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ゴールドウイン社員のライフスタイルに迫ります。

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水泳は対人勝負ではなく、自分との戦い
鈴木孝幸×池田浩昭

2016.05.09

2004年のアテネから3大会連続でパラリンピックに出場し、日本代表チームの主将を務め、数々のメダルを手にしてきた鈴木孝幸さん。そして、30歳を過ぎてから水泳を始め、自分のペースを崩さず終業後にトレーニングに勤しむ池田浩昭さん。
先天性の四肢欠損と、幼いころの片腕の切断、というように、障がいの度合いも異なり、それぞれに水泳との関わり方には違いがある。
今年夏に開催される国際大会の選考会が3月に静岡県富士水泳場で行われ、レースのあとに二人が顔を合わせた。

    池田 今回の選考会みたいに大きな大会だと、自分は1ヶ月前ぐらいに一度、記録会みたいなものに出てみて、目標タイムをどの程度クリアできているかの確認をするんだけど、鈴木くんはどういうタイムスパンで準備をしますか?

    鈴木 僕の場合は3ヶ月ほど前から大会に向けて泳ぎ込み始めて、少しずつ量を減らして大会本番に臨みます。日頃からタイムを確認して、大体の調子の良し悪しは把握してるんですけど、最後の大会に向けての調整がうまくハマるかどうかというのは、結局のところ感覚なんですよね。

    池田 たしかに。タイムの確認をしながら、体がどういう状態なのかをフィーリングで読み取ることはたしかに意識しますね。

    鈴木 今日はうまくいってるなとか、うまくいってないな、っていうのは毎回変わりますからね。今回のように大きな大会の選考だと、コーチとより綿密に話をして組み立てますし、しっかりと泳ぎ込んで一度体を疲れさせて、そこから超回復させていくという方法も取ります。トレーニングの成果を確認するために大会にも出でみて、結果や手応えを受けて、大きな大会に向けて調整方法を改めて考えるわけです。

    水泳と仕事の関係

    池田 プロスイマーという意識は、いつごろから出てきましたか?

    鈴木 2008年の北京パラリンピックからですね。大学生とか高校生のころも成績にはこだわっていたけれど、会社に入社して世界的に大きな大会に出るとなると、仕事として水泳でもきちんと結果を出さないといけない。その意識が生まれたのが北京です。社長や部長に大会のことをどう報告しよう、とか考えるようになりましたから(笑)。

    池田 緊張感が全然違う(笑)。

    鈴木 池田さんは、入社してから本格的に水泳を始められたんですよね?

    池田 そうです。学生の頃も少し泳いでいたからゼロからのスタートではないですけど、30歳を過ぎて体がなまってきたので。ちょっと泳いでみたらそこそこ記録が出たんで、日の丸を目指して頑張ってみようかと。実際はとてもそんな簡単な話じゃなかったです(笑)。

    鈴木 今は会社で仕事を終えてから、プールに通っているんですか?

    池田 平日は火曜日と木曜日、仕事が終わってからチームでの練習が入っています。始まる時間が決まっているのでダラダラと残業してしまうこともなく、メリハリができたかなとは思っています。体を動かしたほうが疲れをリフレッシュすることにもなりますし、多少疲れたほうが夜もぐっすり眠れます。

    鈴木 泳ぐと全身を使うので、泳いでいたほうが体のバランスがよくて調子いいですよね。でも、定時まで仕事をしてから練習に行くのって大変ですよね? 僕が海外研修に行く前は、時短で勤務して、早い時間に上がらせてもらってからプールに行ったりしてましたよ。

    池田 鈴木くんは海外研修で今イギリスに住んでるんですよね? 環境の変化はやはり大きい?

    鈴木 日本では、会社もプールも陸のトレーニングする場所も全てがバラバラの場所にあったんですね。移動だけでも結構時間を使う。でも、今はイギリスのニューカッスルという都市の大学に通っているんですが、学業もトレーニングも水泳もケアも、すべて大学の施設内で完結します。時間も有効に使えますし、トレーニングも自分には合っているかなと思っています。

    池田 トレーニングはどういう面がプラスになっていますか?

    鈴木 実際に行く前は、メニューの組み立て方とかが日本と違うから合わないんじゃないか、と気にしていたんですね。だけど、具体的にこれが、っていう特別な何かがあったかというと難しいですけど、自分に意外と合っていたので、その時点ですでにプラスになっています。英語で授業を受けて、課題をこなさないといけないのはきついですが(笑)。

    競争相手がいる環境

    池田 今日の選考会でも、鈴木くんのクラス(※)では出場者が鈴木くんひとりで、国内で競ったレースをできないのは、国際大会を戦う上で大きなハンデですよね。

    (※)障がい者水泳の競技会では、視覚障害で3つ、知的障害で1つ、肢体障がいで9つか10というように、クラスが分かれる。

    鈴木 イギリスに行きたいと思った理由の一つは、やはりそこですね。イギリスはもともと重度の障がいを持つ選手も多くて強かったんで、その環境でトレーニングをしてみたかった。今ニューカッスルのチームメイトで、ほぼ自分と同じ障がいの体型の選手がいるので一緒に練習するんですけど、刺激になっていますね。

    池田 競技人口が増えれば環境が変わりますよね。

    鈴木 僕は出たことがないですけど、イギリスでは国内大会でも重度の障がいを持つ選手がたくさん参加しているのは羨ましいです。あとは、健常者の大会にも一緒に出場できますし、チャンスがいっぱいあるんですよね。

    トレーニングのこだわりと水泳の醍醐味

    ーーおふたりに伺いたいのですが、身体的な障がいをどのようなトレーニングでカバーしているのでしょうか?

    鈴木 僕の場合は、足も腕も左のほうが長くて右が短いので、いかにバランスを保てるのかを重視しています。水の中でも姿勢を保てるように体幹を鍛えるんです。体幹がしっかりすると水を強く掻くこともできるようになりますし、強くキックを打つことにもつながります。

    池田 そそうですよね、結局、水泳って体幹が大事なんですよね。私の場合も片腕切断によって体が傾斜してしまうので、フラットな姿勢にできるように板を使ってキックのトレーニングをしたりしています。なかなか直しきれないんですけどね。鈴木くんはどういうトレーニングをしますか?

    鈴木 いろんなやり方があるんですけど、例えば、バランスボールに乗って、乗った状態でスライドするとか、前後に動くとか、ツイストの動きをするとか。ダンベルを持ってバランスボールに乗ることもありますね。下腹部に力がつきます。体幹といっても胸と下腹部が肝だと思っているので。横になって背骨を蛇のようにってコーチは言うんですけど、腰と腹と胸とを前後させながら動かすトレーニングもよくやっています。平泳ぎのピッチの早い動きに役立っていますね。

    ーーそれでは最後に、水泳をやっていて気持ちいい瞬間を教えてください。

    鈴木 やっぱりベストタイムが出た時。変な話、メダルの色とかよりも自己ベストを出せたほうが僕は嬉しいです。まだ成長できているんだということを実感できますし、メダルはあくまでも相手ありきの競争の結果なので、自分でコントロールしきれないところがありますから。

    池田 自分も同じですね。子どものころからずっと剣道をやっていたんですが、剣道は対人勝負なので、自分がサボっていたとしても、相手が強かったと言い訳もできてしまいます。でも、水泳でタイムが切れたかどうかは嘘をつけません。結局自分自身に勝たないといけない。だからこそ、電光掲示板を見てベストが出ていれば、瞬間的にガッツポーズしますね。

    鈴木 もちろん、メダルもいい色が取れればそれに越したことはないですけどね(笑)。

    • 鈴木孝幸(すずき たかゆき)
      1987年静岡県浜松市生まれ、2009年入社。2013年よりイギリス・ニューカッスルにて海外研修を行っており、障がいを持つアスリートにとって充実した環境を体験している。パラリンピック、世界選手権など、国際大会への出場と表彰経験も多数。
    • 池田浩昭(いけだ ひろあき)
      1970年茨城県結城市生まれ、1993年入社。最初の配属でアウトドア商品課に入り、THE NORTH FACE、GOLDWINスポーツ、GOLDWINスキー、そしてC3fitと商品部一筋に数多くのブランド事業に携わる。少年時代から剣道を行い、ゴールドウイン入社後から水泳に勤しんでいる。

    (写真 渡邉英守 / 文 中島良平)

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