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新しいボランティアの形を模索していきたい 白﨑裕大

2018.12.12

「頑張れ!」「あと少し!」ゴールドウイン創業の地のある富山を舞台にした富山マラソンの沿道で、ゴールドウイン テック・ラボで働く白﨑裕大さんの声が響く。白﨑さんは、富山の社員で組織される委員会の委員長。34㎞地点に設けた私設エイドステーションで、疲れがピークに達したランナーたちを応援していた。

ゴールドウインは2015年の第1回大会から、このマラソン大会のゴールドパートナーを務め、大会ボランティアの参加だけでなく、有志社員が集まって、11㎞地点でブドウ糖を配る私設エイドを設けてきた。今年、11㎞地点に加えて新たに34㎞地点にも私設エイドを出すことになった背景には、昨年、実際に大会を走った白﨑さんたち委員会メンバーの「このあたりにエイドがあったらいいね」という実体験にある。

shirasakiyasuhiro
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「この大会は平坦なところが多く走りやすくはあるんですが、(20km地点の)新湊大橋だけ、景色は最高なんだけど、ものすごく高低差があるんです。そして、ここを乗り切ると農道が続き応援も一気に減ってしまう。30㎞を過ぎると体力的にも精神的にも疲労がピークに達するので、このあたりにエイドや応援の声があれば、残りも頑張れるねということで、今年初めてコース後半にエイドを出しました」

そこでどんなことをしたらランナーの助けになれるか。社内のフルマラソン経験者にリサーチし、コールドスプレーを準備することになった。疲労困憊のランナーたちがエイドに立ち寄り、重たくなった脚にコールドスプレーをかけてもらうと、それまで険しかった表情がふわっと明るくなる。

「元気になりました」
「これでまた走れます」

そうした感謝のひと言ひと言が、準備や立ちっぱなしの苦労を吹き飛ばしてくれる。

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「まだまだ余力のある11㎞地点とは違い、ここではランナーたちから、本当に助けてほしいという切実さが伝わってきます。そうした方々の助けに少しでもなれて僕らも嬉しいし、やりがいを感じます。短い時間ではあるけど、コミュニケーションも取れましたし、やってよかったですね。メンバーの間で早々に『来年も絶対やろう』という声が挙がりました」

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委員会活動の楽しさややりがいを多くの人に感じてほしい

白﨑さんは、ゴールドウイン テック・ラボの設計開発チームで働き、新しい技術をどうしたらに設計に活かせるかなどに取り組む。入社以来、仕事と並行して委員会に参加し、今年から委員長を務めている。今回の私設エイドは、白﨑さんが委員長を務める委員会が企画し、メンバーを募集したところ、県指定の第一給水所に約40名、11km地点の私設エイドに約30名、そして34km地点の私設エイドには9名が集まった。

「部署の垣根を越えて集まってくれました。こうして、普段の仕事では接点のない人たちとの輪が広がっていくのが本当に楽しいですね」

shirasakiyasuhiro
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白﨑さんは、委員会の活動で感じている楽しさややりがいがより多くの人に伝わり、活動に参加してもらえるように、現在組織の在り方を見直している真っ最中だ。

「これまでは委員会執行部が、年間行事を決めて参加者の募集をかけ、集まった人で実施する形をとってきました。来年からは、もう少しフラットにというか、執行部が考えたことだけではなく、何かやりたいことがある人を中心に、その人の思いを叶えるためにみんなが集まって、自主的に活動できる形にしていけたらいいなと思っています」

フィールドで味わう自然の営みと非日常感

富山マラソンは、昨年、白﨑さんが初めてフルマラソンを走った思い出の大会でもある。普段共にスポーツをしている仲間が練習に付き合ってくれた。

「小中学校でサッカーをしていただけで、ゴールドウインに入るまでは自ら進んでスポーツをするタイプではありませんでした。入社しても、まさか自分がフルマラソンを走るなんて考えもしなかったですね。参加しても応援止まりで、自分のこととは思えなかったんですけど、2年前からトレランを始めて、仲間が富山マラソンに出るというので『じゃ、自分も』と。一昨年、11㎞地点で応援して、自分もいけるんじゃないかと錯覚した部分もありました(笑)」

shirasakiyasuhiro

ソフトボール部、フットサル部、アスレチック同好会にも所属しているが、最も熱心に取り組んでいるのは、百名山同好会。スポーツとは縁遠かったが、今となっては、自然というフィールドで身体を動かす気持ちよさを味わう生活を送る。

「刺激的な東京に憧れて福井から上京し、新宿の専門学校でパターンの勉強をしていましたが、今は、都会の刺激よりも自然の営みがくれる非日常感に魅力を感じます。風の心地よさだったり、太陽の温かさだったり、気持ちがいいんだなって、入社してから気づけました。春になると田んぼの土が耕され、水が張られ、田植えがあり、夏に向けてどんどん成長していく。季節の移り替わりを自然のサイクルで感じられるのがすごくいい。時計が刻むのとはまるで違う感覚です」

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一緒に山を登る仲間とは、自然とウェア談議になることもある。実際にウェアを着て身体を動かし、そこから生まれた気づきをその場でシェアする。

「この前一緒に登ったメンバーが着ていたTシャツは、縫い目の位置が、腕を振ることですれて毛玉になりやすかったので、縫い仕様か位置を考え直さないといけないねと話していました。みんな、こんな商品があったらいいねとか言い合ってますよ。改まった会議のような場よりも、スポーツフィールドでのほうが、いいアイデアが出やすいのかもしれません(笑)」

  1. 白﨑裕大
    1982年生まれ。福井県出身。2005年ゴールドウイン入社。設計業務を担当。今年度より津沢地区の委員長を務める。入社後は、登山やマラソンなど様々なスポーツに参加し、気の合う仲間と一緒に体を動かす楽しさを感じている。

    (写真 茂田羽生 / 文 小泉咲子)

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