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ギアにはシンプルさと機能美、作りの丁寧さを 狩野茂 x 野中研二 キャンプギア対談<後編>

2021.11.24

この対談では前・後編に分けて、ザ・ノース・フェイスのエキップメントチームの狩野さんと野中さんに、お話を伺いました。前編では愛用しているランタン、焚き火台、クッカーの話に加え、いまお二人が欲しいギアについて語っていただきました。この後編では、愛用のクッカーやテーブルウェアにはじまり、今後のキャンプシーンについてなど、幅広く対談している内容をお送りします。

二人ともイワタニ好き!?

SFM
前回の対談ではランタン、焚き火台、そしてクッカーの3種類について、お二人のお気に入りのギアを紹介していただきました。今回はその続きということで、コンロ系はどんなものを使っているのかから伺いたいと思います。

狩野
コンロはまた被っちゃうと思うんだよなあ。

野中
もしかして、イワタニのアレですか?

狩野
やっぱり被った(笑)。「イワタニプリムス」の「P-2FLA」。これも90年代に購入したもの。当時はランタンもプリムスのガス式のを使っていたこともあって、ガスはプリムスで統一しようかなという感じだった。アルミでメカニカルな構造はいま見てもカッコいい。

野中
写真を見ても、さすがに年季が入ってますね。

狩野
ほぼ、ノーメンテだからね。でも、最近違うのも買ったよ。同じ「プリムス」なんだけど「キンジャ」というモデル。現代風にアップデートした。

野中
1つのガス缶で2口使えるやつですよね。

狩野
そうそう。でも、いまは日本での展開はないみたいだね。野中の「P-2FLA」は、お父さんから譲ってもらったもの?

野中
そうですね。あとはシングルバーナーも持っていったりしますが、それは「イワタニプリムス」の「スパイダー」とかです。

狩野
お互い「プリムス」好き。

野中
前回も話に出たんですけど、キャンプというと「プリムス」の黄色のガス缶のイメージなんで、ガス系は自然と「プリムス」に揃っていってしまうんですよね。「プリムス」じゃないところだと「マーベラス」ですかね。

狩野
それにしたって「イワタニ」だもんね(笑)。「マーベラス」は便利?

野中
ですね。それなりにコンパクトで、CB缶なので燃料も手に入れやすい。風防も付いているのでカセットコンロなんですが、火力もあるし安定感ありますね。

愛用ギアの共通点はオールドスクール

SFM
次はテーブルウェアというちょっと大きいくくりになってしまうんですが、どんなものを愛用していますか?

野中
料理好きなんで包丁は2、3個持っていきます。埼玉県の川越にある「まちかん刃物店」というお店があるんですが、二十歳の成人祝いでそこの包丁を買ってもらって、それをキャンプでも家でも使ってます。あとは「貝印」のもので、柄だけ共通で、用途に合わせて刃を付け替えられるものがあって、それも愛用してますね。

包丁ケースは「tent-Mark DESIGNS」の「包丁一本」。普段使いの包丁をアウトドアに安全に持ち運ぶというコンセプトと機能性がお気に入りだとか

狩野
テーブルウェアか。あんまりこだわりないかもしれない。

野中
たしかに難しいですね。古い「キャプテンスタッグ」のステンレストレーはよく使います。お洒落でもなんでもないんですが、なにせ壊れないんで買い替えるタイミングもない。

狩野
いま見ると格好いいけどね。もともとアウトドアギアってミリタリー派生のものも多かったんで、昔はこういう無骨なのが多かったね。

野中
同じ素材のマグカップなんかもあって、それをガシャガシャっと持っていく感じです。

狩野
素材だと、ホーローが好きかな。特にホーローのマグカップ。ショップオリジナルとかでロゴがプリントされているやつとか見ると、ついつい買っちゃう。あとはテーブルウェアかどうかは微妙だけど「ミロ」の「パーコレーター」。

野中
これまた使い込んでますねえ。

狩野
最近だったら、ウッドのテーブルウェアとかカッティングボードにこだわったりしてる人も多いけど、いままで使っていたものが問題なく現役で使えるからね。なかなかテーブルウェアは増えていかないな。

野中
ある意味、ちゃんとしたものを選んでるから、使い続けられてるってことなんでしょうね。

狩野
こうやって見てみると、2人ともシンプルなギアが多い感じだね。

野中
というか、オールドスクールですね(笑)

スタイルが見える嗜好品ギア

SFM
愛用ギアの最後として、その他、というこれまたバックリとしたジャンルが残ってます(笑)。

野中
僕の場合はクルマもひとつのキャンプツールと捉えているところはあります。ルーフキャリアを付けて、そこに荷物を積むことが多くなってきているんですが、結講車高が高いので、足場がないと載せられないんです。いま使っているのは「長谷川工業」の「DRXB-1098a」ですね。

狩野
こんなブラックレーベルなんてあるんだ。格好いいじゃない。

野中
足場としての使い方だけじゃなく、上に木の天板を付けて、そのままキッチン台として使ったりしてます。

狩野
ハシゴの途中に天板を差せば2段使いとかもできるし、いいアイデアだね、これ。俺はこれとかかなあ。

野中
ん? なんですか、これ? 焙煎器?

狩野
ポップコーン作れるやつ。タネをいれて焚き火でガシガシやってるとポンポン跳ねてきて楽しい。

野中
これ、めちゃくちゃ良いですね。

狩野
子供と行くことが多いからこういうアトラクション的な要素がないと飽きちゃうんだよ。

野中
これはどこのなんですか?

狩野
「ROMA Industries」ってメーカーなんだけど、壊れた時用に二個買いしてる。

野中
けっこう二個買いってします?

狩野
最初から二個買うことは少ないけど、後から同じのを予備として買うことはたまにあるかな。使ってみて出来がよかったりしたら。あとは変わったところでは、この電子式の着火装置。イグナイターが付いてないバーナーとかに火花を飛ばす、それだけの道具。

野中
ターボライターではないんですよね?

狩野
そう、火花を飛ばすだけの単機能。たぶん業務用なんだけど、特化したがゆえの機能美があるよね。

2人が考える良いギアの条件

SFM
愛用ギア、それぞれの個性が出ていて面白いですね。それでいて、意外と同じ物を使っている感じも興味深かったです。さて、いろいろと愛用ギアについて聞いてきましたが、ちょっと話題を変えて、ギアを作る立場にもあるお二人が考える、良いギアとはどんなものだと考えていますか?

狩野
シンプルで機能美があること、というのは意識しています。奇をてらっていない、長く使えるもの。

野中
それに加えて、作りが丁寧であること、というのも大事だと思います。それなりのお金を出して買ってもらうものなので、長く使えるような機能性であったり、デザインであったり。普遍性のようなものは持たせたいですね。

狩野
流行りっていうのは、あまり追いかけないよね。ただ、実際にキャンプに行っている人間が作っている、ということは大切にしている。キャンプギアって、実際にキャンプに行かないとアイデアが生まれにくいジャンルだと思う。

野中
そういう意味では遊び倒して作ってますからね。そこは自信ありますよね。

SFM
いま、どんどん盛り上がりつつあるキャンプシーンですが、お二人から見て、今後どういう流れになると予想されますか?

野中
かつてのオートキャンプブームとかよりも、流行りの感じがない気はします。ライフスタイルに定着してきた感じがありますよね。

狩野
希望としては、キャンプはアウトドア遊びの入口でもあると思っているので、今後、キャンプ派生でいろいろなアクティビティも盛り上がって欲しいという気持ちもある。

野中
そうなるとギアも設営撤収がもっとラクなものが必要になってきそうですね。

狩野
そうそう。例えばフライフィッシングだと朝イチに行きたいから、前入りしてキャンプしたほうが時間が有効に使えたりするんだよね。その時に設営撤収がラクだと遊べる時間が増える。

野中
登山前後のキャンプも楽しいですよね。日帰りで行って帰ってくるだけよりも、自然により入り込める感じがあります。

狩野
目的としてのキャンプではなく、フィールドで遊ぶ手段としてのキャンプ。そういう流れが来そうだなというのは、希望も含めてあるね。

  1. 狩野茂
    1970年生まれ。宮城県石巻市出身。小学生6年生の時に、たったひとりでテントを持っての、3泊4日の東北自転車旅が、アウトドア体験の原点。中学時代は陸上部。1500、3000m走や駅伝、クロスカントリー(現在のトレイルランニング)などの選手として活躍。大学時代には、父親の影響もあってヨット部に所属。年間150日は海に出る生活を送る。現在は家族でのキャンプやスノーボードなどを楽しんでいる。最近シーカヤックを入手し、再び海への熱が再燃中。
  1. 野中研二
    1987年生まれ。埼玉県所沢市出身。〈THE NORTH FACE〉のバッグやギア、アクセサリーなど「アパレルとシューズ以外の、すべての企画・開発」に携わる。趣味は週末ごとのキャンプと冬のスノーボード、そして料理。目下のところ、キャンプ道具を出し入れしやすいガレージ付きの家を夢見る根っからのキャンパー。

(写真 古谷勝、飯坂大 / 文 櫻井卓)

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