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ゴールドウイン社員のライフスタイルに迫ります。

積み上げた先の達成感が好き 鈴木歩

2019.05.30

NEUTRALWORKS.TOKYOに勤める鈴木さんと会ったのは、日本最大級のトレイルランニングレース「ウルトラトレイル・マウントフジ」(UTMF)の開催を翌週に控えた頃。自身2度目の挑戦に向け、浮き足立つでもなく確信に満ちた口調で来たるレースへの抱負を語ってくれた。

体力づくりで始めたマラソンデビューでいきなり3時間7分

NEUTRALWORKS.TOKYOで店頭に立つ鈴木さんは、ばりばりのランナーだ。しかしながらその優しい語り口や、穏やかな立ち振る舞いに接すると、1秒をなんとしてでも減らそうとするタイム狙いのランナーには思えない。

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「もともとはサッカー、フットサルをやっていて体力づくりのためにジョギングから走り始めたんです」 5kmのジョギングから始まったランニング、そしてフルマラソンデビューではいきなり3時間7分(!)という好タイムを叩き出す。上々というよりも、出来過ぎなデビューだ。

「でも当時はそれが速いタイムということもわからないくらいの初心者でした」と笑う鈴木さん。それが10年ほど前のことで、徐々にランニングにのめり込んでいく。それからは、サブスリー(3時間切り)を目指して走り込んだ。だが、前職でのワークタイムバランスの取り方にも苦労し、それを達成するまでに6年かかったと言う。フルのベストタイムは2:53:57だ。

燃え尽きかけて、UTMFと出会う

6年間をかけてコツコツと練習し、念願のサブスリーを果たした鈴木さんは、多くのランナーがそうであるように燃え尽き状態にあった。大会にも1年近くエントリーせずにいた頃、ラン仲間からUTMFのDVDを見せられる。その世界観が鈴木さんを魅了した。

「それまでトレランのことは何も知らなかったのですが、DVDを見てからはハセツネや伊豆トレイルジャーニーといったレースに出るようになりました。反対にフルマラソンは年に1度走るくらいで、とにかくUTMFに出るためのポイント獲得を意識していましたね」

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ロードで鍛えた脚力もあり、新たな目標へと向かう鈴木さんは無事にUTMFの出場権を獲得。そして2018年の春、初めてのUTMFに挑んだ。それが初めての100マイルレースでもあった。

「正直どんな練習をすればいいかもわからなくて……基本は30km走を重ねました。不安は大きくて、スタート時間に遅れるとか、クマに襲われるとかネガティブな夢をレース直前は見ました」

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出場したUTMFでは、やはり長距離ならではの難しさを味わった。「『眠気・寒気・吐き気』に苦しめられました。睡魔に弱いので、夜を走る練習をして臨んだのですが、内臓をやられてしまい後半は水しか飲めない状態でした」 鈴木さんのUTMF初挑戦は、35時間20分でのフィニッシュとなった。

商品の機能を、着実に伝える接客

NEUTRALWORKS.TOKYOには、ランはもちろん、ヨガやアスレチックなど様々なフィットネスを楽しむ方も来店すれば、ファッションアイテムを求めてやってくる方も多い。人の行き交う外苑前という土地柄、女性やカップルの客層も厚い。「NEUTRALWORKS.で扱っている商品は、機能性に優れたものが多いのですが、ぱっと見ではそれがわからないので、接客を通じてしっかりと説明するように心がけています。その接客がお客様に届いたときに、仕事のやりがいを感じます」

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店舗では複数のブランドを扱う難しさを感じながらも、日々忙しく業務を行う鈴木さん。今年のUTMFに向けても仕事の合間を縫ってのトレーニングを積み上げている。

コツコツとやる、その先の達成感が好き

2度目となる2019年のUTMFで鈴木さんが目指すのは、30時間切り。これは市民ランナーとしてはかなり速いタイムだが、そのための練習も着実にこなしているという。

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「週に4、5日は走っています。月では少なくても300km、先月は500km走りました。仕事終わりに友人と箱根まで走ったりも。22時にスタートして、箱根には翌夕方の4時ごろ着くという。昔からコツコツやることが好きなんです。サッカーもリフティングをずっとコツコツ練習して、1万3,000回続けたり」

さらりととんでもない数字を口にする鈴木さんだが、やはりその口調は落ち着き払っている。コツコツと積み上げた努力は裏切らないことを知っている人の口ぶりだ。

富士山が好き

「富士山が大好きなんです。去年の富士登山競走を走っていて『やっぱり富士山いいな』と思って、今年の大会へのエントリーを決めたんです。去年のシーズン中は麓から5回、山頂まで登りました」

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やっぱりさらりと、でも尋常じゃないことを言う人だ。そして富士山愛は、かなり強い。「UTMFも富士山が見えているうちは頑張れます。雨が降って見えなくなったら苦しいかもしれません」この時は、笑い話で済むはずだったのだが……。

UTMFは異例のタフコンディションに

1週間後、店頭でみた穏やかな表情をUTMFのスタート地点で見つけた。この日の富士山麓は雨に見舞われ、スタートを待つ大勢のランナーたちは表情はどこか不安げだ。だが鈴木さんは、相変わらず落ち着いている。雨にも動じない経験をここまで積み上げてきた。

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「昨年出場した大会で雨が多かったですから。箱根まで走った練習でも雨に降られましたし、個人的にはあまり雨に対する不安感はありません。下りを気をつけるのと、水溜りには覚悟を決めて突っ込んでいくしかないかなと」

100マイルを走るために、快適性を重視した装備で臨むという。

「昨年よりも攻めの軽量化を狙いました。10g単位で軽くしようと。バックパックは最新バージョンでフィット感のよいものを。あと、昨年はジェルをたくさん持っていったが食べれなくなってしまったので、今回はエイドを活用する方針であまり持たないことにしました。軽量化にも一役買っています」

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シューズはお気に入りのThe North Faceの新作《フライトトリニティ》を選択。トップスもThe North FaceのTシャツと、中綿入りのコンパクトになるジャケットを選んだ。ゲイターとタイツは、C3fitとThe North Faceのダブルネームモデル。すべて店舗で取り扱う製品で、その特性を理解しているからこそ、レース本番で迷いなく着ることができる。

「後半でギアをひとつ上げられるように前半は温存して、最後は気持ちよくゴールしたい」スタート直前、そう話してくれた鈴木さん。

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終日雨に見舞われたUTMFの序盤だったが、鈴木さんは店舗の時と変わらない穏やかな表情で淡々と距離を刻んでいった。積み上げた努力がある人間にしか持ち得ない、確信に満ちた足取りで闇の中へと消えていく姿に、胸が熱くなった。

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しかし富士山麓に降り続いていた雨は、その後、雪になった。UTMFは、まさかの降雪によるレース中止の措置が取られ、鈴木さんはゴールまで25kmを残して終了を言い渡された。

「レースを終えて1時間後くらいしたら晴れてきて、ようやく富士山が見えました」 後日、少し悔しさをにじませつつ振り返る鈴木さんは、それでも前を見据えている。大きな目標に向かって、もう走り出しているのだ。

「来年はUTMBに挑戦しようと思っています」

不完全燃焼に終わった積み上げて来た努力は、遥かモン・ブランで花開くことになりそうだ。

  1. 鈴木 歩
    1988年生まれ。学生時代はサッカー、フットサルに熱中し、体力づくりに始めたランニングが今はメインのスポーツに。スポーツ量販店を経て、2017年より株式会社ゴールドウインに勤務、2018年に開店したNEUTRALWORKS.HIBIYAにはオープニングスタッフとして携わり、現在は外苑前のNEUTRALWORKS.TOKYOの店頭に立つ。フルマラソンのベストは2時間53分57秒。UTMFでは30時間切りが目下の目標。

(写真 古谷勝 文 小俣雄風太)

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