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ゴールドウイン社員のライフスタイルに迫ります。

リペアという仕事を通じて 商品クオリティの向上に繋ぎたい 宿谷義徳

2018.09.19

富山県小矢部市にあるゴールドウインテクニカルセンター(以下、GTC)内にあるリペア部門。ここでは年間1万2000件ほどの修理を受け付けている、ゴールドウインのリペア部門の中枢だ。中には「これは直るの?」というくらいにボロボロに履きこまれたクライミングパンツなどもこちらに送られる。

「直せるものは、できる限りお客様の要望に沿えるよう修理します。例外として、製品構造や劣化などによる製品寿命の場合などはお断りすることもありますが」

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そう答えてくれたのは、リペア部門を統括する宿谷義徳さん。販売畑の宿谷さんがリペア部門の改変のためにここに来たのは2017年。宿谷さんに課せられたミッションは、リペア部門の効率化による、より高いリペア技術の提供だ。いまリペア部門は変わるべきタイミングだという。現状は直営店などの店舗が窓口になってリペアを受付。それをここ(GTC)に送ってもらい、リペアをして、店舗に戻すという仕組み。それだとどうしても連絡や送付などロスも多い。もっと効率よく受け入れるために、直接受け付けるリペア窓口のようなものを作れないか、というのが宿谷さんの考えだ。

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「GTCにリペア関係の専門コールセンターを設置したいと考えています。そこでお客様の対応をしつつ、その場で職人さんが直す、というような流れを作りたい。将来的にはリペア専用のサイトも作って、オンラインでも申し込めるようにもしたいです。リペアするものをじかに見ながら、お客様とコミュニケーションを取らないと、要望もうまく伝わってきませんし、そうじゃないと直し方のプランニングも難しいですからね」

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フィールドに出ているからこそ分かることもある

服を修理、とりわけ立体裁断で最先端のファブリックを使用したウエアを直すということは、服を一から作るよりも難しいかもしれない。作るほうはやり直しなどもきくが、店舗に持ち込まれる物は替わりがきかない。いわばオンリーワンだ。それには、熟練の職人さんのスキルが必要になる。だからここには、エース級の職人が揃っているのだ。

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さらに、リペアには深い商品知識もいる。素材はなにを使えば良いか? バーツはどのようなものか? 穴はどう塞ぐと目立たないか? もしくは綺麗に仕上がるか? 昔からザ・ノース・フェイスを愛し、登山を楽しんでいる宿谷さんだからこそ分かることがある。

「道具や洋服が好きじゃないとできないですね。それこそ、パーツのような細部まで見てしまうような人。もっと、欲を言えば縫製ができる人が適任だと思います」

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宿谷さん自身、ある種のギアフリークで、80年代のザ・ノース・フェイスのカタログなども個人的にコレクションしているという。趣味は山登りで、富山の山々もいま開拓中だ。実際に自分で使ってみて、どこがどういう風に摩耗や破損していくのか? というフィールドワーク的な登山を、週末になると行っているという。

「だから、うちにはバックパックとかウエアとか自分でも『なんでこんなにあるのだろう?』というくらい大量にありますよ(笑)」

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長く使ったものを直して、さらに愛用して使ってもらう。リペアという仕事はやりがいもある。

「純粋にうれしいですよね。自社のプロダクトをここまで使い込んでくれている人がいるというのを、実感することができる。こういうのは、販売するという行為だけでは、なかなか知ることができないことだなと思います。あとは、僕は結構マニアなので、初期の頃のプロダクトの修理がきたりすると、一人で盛り上がりますね(笑)」

単純に修理するだけではない。リペアで気付いたことを新製品にフィードバックすることもできるはずだ。もちろん商品化の前には様々なテストを行ってはいるが、やはり実用に勝るテストはない。

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「こういう箇所がこういう風に壊れるとか、このパーツは強度的に問題がありそうだとか、修理にきたデータはすべてとってあります。それを企画にフィードバックして、よりよい製品作りに繋げることもリペア部門の意義だと思っています」

あらゆるオーダーに満足してもらいたい

しかし、リペアするにあたってはまだまだ課題点は多いと宿谷さんは続ける。

「お客様との温度差は課題としてありますね。修理したらピカピカ、新品同様で返ってくると思っているお客様も多いんです。でも破れた物は、元通りにはできないので、切ったり貼ったりするしかない」

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でも、アウトドア好きなら共感してくれる人も多いと思うが、ウエアの補修跡はなかなか味わい深い。歴戦の猛者感があると言って過言ではない。最後に、インタビュー前にリペアを始めたウエアの仕上がりを見せてもらった。所要時間は約1時間。穴を塞ぐために縫い付けられたゴアテックスファブリックの絶妙な切り返し。もはやこれは修理ではなく、新たにデザインされたウエアというべきレベルだ。

「フィールドに出ているユーザーはもちろんですが、とりわけザ・ノース・フェイスのアイテムは、ファッションで着ている方も多いので、そういうお客様にも満足し、感動してもらえるようなリペアを目指したいですね」

  1. 宿谷義徳
    1969年生まれ。東京都出身。前職だった百貨店のスポーツ部署で、アウトドアスポーツと「ザ・ノース・フェイス」の関係性の深さを知る。製品を扱っていく中で、その魅力に次第に惹きつけられ、ゴールドウインに入社。当時の原宿にあった直営店舗「ウエザーステーション」に1996年に配属。その後「ザ・ノース・フェイス」「ヘリーハンセン」など、様々な直営店舗で店長を経験する。2017年からは、GTCリペアサービスでお客様に感動してもらえるようなサービスの提供と、リペア価値向上のため奮闘している。

    (写真 依田純子 / 文 櫻井卓)

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