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長く使えるものは良いギアだ 狩野茂 x 野中研二 キャンプギア対談<前編>

2021.11.19

この対談では前・後編に分けて、ザ・ノース・フェイスのエキップメントチームの狩野さんと野中さんに、6ジャンル(ランタン/焚き火台/クッカー/コンロ/テーブルウェア/その他)のお気に入りキャンプギアにまつわる対談をしていただきます。常日頃からギアを開発しているお二人だから見えてくる、本当に良いギアや、これからのキャンプスタイルなどについてもお話していただきました。

2人のキャンプスタイルは?

SFM
まず、お気に入りギアについて語っていただく前に、お二人がどんなキャンプスタイルが好きなのかを伺ってもいいですか?

野中
たしかに、スタイルによって選ぶギアも変わってきますからね。

狩野
野中とは同じチームだけど、そういえばプライベートでキャンプってほとんど行かないよね。

野中
だいたいがフィールドテストになっちゃいますもんね。

狩野
実は、お互いのキャンプスタイルをあんまり知らない。

野中
僕は食に重点をおいていますね。最近流行ってきているミニマルなスタイルというよりは、ドカッと荷物を持っていって、しっかり料理しながら2泊3日以上でキャンプすることが多いです。

野中さんのキャンプスタイルはこちらの記事で紹介しました

狩野
ベースキャンプを設置する感じだね。

野中
中日は完全フリーになるんで、料理以外にもマウンテンバイクや釣りなど、アクティビティを楽しむことも多いです。

狩野
冬も行ってるよね?

野中
雪中も好きなんです。薪ストーブを入れてテント内は暖かくして、でも外に出ると激寒みたいな温度差が楽しいんですよね。

狩野
薪ストーブでは調理もするの?

野中
そうですね。薪ストーブでなんでも作っちゃいますね。

狩野
最近、野中ほどキャンプに行けてないなあ。歴は長いんだけどね。

キャンプ歴が長いと語る狩野さん。「ジオドーム4」の開発秘話を訊いた記事はこちら

野中
90年代のキャンプブームの頃からですか?

狩野
そうそう。92年入社だったんだけど、ちょうどキャンプが盛り上がり始めてた時期。だから長くキャンプシーンは見てきてるんだけど、最近は仕事が忙しくてあまり行けてない。行くとしたら家族と行くことが多いかな。

こだわりが詰まった愛用ギアたち

SFM
お二人がギアを選ぶ時って、好みのようなものはあるんですか?

狩野
結果的に重いギアが多い気がします。それは昔から使ってるやつに買い足して行ってるからというのもあると思うんだけど。

野中
昔のキャンプギアは重厚なものが多いですもんね。

狩野
いわゆるヘビーデューティ。キャンプギアは基本的には実際に手にとって、しっかり見てから買うようにしてるっていうのはある。

野中
それは僕も一緒です。すでにある程度、物は揃っているので、これを買ったらもっと便利になるだろうなとか、買い足しが多いので、実際に見ないとサイズ感だったりがわからないので。

SFM
ではこのあたりで、お二人の愛用ギアを紹介していただきたいと思います。まずはランタンから行きましょう。

狩野
「コールマン」の「200A」を使ってます。

野中
ビンテージをコレクションしてる人もいますね。

狩野
コレクターって感じではないんだけど、いくつか持ってて、20年くらい使い続けてるのもある。

野中
製造年月が自分の誕生日と同じのを持ってたりする人も多いですよね。

狩野
バースデーランタンね。誕生年の1970年のものは持ってる。本当は月まで揃えると完璧みたいなんだけど、まあそこまでやらなくても良いかなという感じ。

野中
定番ですよね。これはどこが気に入ってるんですか?

狩野
まさに、その定番というところかな。ずっと長く変わってないっていうことが、このプロダクトの完成度の高さを表していると思う。あと、これは好き嫌いがあると思うんだけど、シングルマントルのランタンが燃える音が好きなんだよね。

野中
けっこう修理して使い続けてる感じですか?

狩野
ほぼノーメンテ。たまにジェネレーターを替えたり、パッキンを新しくしたりはするんだけど、そのくらいで故障らしい故障もないね。

野中
僕は最近、LEDも結構使いますね。ガソリンとかに比べると圧倒的にラクですし、モバイルバッテリーにもなったりしますから。

狩野
野中はどんなランタンを愛用してるの?

野中
僕は「プリムス」の「IP-3257CA」というガスランタンです。

狩野
懐かしい。俺が持ってるのはプリムスの「EX-3240」だけど、同じ90年代のプリムスだね。90年代のプリムスは他にもデザインが優れたものが多かった。

野中
光量もしっかりありますし、僕の中でキャンプと言えばイワタニプリムスの黄色いガス缶というイメージがあって。

狩野
それわかるなあ。でも、ちょっと面白いのが世代の差があるはずなのに、使ってるものがニアというね。

野中
90年代のオートキャンプブームの頃に、父に連れられて行っていた世代なんです。

狩野
なるほど。世代は違っても行ってる時代が被ってるってことか。

SFM
次は焚き火台いってみましょうか。

狩野
これもずーっと使ってるやつなんだけど、「ボルケーノ」っていうアメリカのブランドのもの。

野中
うわ、雰囲気ありますね。いつぐらいのものですか?

狩野
これは15年くらい前だから旧ロゴなんだけど、現行でも売ってるよ。3本足で支えてるんだけど、それがこうグッと内側に入って、さらに上部分も本体と入れ子になっててコンパクトになる。その機構もグッとくるよね。

野中
それわかります。「ここ良くできてるなあ」って部分とかギミックに弱いですよね。

狩野
そうそう。機能的にみても、ダッチオーブンも入るし、網も置ける。もともとはバーベキュー用なんだけど、焚き火台としても優秀。

野中
僕が使ってる焚き火台はいくつかあって、調理用と囲む用で使い分けてます。最近の調理用は2000円くらいで買ったノーブランドのもので、囲む用は「フュアハンド」の「パイロン」を使ってます。

狩野
安くても使いやすいもの、結構あるよね。

野中
そうなんです。調理用で使ってるやつは、炭の出し入れもしやすいし、網も三段になってたり、良く出来てるんです。肉を焼くときはフュアハンドを使いますね。

狩野
鉄板で豪快に、って感じだね。

野中
そうです。どちらかというと見た目も含めてフュアハンドはエンターテインメント要員ですね。

SFM
焚き火台を使い分けるあたりが達人感ありますね。クッカーなんかにもこだわりがあったりするんでしょうか?

狩野
基本的に「ロッジ」の「ダッチオーブン」です。サイズは10インチディープ。

野中
やっぱりサイズは10インチディープなんですね。いろいろサイズがある中で、それを使ってる人多いですよね。

狩野
10インチの浅いやつも持ってるんだけど、ディープのほうが鶏も丸ごと入るし、基本的に家族キャンプだからサイズ的にちょうど良いんだよね。これと「スキレット」があればたいていのものは作れちゃう。とは言いつつ、行く人数によってもクッカーは変えるかな。人数が増えたら、「スノーピーク」の「フィールドクッカー」も持っていったり。

野中
あれって超ロングセラーですよね。

狩野
そうそう、いま使ってるのは20年前くらいに買ったやつなんだけど、いまだに形がまったく変わってない。そういう普遍的な良さを持っているところも気に入ってる理由のひとつかな。自分が作る物も、そういう風でありたいと思っているし。

野中
たしかに、それは思います。父から譲ってもらったギアを使い続けていられるってことがすごいなと。ずっと使えるっていうことはキャンプギアにとってすごく価値がありますよね。

狩野
ちょっと変わったところでは、こんなのも使ったり。

野中
ティファール!

狩野
そうそう。ティファールのキャンプラインっていうのがあって、家庭用と同じでこびり付かない。裏も可愛い。

野中
キャンプ柄になってるんですね。どこで買ったんですか?

狩野
たしかコストコだったかなあ。野中は料理好きだからクッカーにはこだわり強いんじゃない?

野中
またまた被っちゃうんですけど、父が使っていた「スノーピーク」の「フィールドクッカー」を愛用してます(笑)。それプラス、肉を焼く用に「ヨコザワテッパン」とか、アヒージョを作る時は南部鉄器とか、エンタメ要員を持っていく感じです。

野中さんも、父から受け継いだ「スノーピーク」の「フィールドクッカー」を愛用している
肉焼き用には「ヨコザワテッパン」

狩野
この前、結婚祝いにチームでプレゼントしたアレは?

野中
「ターク」の「フライパン」。もちろん家でもキャンプでも愛用しています。妻も最初は重さが気になってたみたいですけど、いまではすっかり気に入ってます。

狩野さんをはじめチームのみんなからの結婚祝いだったという「ターク」の「フライパン」

狩野
それこそずーっと使えるよね、アレは。

野中
やっぱりキャンプギアって「長く使える=良いギア」という構図があるのかもしれませんね。

狩野
俺のギアと、野中がお父さんから受け継いだギアが被ってる感じもそれを現してるかもしれない(笑)。

2人がいま気になってるのはこんなギア

SFM
ここまで3ジャンルの愛用品を挙げてきていただきましたが、このあたりで箸休め的に、お二人が今後欲しいギアについて伺ってもいいですか? 

野中
僕は「ミニマルワークス」の「インディアンハンガー」が欲しいですね。キャンプシーンって吊したいものが結構多いんですよ。これまではモトハシテープのデイジーチェーンとかを使ったりしているんですけど、ちょっと設営に手間が掛かるんですね。でもミニマルワークスだったら一瞬だし、サイズもいろいろありますからね。

狩野
それこそ、家でも使えそうなプロダクトだよね、あれは。

野中
そうなんです。大きいサイズだとジャケットとかも吊せます。いま住んでいるアパートが室内干しする場所があまり多くないので、そういう時にも使えそうだなと。

狩野
キャンプだけで使うのってもったいないよね。年に数回しか行かないわけだし。そのためだけに高価なギアを揃えるのもちょっとなあと感じることはある。

野中
狩野さんは、なにか欲しいものありますか?

狩野
実はあんまりないんだよ(笑)。ある程度もうお気に入りが揃っちゃってるから。

以前の取材より。狩野さんのご自宅にはキャンプ・アウトドアグッズが所狭しと、しかし整然と並んでいた。

野中
一巡しちゃった感じですね。

狩野
ただ、キャンプ目線で物を買う癖、みたいなのは付いてるかもしれない。ギアを作るという目線はもちろんなんだけど、普通の雑貨屋さんとか行っても「これキャンプで使ったら便利だろうな」っていう目で選んでることが多い。それがキャンプ用に作られた物じゃなくてもね。

野中
物を選ぶ基準がキャンプになってるんですね。

SFM
あと3つほどジャンルが残ってるんですが、それは次回に持ち越したいと思います。キャンプギア以外にも「作り手から見た良い道具」についてや「キャンプスタイルの今後」などについても語り合っていただこうと思ってますので、乞うご期待ということで。

後編に続く

  1. 狩野茂
    1970年生まれ。宮城県石巻市出身。小学生6年生の時に、たったひとりでテントを持っての、3泊4日の東北自転車旅が、アウトドア体験の原点。中学時代は陸上部。1500、3000m走や駅伝、クロスカントリー(現在のトレイルランニング)などの選手として活躍。大学時代には、父親の影響もあってヨット部に所属。年間150日は海に出る生活を送る。現在は家族でのキャンプやスノーボードなどを楽しんでいる。最近シーカヤックを入手し、再び海への熱が再燃中。
  1. 野中研二
    1987年生まれ。埼玉県所沢市出身。〈THE NORTH FACE〉のバッグやギア、アクセサリーなど「アパレルとシューズ以外の、すべての企画・開発」に携わる。趣味は週末ごとのキャンプと冬のスノーボード、そして料理。目下のところ、キャンプ道具を出し入れしやすいガレージ付きの家を夢見る根っからのキャンパー。

(写真 古谷勝、飯坂大 / 文 櫻井卓)

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