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いつからかスポーツが一番になった

スポーツを一番に考える、SPORTS FIRST な想いを持った
ゴールドウイン社員のライフスタイルに迫ります。

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経験は、やがて実力となる
海洋冒険家・白石康次郎×ヘリーハンセン 杉井葉月

2015.08.17

6月27日に開催された「第27回初島ダブルハンドヨットレース2015」。逗子〜初島〜逗子の46マイルをスキッパー&クルーの2人で走破するという、毎年恒例のヨットレースである。100艇がエントリーしたこのレースに、海洋冒険家の白石康次郎さんとヘリーハンセン事業部の杉井葉月さんが参戦。経験、知識、年齢もまったく異なるチームがいかにレースに挑んだのか。レース前の初顔合わせでクルーズを楽しんだ二人に、当日のインプレッションを聞いてみよう。

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——今回、お二人が乗り込んだのはおよそ31フィートのクルーザー。スループといって、何枚かのジブセイルを風の強弱によって使い分けるタイプです。また、メインセイルの大きさも変えることができるものでした。半日セーリングしてみての感触はいかがでしたか?

杉井 そもそも白石さんときちんとお話するのは今日が初めて。大学では4年間、体育会ヨット部に所属していたので白石さんにはその時にお目にかかったことはあるのですが。今回は「第27回初島ダブルハンドヨットレース2015」でクルーを探しているということで、思い切って立候補してみました。とはいえ、緊張しすぎて今週を迎えられないかと思っていました(笑)。

白石 あのタイプのクルーザーは初めて?

杉井 大学時代に乗っていたのはもっぱらディンギーで、クルーザーは数が少なかったし、乗る機会も多くなかったんです。ディンギーとクルーザー、仕組みは一緒だけれどやっぱりクルーザーは全てが大きくて。ジブの上げ下げも今日が初めてでした。

——初めて会う人とコンビを組んでレースに出る。コンビネーションの部分で不安はありますか?

白石 さっきお会いして、コミュニケーションをとって、初めて乗る船に少しずつ慣れてきたというのが今日の状況。これをベテランのようにやれというのも無理な話だし、やるべきことを一つずつ、確実にこなしていけばいいだけです。そもそもヨットは、不確定要素しかない世界なんだから。

杉井 自分ではもっと勉強したいという気持ちもあって今回のレースに臨むことにしたんですが、白石さんは気さくに教えてくださったうえ、練習中も「いいね!」って盛り上げてくれて。とてもポジティブな気持ちで来週に挑めそうです。

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白石 相手はね、人それぞれなんです。誰と組むにしろ、いい人もいれば嫌なヤツもたまにいる。でもそれはそういうものでしょ?シングルならシングルの、ダブルならダブルの、自分に与えられた状況でやるべきことを、最善を尽くしてやるだけじゃないかな。

——白石さんは単独で世界一周もなさっていますし、もちろんフルクルーの体験も豊富です。白石さんにとってダブルハンドの魅力って何でしょうか?

白石 役割分担が明確なフルクルーとは違い、2人でいかにスムーズにセイルを上げ下げするか、安全にタックジャブするか、などなど2人のチームワークととっさの判断力が問われるのがダブルハンド。フルクルーに比べたら「ヨットそのもの」を楽しめるところが魅力かな。これがシングルハンドになると、ダブルの1/3くらいのことしかできないの。そりゃそうだよね、一人しかいないんだから。同時に2つのことをできないということは、いまやるべきことの優先順位を即座に判断して動かなくてはいけない。つまり判断力だよね。だから、シングルハンドは「究極」なんだよ。

杉井 そう考えると、あらためて単独で世界一周ってすごいことだって実感します。

白石 一人というのは世界最小の単位じゃない?世界最小単位で、世界最大の地球というものを相手に船を走らせる。世の中にこんなに面白いものはないよね。

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「居心地のいい自分」の外側に、強いハートがある

杉井 今日久々に船に乗って、あらためて自然を読む力の大切さを思い知ったんですが、白石さんは風や波、潮など目に見えない自然を読む力を、どのように養われたんですか?

白石 武道では「見の目を弱く、観の目を強く」という言葉があって、これは何かと言うと「目で見るな、ハートで見ろ」ってことなんです。例えば相手を斬ろうというときに、相手が「動いた」ところを斬ったら遅いでしょ?「動いた」じゃなくて、「動く」ところを斬る。それは目に頼っていてはだめなんです。要はハートを働かせろってこと。

杉井 じゃあ、ハートを強くするにはどうすればいいでしょうか。

白石 死に物狂いでトレーニングするしかないよね。ハートの強さは、居心地のいい自分の中にはないよ。多分、その外側にあるんだろうね。何度も挑戦して、その度に壁にぶつかって、失敗して大恥かいて。寅さんのセリフじゃないけどさ、「大声をあげて走り回るほど恥ずかしい恋をしろ」って、まさにあれですよ。そういう恥ずかしい失敗の先に、何か得るものがあるんだろうね。勝負ってさ、勝ちも負けもあるじゃない。それを「勝ちだけください、いいところだけお願いします」なんて言ったって、そうは問屋がおろさないよ。大負けも赤っ恥も、悪いところも全部引き受けなきゃ。

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海と自然を学ぶ機会を、少しでも多くの人と共有したい

杉井 実は、ヘリーハンセン事業部にもヨット経験があるのは私だけなんです。せっかく4年間乗っていた経験があるのだから、ヨット関連のイベントもどんどん企画していきたいんです。白石さんも逗子のリビエラリゾートで「大人のための海洋塾」「子供のための海洋塾」を開催していらっしゃいますよね。

白石 これはアクセスディンギーにヨットセーリング、シーカヤック、釣りにSUP、夜はビーチでバーベキューをやってテント泊をするという、まあ盛りだくさんの内容です。

杉井 ヘリーハンセンではSUPやサーフ、セーリングをフィーチャーしたビーチの商品を出していて、来月からはセーリングやSUPなど海関連のイベントもスタートするんです。

白石 僕の時代は海や山は挑戦の対象だったけれど、現代のストレス社会では多くの人が海や山に癒しを求めにくるんだろうね。ってことは、山でも海でも非日常とかスペシャル感を体験できるロケーションに連れて行って、ヘリーハンセンの世界観をきちんと見せることが大事だと思うよ。とくに初めてヨットに触れるという人たちに向けてね。経験者に向けても裾野は広がらないでしょ。彼らはもう、海の世界を知っているからね。そうではなくて、ヨットなんて乗ったこともない、そういう人たちにぜひ、「これぞヘリーハンセン!」というものを見せつけてもらいたい。

杉井 そうですね。昼間はセーリングをして、夜はビーチキャンプ、そういう水陸両用の企画も考えてみたいと思います。

白石 じゃあ、僕がかっこいいテントを持っていて、お客さんに張るところを見せてさ、『わあ、このテント欲しい!』って思わせるよ。

杉井 実は私、大学卒業後はしばらくヨットから離れてしまっていたんです。でも今日、白石さんとクルーザーに乗って、あらためて海の世界は素敵だなって大学時代を思い出しました。やっぱり海風を感じながら波に乗るのは気持ちがいいですし、海から眺める陸の風景はヨット乗りならではのものですよね。ディンギーは体力勝負ですが、クルーザーなら年をとっても楽しめます。だからこそ現役で楽しんでいらっしゃる方々に、もっともっとハリーハンセンの魅力をヨット経験者の視点で伝えていきたいと思っています。

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——2020年には江ノ島でオリンピックも開催されます。

杉井 現在、ヘリーハンセンは日本代表チームをサポートしています。確かにヨットはなかなかハードルの高いスポーツではあるけれど、私たちのイベントや取り組みを通して、少しでもたくさんの方々にヨットに触れていただけるようになったらいいですね。

白石 まずは来週の本番だね。うまくやろうとは思わずに、リラックスして、一つ一つ確実にこなしていきましょう。

杉井 今日は舵を持たせてもらうだけで精一杯でしたが、二人で船を動かすからには白石さんが少しでも動きやすいように、「見と観」の気持ちを意識しながら臨みたいと思います!

レースを終えて……。

白石&杉井組は「第27回初島ダブルハンドヨットレース2015」クラスCに出走し、無事、クラス14位でゴールした。杉井さんにとっては初めての大型ヨットだったが練習の成果を生かし、白石さんとのクルーズを存分に楽しんだようだ。また、白石さんも何事にも前向きにチャレンジする杉井さんの姿勢を頼もしく思っていたよう。レースを終え、白石さんから杉井さんへ、以下のようなメッセージが贈られた。

杉井さんにとっては初めての大型ヨットであり、いきなりのダブルハンドヨットレースです。私と乗ることになって、おそらく緊張したのではないかと思います。不安もあったでしょう。

若いことはとても素晴らしいことです。今回のようなチャレンジを若い人にはどんどん続けて欲しいと思います。若者たちにないのは唯一、「経験」です。どんなことでもいい。どんどんチャレンジしてください。その経験が、やがて実力になります。またこのようなチャレンジができるように僕も頑張ります。

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  • 白石康次郎(しらいし こうじろう)
    1967年東京生まれ、鎌倉育ち。中学卒業後には船乗りを目指し、高校卒業後には単独世界一周レース優勝者の多田雄幸氏に弟子入り。多田氏のもとで、ヨットの建造を学びながら、レースのサポートを続けた。 1993年、世界最年少単独無寄港世界一周を達成。1995年、走行距離500km以上を人力のみで走破するアドベンチャーレース「エコ・チャレンジ」に出場。2003年には「アラウンド・アローン」クラスIIで4位。2007年、単独世界一周ヨットレース「5OCEANS」クラスIで2位でゴール。日本人初参戦のクラスIで快挙を達成。現在は「海洋塾」などで子どもたちに自然の楽しみ方を教えるかたわら、テレビ等でコメンテーターとしても活躍中。
  • 杉井葉月(すぎい はづき)
    1990年生まれ、東京都出身。 2013年に入社し、百貨店のアウトドア・アスレチックの営業を経て、現在はプロモーショングループにてヘリーハンセンを担当。大学時代のヨット部の経験を生かし、マリンウエアとしてのヘリーハンセンの強化に努めたいと願う。
    ヨットに限らず、入社後はサッカー・ゴルフなどの様々なスポーツに積極的に取り組み、やりたいことが多すぎるのが今の悩み。

(写真 三浦安間 / 文 倉石綾子)

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