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いつからかスポーツが一番になった

スポーツを一番に考える、SPORTS FIRST な想いを持った
ゴールドウイン社員のライフスタイルに迫ります。

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バイオメカニクスからスポーツウェアを生み出す 相見貴行

2019.01.15

 2017年11月、ゴールドウインは次世代スポーツウェアやスポーツギアの開発拠点となる研究開発施設『ゴールドウイン テック・ラボ』を富山県小矢部市に開設した。約1000坪のモダンな内装のテック・ラボには、先端科学を応用した各種検査・実験室が設置されており、相見貴行さんはモーションキャプチャによる動作測定のエキスパートとして、運動力学や生理学等の科学に基づいた解析を行う運動研究室の機器類を操る。

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「大学の学部はスポーツ健康科学部というスポーツ科学全般を学ぶところで、バイオメカニクスや生理学など理系学問だけでなく、スポーツ政策やスポーツビジネスなど文系学問も含めた総合的な講義を受講していました」

 3年生になり就職活動が始まるころ、よりスポーツの知識を深めてスポーツ関連の企業に勤めたいと思い、相見さんは大学院への進学を選択する。

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「僕は中学生の時から卓球をずっとやっていました。そういう学部だったので大学の同級生たちは、スポーツを世界のトップレベルでやっている人から趣味でやってる人たちまで、みながスポーツに関わっている環境です。自分も含め、みなスポーツから恩恵を受けて自己形成をしてきているんです。ですからスポーツに恩返しをしたい、スポーツの世界でずっと仕事をしていきたいという思いが募り、もっと勉強をして知識をつけて勝負できるようになりたいと思ったんです」

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大学院では生物や人体の構造や運動を力学的に解析し、その結果を応用するバイオメカニクスを専攻し、モーションキャプチャによる動作測定の研究に携わった。就職先にゴールドウインを選んだのは、他の先進国に比べて成人のスポーツ実施率が低く、文化として成熟していない日本のスポーツ環境を良くしたいという思いが根本にあった。

「当時海外市場への拡大を目指すメーカーが多いなか、国内のユーザーにも視線が向いていて、国内のスポーツ市場もまだまだ開拓していこうという意志が感じられたのが、僕がゴールドウインを選んだ理由なんです」

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とはいえ、相見さんがゴールドウインに入社した頃はテック・ラボもできておらず、モーションキャプチャの機器も導入されていなかった。

「それがこんなに早く実現したのはありがたいことです。これまでのスポーツウェアも立体的に作られていたり、ワイドだったり、動作に適したそれらしいカタチにはなっていました。ですが、『大体このぐらいだろう』という感覚や経験に頼って作っていたんですね。実際に動きを計測してみると、これまでの常識と違うところも分かってくるので、競技における諸動作によりフィットするスポーツウェアを作り出すことが可能になると考えています」

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実際に計測の様子を見せてもらう。相見さんは被験者の身体に数十もの反射マーカーを取り付ける。取り付けるマーカーの位置は重要だ。被験者にスポーツ時の動作を行ってもらい、マーカーからの反射光を、広い撮影エリアをぐるりと取り囲む複数台の赤外線カメラで計測して動作を解析する。その解析結果が運動パフォーマンスや快適性を向上させるための製品の素材・パターン開発に活かされていく。

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相見さんは多くのトップアスリートたちの動作解析を行っており、一例を挙げると、日本を代表するトレイルランナー鏑木毅のランニング動作を計測しウェア設計に反映させたり、現在進行形の仕事では、東京オリンピックから正式種目になるスポーツクライミングの日本代表のユニフォームを開発する仕事に携わっている。

「設備もできてデータは取れるようになったんですけど、それをどうデザイナーさんやパタンナーさんと対話をして落とし込んでいくかは試行錯誤中で、今後の課題です」

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 中学からはじめた卓球は、28歳になったいまも続けている。大阪出身で中学から大学院まで京都の学校に通っていた相見さんは、就職当時、富山県には知り合いがいなかった。

「僕は誰とでもすぐ仲良くなれるタイプではなく、あまり社交的ではないんです。でもこれまでの人生で、卓球を通じて多くの友人や仲間に恵まれました」

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就職して富山に来た2週間目に高岡市内の卓球ショップを訪れ「この周りで練習してるチームありませんか?」と聞いたところ、現在所属する社会人チーム「高岡ウイング」を紹介してもらった。すると、卓球を通じて、すぐに20人以上もの知り合いができた。

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「縁もゆかりもない土地で、なかなかそうはいきませんよね。そういうところもスポーツの良いところだと思っています」

相見さんは終業後にチームメイトと卓球ジムで練習するという。高岡市の住宅街の路地の奥に「卓球モンスター」という看板を掲げたそのジムは、2017年の5月に代表の箱江武詩さんが退職金を投じて開業させたばかりの真新しい施設だった。卓球マシンやビデオ撮影の設備が揃っており、卓球好きには理想的な場所だろう。再会した卓球ウェア姿の相見さんは、開口一番こんなことを言う。

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「日本の一般ユーザーに対してものを作りたいと入社の動機を話しましたが、いまの仕事はトップアスリート向けにものを作ることが多く、動機と一致していないと思われたかもしれません。ですがトップアスリートが活躍してる姿を見て、子どもが新たにスポーツを始めたり、大人でもスポーツしたくなったりと、スポーツの裾野を広げるという点でアスリートの活躍は大きな役割を果たしていると思っています。そういう意味では、自分の中ではつながっているんです」

相見さんいわく、卓球は反射神経ではなく、予測のスポーツなのだという。「見てから反射で動くというより、ある程度この辺に来るだろうっていう予測と、相手の予測の外し合いが勝負を決めます。回転次第でいろんな跳ね方をするので回転をどうかけるかも重要で、いかに相手に回転を読ませないかといった駆け引きもあります」

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相見さんのプレイスタイルはオーソドックスな右利きシェークハンドのドライブマンで、バックハンドを得意とするのが特徴だ。チームメイトと練習を始めると、休憩をとらず、会話もほとんどせずに、いかに相手の裏をかくかの駆け引きが繰り広げられる。ジムの箱江代表は「相見さんはマジメな良い選手だよ。あと2年して30歳になれば、全日本選手権のマスターズの部に挑戦できる」と目を細めている。

閉店時間近くになって、練習相手が元国体選手のチームメイトに交代した。どんどんと厳しい球を打ちこんでくる。へとへとになった相見さんだが、必死に食らいつき打ち返す。

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「いつもこんなにハードにやってるんですか?」と聞くと「そんなことないです。撮影しているから、休むタイミングが分からなくて……」と、相見さんはインタビュー中には見せなかったリラックスした表情で皆の笑いを誘っていた。

  1. 相見貴行
    1990年大阪府生まれ。同志社大学スポーツ健康科学部卒業後、同大学院スポーツ健康科学研究科でバイオメカニクスを専攻。2015年ゴールドウイン入社。中学から続けている卓球はかなりの腕前で、社会人1年目に中部地方の大会に富山県代表として出場した。スノーボードも趣味とする。現在はゴールドウインテック・ラボでコア製品、コア技術を中心にR&Dや測定評価を行っている。

(写真 田辺信彦 / 文 池田潮)

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