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釣り人2人が語る コロナ時代の釣りの楽しみと環境問題のこれから 

2021.06.30

コロナ禍で身近なアウトドアアクティビティが注目を集める昨今。とりわけ釣り人口の増加は2020年の大きなトピックスだった。一方で、急激に増えた釣り人によって、釣り場環境が悪化の一途を辿っていると指摘する声もある。過去にSports First Magに出演した二人の釣り人に、最近の釣りに思うこと、そして未来の釣りへの展望を語り合ってもらった。

梅野陽典
福岡県出身。ザ・ノース・フェイス+ キャナルシティ店、THE NORTH FACE MANを経て現在はTHE NORTH FACE ららぽーとEXPOCITY店に勤務。20代中盤にバスフィッシングの戦略性とゲーム性の高さに夢中になり、特に福岡・筑後川での釣りを熟知する。最近は琵琶湖に通いつめている。

ブランドの価値観を体現する店長は釣り人 梅野陽典
夢と実績を詰め込んだ! 琵琶湖バスフィッシングのタックル選び

倉成直亮
THE NORTH FACE ららぽーとEXPOCITY店を経て、現在はキッズ専門店のTHE NORTH FACE KIDS 原宿店で店長を務める。横浜に育った幼少期から釣りにのめりこみ、オーストラリアでの生活や板前を経て、アウトドアブランドとしてのTHE NORTH FACEを広めるべく現職に。サーフィンや登山など、根っからのアウトドア好き。

お客様にもスタッフにも、フィールドに出る喜びを 倉成直亮

二人の最近の釣り事情

Sports First Mag(SFM)
お久しぶりです。以前のSFM取材ではありがとうございました。今日は釣りの話をメインにお伺いしますが、倉成さんはこの間に勤務先が変わって、お住まいも変わられました。釣る魚や環境も変わりましたか?

倉成
湘南に引っ越しました。やっぱり海近いところがよくて。江ノ島とか七里ヶ浜とか、海まで自転車で20分くらいですね。ただ、なかなか釣りには行けなくなりました。湘南エリアは駐車場の問題もあって、近所で釣るか、船に乗って沖堤防へ出ることが多くなりましたね。

SFM
釣る魚自体は変わりましたか? 船に出るとまた変わると思いますが、関東に来られて、具体的にどんな魚狙っているか教えてください。

倉成
基本的にルアーフィッシングがメインなので狙う魚は、シーバスや青物と変わらないんですが、やっぱり淡路島やあの付近のエリアは、釣り熱自体が違うなと感じます。関西の方がすごいですね、その辺りは。

梅野
僕は前回の取材の後も、琵琶湖にちょくちょく行っています。週に1回は必ず行くかなって感じです(笑) 淀川にも行きますね。

倉成
僕は子どもが生まれたので調光回数は減りましたが、それでも月に2回くらいは行っています。海自体には週1回以上行っています。

最近の釣果報告!

梅野
最近はいい魚が釣れました。琵琶湖の北湖です。4月の下旬ごろ、お店が休業に入る前です。大阪の緊急事態宣言が出る前からお店は休業していました。(※6月1日より営業再開)

SFM
梅野さんは一ヶ所の釣り場に通い込む一方で、倉成さんは釣り場の環境が変わられました。お二人とも釣りは変わらず楽しまれていて、以前の取材後にコロナ禍がやってきたわけですが、コロナ前後で釣りへの向き合い方など変わりましたか?

倉成
正直なところ、湘南エリアはコロナ禍を受けて関東中の人たちが海に詰めかけて問題になりました。僕の車はまだ神戸ナンバーなので、動くことに対して気を遣ったり。自分たちの好きな時に好きなタイミングで行けないことにはいろいろ考えさせられましたね。実際に江ノ島に出てみると、ものすごく人はたくさんいるというギャップを感じましたね……。

梅野
緊急事態宣言中に一度、自転車で行ける淀川に行ったんです。すると釣り人とかキャンパーとかものすごく人がたくさんいて驚きました。僕自身の釣りのサイクル自体は、緊急事態宣言とか、大阪府や滋賀県が発令している内容に従う形で自粛していました。

SFM
釣り場には人が増えたという点ではお二人とも共通していますが、釣り場の環境自体の変化は感じますか? 倉成さんは関西から関東に来られて、感じるところも大きいかと思いますが。 

倉成
僕も関東に来てから意外に思いましたが、東京湾や関東は釣り場が割と整備されている印象です。逆に淡路島や僕がいた林崎・松江海岸は、駐車場も無料で基本的に設備がないので、ゴミが多かったですね。ここには僕自身ギャップを感じました。ロケーションだけなら淡路島の方がいいのですが、ゴミや釣りのラインの残骸といったものが少ない関東の方が、第三者のストレスを感じなく釣りできていますね。

SFM
梅野さんは、琵琶湖に通われていますが、ここ最近の変化を感じますか。前の取材の時にもゴミ拾いをされてるシーンが印象的でした。

梅野
琵琶湖の釣り人は意識高いと思います。ゴミは捨てないし、釣りyoutuberがゴミ拾いやりましょうと呼び掛けたり。基本的に魚釣りさせてもらっているっていう感覚の人は多いかなと思いますね。もともとブラックバス自体が外来魚で、それ以上釣りの立ち位置を悪くさせたくないなっていうのもあるのかと。

梅野さんは釣りに行くとゴミを拾ってから帰ることにしている

梅野
一方で淀川は老若男女様々な人が来ていて、釣り人のマナーももちろんですが、様々な要因もあって荒れていると思います。あまり自然環境の意識なく、無自覚に、無意識にゴミを捨てている人も多いんじゃないでしょうか。この写真は城北ワンドという、淀川の有名ポイントです。上流から流れてきたゴミを入れていいですよっていうカゴがあるんですけど、その設置もどうなんだろうって思いつつ、関係ないゴミも入っているという。

SFM
上流からきたゴミを入れておけるゴミ箱なんてあるんですね。

梅野
独特なんですよね、線引きの仕方が。大阪って。これだけゴミが出ているというのは、決して釣り人だけの問題でもないのかもしれないですね。

SFM
倉成さんに撮っていただいた釣り場の写真も、コンクリートの護岸上にペットボトルなんかが散乱しています。これはどういった状況ですか。

倉成
これは、潮が溜まっているところで、潮の満ち引きでゴミが取り残されたっていう写真ですが、ほとんどのゴミはペットボトルでしたね。港のエリアってこういった感じのゴミが多いです。逆に湘南とかの海岸は、人は多いのですが、その分意識も高い人が多いんです。毎朝ゴミ拾いしている人が結構いて、割とビーチ自体はきれいかなという印象がありますね。夏の由比ヶ浜は凄いことになっていますが。

SFM
改めてサーファーと釣り人には見えている海のゴミの量が違う気がしてきました。

倉成
そうですね、やっぱりサーファーの方が、ゴミ拾いをなんのためにやるのか、本質を分かっている思います。自分たちが遊ぶ環境のためということを、偽善じゃなくやれている感じがします。海を守るため。これからの子どもたちのため。ぼくらも今キッズの事業をそういう考えでやっているんですが、目の前の偽善のためにやる人との差はあるな、と思いますね。結局拾って、その場にあるゴミ箱に捨てていくだけなので。

SFM
釣り人はそこでいくと、まだまだサーファー的なところまでは余地はあるなという感じですか。

倉成
そうですね、あと、釣りに関しては年配の方にももっと意識を高く持ってほしいですね。

梅野
それはあるかもしれませんね。

倉成
釣った魚は逃さないでそのまま捨てる。酒を飲んで、タバコをポイポイと海に捨てる。若い人の方がその辺りは意識が高いと思います。決して全ての年配の方がそういうわけではありませんが。

SFM
そういう意味では、これからの世代に、正しく釣りとかアウトドアの楽しさを伝えて、環境意識を上げていくのは大事ですよね。

東京湾で釣れる魚が変わってきた

倉成
実際にサーフィンで海に入っていて地球温暖化を肌で感じるようになってきました。海水温が高くて10月くらいまでウェットスーツ無しで入れますから。あとは、東京湾の釣りものが変わってきていて、温暖化で黒潮が入ってくるようになって、いままで見なかったオオモンハタのようなハタ系の南方の魚が普通に釣れるようになりました。食物連鎖も変わっていくんじゃないかな、と思います。千葉の館山が好きで良く行くんですけど、地球温暖化で台風のルートに入るようになったなと感じます。最近サーフィンの波情報を見てても台風のルートが東京に湾入ってくる確率が高くなったなというのは、海水温が上がったからじゃないかと思いますね。

SFM
気候変動を、水を通して感じているんですね。THE NORTH FACEはアウトドアブランドとして長らく環境に対してのメッセージを発し続けていますが、それをお客さんと接する店舗のスタッフさんがどう伝えるかもすごく重要だと思います。接客をする中で、最近のお客さん側の変化を感じられたりしますか?

倉成
有料化ということもありますが、店舗のショッピングバッグを持って帰るお客様は間違いなく減りました。
THE NORTH FACEのお客様の中には、そういったことから気付いていただける方も多いのではないかと思います。
ただ、地球環境とかサスティナブルとかSDGsみたいな世界全体で取り組んでいかなければいけないことに対して興味関心があるお客様はまだまだ少ないと感じます。

SFM
THE NORTH FACE KIDSのお客様は、保護者の年代ということになりますが、この層の環境意識はどうでしょうか。

倉成
キッズの商材はサイズアウトしてしまうので継続的な顧客様にならないんですよ。100から購入されてた方でも150になってしまうとそこから先が無くなるので。サイズアウトした服を、いかにうまくブランドとしてリサイクルできるのか、いま店舗の中で議題に上がっています。現在も無料の修理はやっているんですが、ネームタグの付け替えサービスができないかと。THE NORTH FACEの服をお下がりで使えるようになれば、一回で終わりじゃなくて長いスパンで製品を使用してもらえるサービスになるのかなと。これは今季取り組みたいと考えています。

お店だからできる、環境への取り組み

倉成
店舗単位では、ほぼ全店でマイボトルの持参徹底と、基本的に裏紙を使うペーパーレス。トイレもハンカチを持参して、余計な紙は使わないようにする。次第にスタッフの意識も変わってきて、週に1度SDGsの勉強会をやったりしています。歯磨き粉、洗剤、洗顔剤をマイクロプラスチックが入っていないものにしてくれていますね。

SFM
その勉強会ではどんなことを学んでいるのですか?

倉成
1人担当者を決めて、毎月そのSDGsの中の17項目のなかで、山や陸の環境を守ろう、海の環境を守ろう、地球温暖化というところに焦点を当てて、年間のゴミの量を調べたり、本当に基礎的なことを導入的に説明してもらったりしています。なんのために環境問題へのメッセージをブランドが発しているのかを理解するには、自分たちのこれからの未来に直結していることを理解する必要があると思うんです。僕らアウトドアしている人間からすれば、肌でゴミ問題を感じるので、そういったところを共有していくことからです。それに、そうした取り組みをしていないと、お客さんに対して、ショッパーにお金払ってくださいとは言えないですよね。

SFM
お店単位でも、梅野さん倉成さんの個人単位でもいいのですが、THE NORTH FACEというブランドを通じて、環境というところで何かこういうことをしたい、こういうことができたらいいといったビジョンはありますか。

梅野
コロナ禍が落ち着いたらイベントには参加したいしやりたいですね。実際にお客様に自然と触れるきっかけを作る、楽しんでもらう、こういう世界があるんだって知ってもらう。環境意識のない方って、もしかしたら外遊びをほとんどしていなくて、自然環境がテレビの中の世界だったりとか、自分の関係ないとこでやっていることだという思いがあって自分事にできていないのかもしれない。一緒に楽しんだり、共有できれば、こういう楽しい時間や面白い時間のために自然環境を守りたいと思えるのではないでしょうか。

倉成
僕は、さっきお話しした子どもが持続的に長く使える製品を提供していくことです。あとは、今年の5月にゴールドウインが2030年までに衣類の廃棄をゼロにすると宣言したのですが、そういった会社の取り組みも店舗としてお客さんに伝えるのが僕らの仕事だと思います。キッズなので特に「未来」と言いますが、店舗の課題としても、「未来ある子どもたちに明るい未来を」っていうところもあるので、やっぱり僕たちがこういう行動を起こしていって、子どもたちにメッセージを発することが一番かな、と。次の世代を育てるということですね。梅ちゃんも言っていましたけど、イベントをやるとか、伝えていくっていうのを店舗からやっていかなきゃいけないなと思いますね。

SFM
ありがとうございます、いいお話が伺えました。今回は釣り人鼎談というような体裁でもありますので、最後は釣りの話で締めくくれればと思います。これからの釣りの楽しみ方や目標、お二人が夢見る釣りのあり方を語っていただけますか。

梅野
琵琶湖で60cmオーバーのバスを釣る夢を最近叶えちゃったので、次は淀川で釣りたいですね。その時には、淀川が少しでも綺麗であってほしいです。淀川は元々は琵琶湖から流れている水なので、繋がってるわけですし、琵琶湖ぐらいのマナー意識にたどり着けたら、雰囲気やイメージがもっとプラスになっていくんじゃないかなと思います。

倉成
もちろん釣りって釣れる釣れないって、そういうのも大事なのですが、自分に子どもができたのもあって、釣り場環境を次世代に残していくのが僕のいまの宿命だと最近思うようになりましたね。夢ではないですけど、今後子どもたちが大人になった時に同じ環境でその子どもたちに引き継げるような場所を残したい、とはシンプルに思いますよね。なんせまたコロナで、インドア化が進み学校でも行事がなくなっている中で、遊びを残す、フィールドを残すということが僕らの仕事かなと。かっこつけすぎかもしれませんが、今思っていることです。ひとりで行動することが増えたというのもあると思います。コロナで大人数では行けなくなって、1人で釣りを黙々とやっていると、結構ものの見え方も変わってきました。

SFM
1年間以上の時間の流れが、お二人の考え方や感じ方、動き方に変化をもたらしていることがわかるインタビューでした。ありがとうございました。これからも、よい釣りを!

(写真 辻啓、田辺信彦)

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