
富山湾に立山連峰の大パノラマと、富山県のシンボリックな風景を楽しめる「富山マラソン」。11月6日に開催される2022年大会では、およそ13,000人の市民ランナーがゴールを目指す。2015年の初開催以来、「富山マラソン」のゴールドパートナーを務めるゴールドウインからは、毎年数多くの社員、スタッフが参加しているが、なかでも優秀な成績を期待されているのがゴールドウイン テック・ラボでプロダクトデザインを担当する西浦孝則さんだ。出場2回目となる昨年大会では見事、自己ベストを更新し準優勝を果たした西浦さんに、「富山マラソン」攻略のポイントを指南いただこう。まずはスマートかつ快適なウェアリング術から。

大学時代は筑波大学の陸上部に所属し、箱根駅伝出場を目指して厳しいトレーニングを積んでいたという西浦さん。当時から着用するウェア選びの基準は「軽さ」と「動きやすさ」だったが、現在もウェアに求めるものは変わっていない。西浦さんの富山マラソン本番の装備を見てみよう。
基本のウェアリングは、軽さこそ正義!

「基本はランシャツ+ランショーツの組み合わせです。ランシャツは素材が重要で、肌に張り付かず速乾性能に優れたものが好みです。気に入っているのは、THE NORTH FACEの『スリーブレスフライトハイパーベントクルー』。汗をかく部位にメッシュ生地が使われていて、オーバーヒートを防いでくれます。肌面には撥水糸が使われていて、汗をかいても肌離れがいい点もポイント。

同様に、ランショーツも軽さ重視で選びます。愛用のショーツはTHE NORTH FACEの『フライウェイトスピードショーツ』。メカニカルストレッチ生地で動きやすく、超軽量。サイドにスリットが入っているから足さばきも抜群にいいんです。サイドにパンチングメッシュが施され、通気性を高めてあります。ウエスト部分のポケットにジェルを収納できるのも便利ですね。撥水素材なので、大量に汗をかいても重くなりません。個人的には裾が裁ち切りになっているところが好み。折り返しになっているとその分重くなるし、気になるんですよね」
快適に走るため、肌ざわりも重視。
「レースの間中、ドライな肌感覚が続く高機能ソックスで、アーチサポート機能付き。ざらつき感が特徴の紙糸素材で仕立てられていて、吸湿性が高く、蒸れにくいのでマメができにくいのがいいんです。多く汗をかいてもにドライ感を強く感じますね。5本指タイプは長距離を走っても指の股が擦れず、快適です」
この3アイテムに加え、寒ければC3fitのアームカバーとコンプレッションカーフスリーブ、グローブを追加する。

「アームカバーとゲイター(カーフスリーブ)も薄くて軽量なものを選びます。冷えを防ぐためにも、ドライ感が続く素材だとなおよし。指先の冷えは気になるので、グローブを着用することも多いです。給水ポイントで濡れてしまいがちなので、速乾性能にすぐれたアイテムを選んでいます。暑くなったらショーツのウエストポケットにしまって」
もし10度以下になったら……
11月初旬に開催される「富山マラソン」本番でそこまで気温が下がることはなさそうだが、もし低気温になった場合はさらにアレンジを加える。
「まず、ランシャツを同じ素材のTシャツ型にチェンジ。袖があるだけで窮屈さを感じるのでノースリーブが好きなのですが、Tシャツを着て肩の露出を抑えると保温性が格段に高まります。ショーツはそのまま、さらにアームウォーマーとゲイターを加えます。

マラソンは冬がオンシーズンですが、多くのランナーは動きやすさを重視してノースリーブのランシャツにアームウォーマーをつけています。でももし腕が振りやすいTシャツ型があれば、ランナーのウェアリングががらりと変わるんじゃないかと思っていて、現在、Tシャツ型ランシャツの商品化を考えていて、いろいろ試行錯誤しているところ」
ボトムはショーツからハーフタイツに変更してもいい。
「最近はタイツで走っているランナーも多いですね。裾がまとわりつかないので、走っていてストレスを感じないところがタイツのよさ。ポケットつきがあるとさらにいいんですが……」
マラソン本番の雨対策。
雨天では、ゼッケンが透けて見えるよう、THE NORTH FACEの「ストライクトレイルフーディ」のクリアカラーを着用する。対水圧20,000mm、透湿性40,000g/m2-24hという防水透湿性に優れたシェルで、重さはわずか110g!
「暑くなったらジップを開けたり、脱いだり、こまめな体温調節を心がけます。脱いだシェルは小さく畳んでショーツのポケットへ。手のひらサイズに折りたためるから、携行性も高いんです」
そのほか、マラソンにおすすめのアイテムは?
「寒い日にはいちばん下にドライレイヤーを着用するのも効果的。ランナーには馴染みの薄いアイテムかもしれませんが、肌面のドライ感を保ってくれるので、低気温下で体温を維持できます。寒さだけでなく雨天でも効果を発揮するので、幅広い天候に対応するアンダーウェアだと思います。もしドライレイヤーをお持ちでない場合、薄くて速乾性の高いノースリーブのランシャツをドライレイヤー代わりに着用し、それに半袖タイプのランシャツをレイヤードしてもいいですね」
レース前のアップは、あえての厚着で手短に。
レース中のウェアリングと別に、アップ用のアイテムも紹介してもらった。
「レース用のウェアは速乾性・軽量性を意識して選びますが、それとは別に保温性の高いウエア類をアップ用として持参します。レース本番で42km超を走ると考えると、レース前のアップでは体力の消耗を最低限に抑えたい。効率的に身体を温めるため、あえて厚着をして20分ほど軽く動くようにしています」

そんなとき重宝するのが、防風性に優れた素材で仕立てたインサレーションジャケット、「レッドランプロフーディ」(写真右)。その下に着用するのは、吸汗速乾性をそなえた「サーマルバーサグリッドクルー」(写真左下)。グリッドフリース製のロングスリーブTシャツだ。
「吸汗速乾性に優れたウェアを着用していてもやっぱり汗はかいてしまう。とはいえ、レース用のウェアを濡らしたくないので、アップ時のインナーにはレース用ではないウェアを着用します。こまめに着替えるのがアップの秘訣です」
サブ2.5ランナーならではの知見が詰まったレイヤリング術をぜひ参考に。次回は補給について考えます!
(写真 古谷勝/ 文 倉石綾子)
- 西浦孝則(にしうら・たかのり)
1993年生まれ。和歌山県出身。野球部だった中学生時代に駅伝選手に抜擢され、県内優勝を経験。高校生から陸上に打ち込み、進学した筑波大学では箱根駅伝を目指す。大学院ではランニングフォームの研究に従事。自他ともに認めるランニングシューズ好きで、現在はゴールドウイン テック・ラボでランニングシューズ開発に携わる。2021年の富山マラソンでは自己ベストを記録し、準優勝を果たす。