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札幌発、スノーアクティビティが中心にあるライフスタイル〈前編〉 尾関大輔

2023.02.21

〈THE NORTH FACE + 札幌ファクトリー店〉でスノー&マウンテンにまつわるギア&ウエアを担当する尾関大輔さんと、〈Goldwin〉のディヴィジョン担当の松田優樹さんは、プライベートでもアクティビティや山行を共にする良き山仲間。シーズンを問わず、休みのタイミングが合うときは連れ立って札幌郊外の山に出かけている。スノーシーズンまっただなかのいま、ふたりが夢中になっているのがバックカントリーで行うスノーアクティビティだ。ある日の平日、札幌郊外にあるバックカントリーフィールドへ出かけるというオフの2人に同行した。

店舗の先輩が導いてくれた、バックカントリー

岐阜市出身の尾関さんが札幌に移住したのは4年前のこと。「季節を問わず山が好き」といい、グリーンシーズンは縦走山行とクライミング、スノーシーズンはバックカントリースノーボードや雪山登山を楽しんでいる。

「もともとアウトドアカルチャーにもアウトドアアクティビティにもまったく興味がなかったんです。スノーボードを始めたのは高校生のとき、地元のスノーボードショップでアルバイトをすることになったのがきっかけ。“未経験のショップスタッフ”はさすがに体裁が悪いので、用具一式を買い揃えて近所のゲレンデでひたすら練習していました。当時はスノーボードがアウトドアアクティビティという認識さえなく、パークやグランドトリックがスノーボードだと思っていました」

初めは「何が楽しいのかまったくわからないままに練習していた」というが、滑れるようになるにつれ、スノーボードを好きになっていったという。高校を卒業後、地元の企業に就職すると趣味に費やせる時間はほとんどなくなってしまったが、それでもスノーボードは続けていた。

後に就職した会社を辞めて北海道移住へと背中を押したのも、スノーボードだった。ある年、スノーシーズンにトマムでリゾートバイトをしたものの、その年はあいにく降雪量が少なく、期待したほど楽しめなかった。それが悔しくて、「ならばこっちに住んでやる!」と、衝動的に移住を決めてしまったとか。

「トマムでリゾートバイトをスタート。その後、札幌に拠点を移し、〈THE NORTH FACE + 札幌ファクトリー店〉に入店しました。正直言うと〈THE NORTH FACE〉というブランドに特別な興味があったわけではなく、雇用条件で決めましたが、結果的に同じ店舗スタッフとフィールドに行くにつれて、山に連れて行ってもらったことで僕自身のライフスタイルが大きく変わりました。

休日のたびに山に出かけるようになり、時間の過ごし方や生活におけるプライオリティが変わった。いつしかライフスタイルの中心をアクティビティが占めるようになっていたとか。

接客で心がけるのは、使う人の視点に立った提案

バックカントリーを始めて4シーズン目、ライフスタイルが変わると自身のスタイルももの選びの基準も変化する。服も道具も、“山で使えるもの”という視点で選ぶようになり、それが接客スタイルにも反映されるように。

「スノーボードショップでアルバイトしていたときから、売るための接客はしたくないと思っていました。こちらに来て山のアクティビティにハマり、自分の経験やライフスタイルが充実してくると、それをフィードバックする大切さをますます実感するようになりました。人に勧めるものは、自分が使ったものや、調子良さそうだなと思ったものを。使う人の視点に立ち、その人のアクティビティに具体的に役に立つギアやウエアを提案することを心がけています」

〈THE NORTH FACE + 札幌ファクトリー店〉は取り扱うアイテム数、ブランド数とも他店舗に比べて段違いに多いのだが、ブランドや用途にこだわらず、スノーボードや雪山にフィットする商品をチョイスして提案する。そのためにギアの勉強会に顔を出し、新しい素材や機能の予習を欠かさない。

「その方のこれまでの購入履歴や手持ちのアイテムも含めて考え、いちばんフィットするものだけを提案します。時には、お客さまが手に取った商品について『それは不要だと思いますよ』とお伝えすることもあります。新商品の購入よりもリペアをお勧めすることもあります。営業としては失格かもしれませんが、無駄なものをお買い上げいただくより、もっと別のユースフルなギアに使って遊びの幅を広げていただきたいと思うんです」

“顧客と店員”以上の交流が生まれている

自身の経験に基づいた提案力と正直な接客のおかげで、尾関さんを指名して山道具を選びにくる顧客が増えてきた。「山が好き、バックカントリーが好き」という共通の話題を糸口に、顧客と山に行ったり滑りに出かけたりすることも少なくないという。尾関さん自身、“顧客と店員”以上の関係を築けることにモチベーションを感じているようだ。

「山の話が好きなので、お客さまともついつい、山行やバックカントリーの話題で話し込んでしまいます。行ったことのない山や滑ったことのない斜面、アクセスルートなど、お客さまから教えていただくこともたくさんあります。貴重な情報を教えていただけると、山仲間として心を許してもらえたのかとうれしくなりますね」

そんな尾関さんのコロナ後のいちばんの目標は、放浪の旅。実はバックパッカーで各国を周遊を予定していたタイミングでコロナ禍に見舞われてしまい、計画を中断しているのだとか。

「いつになるかわからないけれどバックパッカーとして世界を旅し、ひとまわりもふたまわりも成長して、またアウトドアアクティビティの世界に戻ってきたいと思っています」

(写真 中田 奨/ 文 倉石綾子)

  1. 尾関大輔(おぜき・だいすけ)
    1994年生まれ。岐阜県出身。高校生でスノーボードを始める。スノーボードをきっかけに北海道・トマムに移住する。4年前、〈札幌に拠点を移し、THE NORTH FACE + 札幌ファクトリー店〉入店。バックカントリースノーボードでアウトドアの魅力に目覚め、グリーンシーズンの縦走登山やクライミングにもハマるなど、通年を山の中で過ごしている。

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