかもしれません。だからアイテムの機能やメンテナンス方法はきちんと伝えていこう、と。

ショップというのはお客さまとブランドのコミュニケーションの場であり、コミュニケーションとはきっかけづくりだと思っています。これからアウトドアに目覚めるかもしれないという方たちに、たくさんのきっかけを提案していけたら嬉しいですね」

もちろん、田村さん自身のアクティビティ計画もますます進化している。

「いま狙っているのは、積丹でのスキーと釣り。カヤックに乗ってマグロ釣りに行って、積丹の山を滑りたい。アイスクライミングにも挑戦してみたいけれどスキーと時期がかぶっているし、3月からは釣りも本格的に始まるし……。やりたいことがいろいろあって、整理が追いつきません。その前にまず、家族に貢献する時間をとらなくちゃいけないんですけどね(笑)」

(写真 渡辺洋一 / 文 倉石綾子)

  1. 田村忠士(たむら・ただし)
    1988年生まれ。北海道出身。幼少時から夏はサッカー、冬はスキーに明け暮れる。高校卒業後、アウトドアスポーツにはまり、好きなことを仕事にしようと、24歳でTHE NORTH FACE + サッポロファクトリー店に入店。現在はテレマークスキー、カヤック、SUP、釣り、キャンプといったアクティビティを、季節や気候に応じて楽しんでいる。

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