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いつからかスポーツが一番になった

スポーツを一番に考える、SPORTS FIRST な想いを持った
ゴールドウイン社員のライフスタイルに迫ります。

僕が毎日、ニセコの雪山を滑るワケ  鈴木秀明 

2022.02.14

「心から好きなことを仕事にしている人を、間近にしてみたかった」

〈THE NORTH FACE GRAVITY NISEKO〉で店長を務める鈴木秀明さんは、ゴールドウインに入社する前、THE NORTH FACEアスリートとして活躍するスノーボーダー、高久智基さんのもとで、「門下生」として4年間を過ごした。なぜ門下生に? と尋ねたら、返ってきたのが冒頭の言葉。鈴木さんの生き方に大きな影響を及ぼしたのは、高久さんをはじめ、ニセコで出会った「心から好きなことを仕事にしている人」たちだった。

ドロップアウトしてヨーロッパ周遊自転車旅へ

神奈川県出身の鈴木さんは大学を卒業後、一般企業にサラリーマンとして勤めた経験がある。証券会社の正社員として三重県の支社に配属されたが、とんでもなく仕事が忙しくストレスも溜まりっぱなし。心身ともに疲弊していったという。

「このままこうして人生を過ごすことはぜったいにだめだと思って、思い切って会社をやめたんです。ドロップアウトして向かった先はヨーロッパ。バルセロナのバイクショップで、スタッフに勧めてもらうままにトレックのマウンテンバイクを買って、そのままフランス、イタリア、スイス、ルクセンブルク、ドイツ、そしてデンマークを周りました。3ヶ月くらいの旅でした」

自転車旅の基本は野営で、3日に1回くらい宿に泊まるスタイルで旅費を抑えた。鈴木さんがいいなと思ったのは、行く先々でヨーロッパに根付いている自転車カルチャーに触れられることだった。数ヶ月かけて自転車で旅をする文化が根づいているから、みんなが気さくに声をかけ、エールを送ってくれる。特に思い出に残っているのは、大都市ではなく地方都市のパブでの風景だ。ビールを飲みながら現地の人と交流し、その国の生活や日常を垣間見ることが何より楽しかったそうだ。

Well-Traveledの精神で

“Well-Traveled”というけれど、こうした旅の経験がその後のさまざまな決断を後押ししたのかもしれない。「ヨーロッパから戻ったら、普通に就職してサラリーマン生活に戻ることを覚悟していた」という鈴木さんだが、なぜかニセコに移り住むことに。

「スキー&スノーボードの専門誌『Fall Line』に高久さんが門下生を募集しているという告知が出ていたので、それに応募してみたんです。高久さんの拠点はニセコですが、社会人になってスノーボードを始めたばかりのころに観た『Signatures』という映像作品を通して、ニセコに興味や憧れを持っていたという背景もあります。スノーボードの経験は浅かったけれど採用されたので、そのままニセコに移り住みました。11年前のことです」

高久さんが営むツアー会社、パウダーカンパニーで門下生として4年を過ごした。雪かきや除雪、送迎といった仕事から、ツアーへの同行まで幅広い業務を担当。同時にここで本格的にスノーボードの技術を磨き、山への知識と経験を深めた。

「ニセコの魅力は山が平らで誰にでも優しいこと、家の玄関を出た瞬間からパウダーがあること。自分は急斜面を滑りたいタイプではないので、仲間と一緒に楽しく滑れることが重要なんですが、その点、ニセコはコミュニティの規模もちょうどいいと思います」

今回の撮影は地元の人々が仕事前にひと滑りする朝の時間帯に行ったのだが、スキーやスノーボードを担いだ友人、知り合いとの挨拶が引きも切らない様子から、スキー場のスタッフも含めて滑りに集まる多くの人と顔見知りという、ニセコ・ローカルのコミュニティを体感した。


この日は鈴木さんの師匠で、The North Faceアスリートの高久智基さんとのセッション。ニセコのスノーコミュニティは濃密だ。

ニセコで出会った、かっこいい大人たち

「もう一つニセコで面白かったのは、高久さんのように『心から好きなことを仕事にしている人』がたくさんいることでした。いままで出会った多くの人はそうではなかったけれど、ニセコでは珍しいことではない。高久さんにしろ、今回の撮影を担当してくださった写真家の渡辺洋一さんにしろ、そういう人たちはみんな、雪の上での佇まいがかっこいいんです。板の上にいる時間が長い人独特の空気感、というのでしょうか。会社員時代に周りにいた人たちと比べてどちらが輝いているかを考えて、自分もこっちで生きていこうと思いました」

門下生を卒業し、高久さんの紹介で〈THE NORTH FACE GRAVITY NISEKO〉に入店してはや7年。グリーンシーズンは家から5分のスポットでできるフライフィッシング、波がよければサーフィン、トレイルを整備中のマウンテンバイクに、ウィンターシーズンはスノーボードと練習中のスキーと、相も変わらずニセコの大自然を満喫している。

「雪は毎日違うから同じエリアの山に入るにしても、雪面を触ると日々、硬さが違うんです。積雪量、風向き、湿度、雪崩コントロール……山を滑るなら、そこに住んでいないと安全な斜面選びはできません。それがリスクマネジメントだと思います」

春も夏も秋も冬も、毎日山に入る。気がつけば自身も、『心から好きなことを仕事にしている人』になっていた。

ローカルもツーリストも集う、ニセコのサードプレイスとして

そうしたコミュニティとの繋がりや山への深い知識、遊ぶことへの飽くなき好奇心を〈THE NORTH FACE GRAVITY NISEKO〉に還元することも鈴木さんの役割だ。ヒラフスキー場の麓に位置する〈THE NORTH FACE GRAVITY NISEKO〉はその場所柄、テクニカルなギアの取り扱いも多く、2階にはFISCHERのスキー板やブーツも取り揃える。一方で、1階にはコーヒースタンドが併設されており、1杯のコーヒーを飲むためにぶらりと訪れる人も。つまりはショップというよりは地元のサードプレイス的存在なのだ。

「ものを買うことはオンラインでもできる。人がわざわざショップに足を運び、ものを買うのはどうしてなのか? ショップでの購入の付加価値は、そのフィールドに詳しい人やローカルに暮らしている人とのコミュニケーションであり、そこから得られるリアルな情報や視点だと思っています。いい情報を提供することでリピーターになってくれるお客さまも少なくないですから」

そういう人たちと雪のことや山のこと、あれこれ話しながら仕事をさせてもらえることが自分のモチベーション、と鈴木さん。この店舗は日本のアウトドア文化を世界に発信する場だから、スタッフにももっと外で遊んでほしいと願っている。

「外に出て、遊び続けることで見えてくるものがある。ショップという場所を通じて、たくさんの人にそれを伝えていきたい」

(写真 渡辺洋一 / 文 倉石綾子)

  1. 鈴木秀明(すずき・ひであき) 
    神奈川県出身。大学時代の1年間のスコットランド留学と、社会人になってからのヨーロッパ自転車旅で海外経験を積む。大学卒業後にスノーボードを始め、映像作品『Signatures』をきっかけにニセコへの憧れを募らした後、THE NORTH FACE アスリートの高久智基さんの会社、パウダーカンパニーへ。4年間働いた後に〈THE NORTH FACE GRAVITY NISEKO〉に入店。11年目に突入したニセコ暮らしでは、ウィンターシーズンは毎日、スキーもしくはスノーボードで山の斜面を滑り降りている。

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