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ゴールドウイン社員のライフスタイルに迫ります。

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クライマーだけが得られる風景と連帯感のチカラ
フリークライマー 野口啓代×ザ・ノース・フェイス 永山貴博︎

2015.12.25

2015年のボルダリング・ワールドカップで見事、4度目の年間総合優勝を果たした世界屈指のフリークライマー、野口啓代選手。コンペティションシーズンを終えた先日、THE NORTH FACEがサポートする若手クライマー2名と共に、四国へ5日間のクライミング・トリップへ出かけた。旅をサポートしたのはTHE NORTH FACEプロモーション部の永山貴博︎さん。自身も1年前に本格的にクライミングを始め、現在は毎日クライミングジムへ通っているというクライマーである。クライミングに取り憑かれた二人が、課題をクリアする醍醐味と岩場を巡るトリップの魅力、そしてクライミングの本質に迫る。

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永山 四国トリップ、お疲れさまでした!トップクライマーのクライミングを間近にすることができ、僕にとっても得難い経験となりました。野口さんも四国の岩場は初めてということでしたが、実際に登ってみていかがでした?

野口 今回はローカルのクライマーにあれこれサポートしていただいたおかげで、未開拓のエリアの面白いボルダーを存分に登ることができました。四国の岩場はとにかくスケールが大きい!そのうえ、本州ではまずお目にかかれないような独特の岩場が印象的でしたね。川沿いのボルダーは、エメラルドグリーンからオレンジまで、鮮やかな色が混じり合う色調が見た目にも美しいんです。駐車場やアクセスの問題から残念ながら非公開ということですが、ああいう岩は日本では見たことがないです。

永山 登っても登っても、新しい課題が出現して。ローカルの方たちによれば、僕らが出かけたエリアの3〜15倍はあるそうですよ。彼らも「とてもじゃないが開拓しきれない」って。

野口 日本にあんなに素晴らしい岩場があるなんて。この国の宝だと思います。もちろん、岩場そのものも素晴らしいけれど、それと同時に地元や地主の方と地道に交渉を続け、クラミングエリアを開拓し続けるローカルのクライマーたちの熱意に頭が下がりました。小川山や瑞牆山もそうですが、ローカルのみなさんの尽力があってこそ、外岩の可能性は広がっていくんですよね。

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クライマー同士の連帯感

永山 それにしても面白かったのが、クライマーの3人とも課題を前にすると目尻が下がりっぱなしだったこと。みんなアップの段階からニヤニヤしていましたよね。おまけに、朝から晩までクライミングの話ばかり。クライミング経験のある僕も、そういう話を聞いて多いに刺激を受けました。

野口 結局、みんな本当にクライミングが好きなんですよね。私、子どものころは人見知りが激しくて、初対面の人とうまくコミュニケーションを取れなかったんです。大人になってまさか、海外の友人や世代を超えた仲間ができるとは(笑)。いまでも得意な方ではないけれど、相手がクライマーだとわかった瞬間、バリアがなくなるんですよね。会って2回目なのに、一緒に海外を旅していたりしますから。クライマー独特の感覚なのかもしれないけれど、クライマー同士だと一気に距離が近くなる、そんな経験ありませんか?

永山 テニスやサッカーみたいなメジャースポーツじゃないから、相手に対して共感を抱きやすいのかな。

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野口 例えば電車に乗っているとき、つり革につかまっている人の前腕をみて「この人、絶対にクライミングやっているな」って思うと、それだけですごく嬉しくなるんです。マイナースポーツだからこその共感というか、連帯感ってありますよね。その人の好きな岩場や課題を聞くだけで、本人のパーソナリティを少し理解できた気がしますし。さらに、その好みが共通しているとそれだけでもう心が通じ合えたような気になる。

永山 僕の持論なんですが、クライミングをやっている人に悪い人はいないんですよ。

野口 クライミングにはまっている人って、生活の中心がそれじゃないですか。たとえばバンに家財道具一式を詰め込んで、岩場を求めてその日暮らしをするクライマーもいる。経済的な成功や名誉は二の次なんですよね。その純粋さにいつも心打たれるんです。

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やればやるだけ成果が出る。だからクライミングは面白い

永山 そこまで人を夢中にさせるクライミングの魅力って何なんですかね?

野口 私が初めてクライミングを経験したのは小学5年生の時、家族旅行で出かけたグアムの、ゲームセンターにあるボルダーだったんです。完登したときの爽快さはもちろん、やればやるだけうまくなる、登れるようになる、頑張った分がきちんと返ってくる。成果が目に見えるからハマったんでしょうね。

永山 同じ課題が二つとない、無限に課題が出てくるから飽きる要素がないんですよね。加えて、ジムの場合はゴールのホールドを両手でつかめばクリアだけれど、外岩の場合は岩の上に乗るじゃないですか。あそこから眺める風景って、登った人だけのものですよね。頑張ったクライマーへのご褒美というか。

野口 達成感がありますよね。あれを一度味わうと、もうやめられない。だって、大人になると日常生活で達成感を味わうことってなかなかないですから。

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永山 あと、マイナースポーツだからこそトップクライマーとの距離が近いというのも、僕みたいな素人クライマーにとっては魅力なんです。通っているジムでトップ選手に会うこともあるし、あるいは運が良ければ彼らと一緒に登る機会に恵まれることだって。サッカーの世界で例えるなら、ネイマールと一緒にボールを蹴るようなもの。現実的にそういう機会ってほとんどないと思うのですが、クライミングの世界だったらそういうことってあり得るんですよね。

野口 子どもたちにとってはそれも励みになるのかもしれませんね。それに、クライミングは世界を広げてくれるスポーツだと思います。最近はクライミングを始めて1、2年という人でも海外のボルダーへ出かけていきますよね。

永山 僕ももっと強くなって登りたいと思っている岩場が世界中にたくさんあります。

野口 それぞれの岩場にベストシーズンがあるから、季節や気候に応じて出かける岩場も変わります。世界の地質や気候の違いを、クライミングを通じて教えてもらうんです。それが面白い。もしクライミングをやっていなかったら、日本と海外の差にここまで敏感になっていなかったかな。

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2020年、オリンピックを見据えて

永山 そういえば先日、ついに東京オリンピックの追加種目候補としてスポーツクライミングが選ばれましたね。

野口 スポーツクライミングって、岩山で行うフリークライミングを競技にしたもの。競技性を高めることで、そもそものルーツであるアウトドア・アクティヴィティの要素は薄れてしまうけれど、それでもオリンピック種目になることでクライミングの裾野が広がるなら、それに越したことはないですよね。

永山 THE NORTH FACEとしてクライマーたちをどうサポートしていけるのか、僕も興奮しました。オリンピックを見据えて気持ちの変化はありましたか?

野口 今まではワールドカップ優勝とか世界選手権制覇とか、近い将来に大きな目標を設定してトレーニングを積んでいたのですが、「東京オリンピックで、クライミング」という課題が突如、現れて。それをきっかけに長いスパンでクライミング人生を考えるようになりました。5年後、東京で開かれるなら、やっぱり出場したい。まだ10代の選手だったら’20年がだめでも次への可能性が残っている。でも20代半ばの私たち世代は、東京オリンピックがラストチャンスになると思うんですよね。

永山 そういえば四国へのトリップのときも羽田空港まで来ましたものね、ドーピングの検査官。

野口 そうそう。「抜き打ち」とは聞いていましたが、まさか空港まで来るとは夢にも思わなくて。結局、ドーピング検査のために予定していたフライトには乗れなかったのですが、オリンピックに出る重みみたいなものをあらためて実感しました。

永山 野口さん、長いシーズンが終了しましたが今後の予定は?

野口 まずは来月、今度は九州へロックトリップに行きます。それから2月には、昨年3週間のツアーを行ったカリフォルニア州ビショップを再訪します。

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永山 昨年はThe Mandala(V12)に50回以上もトライした末、帰国直前に完登できたんですよね。多くのクライマーにとっての聖地ですが、野口さんもクライミングを始めた頃から憧れていた課題だったとか。

野口 人工壁からクライミングを始めた私が、初めて登ってみたいと思った岩なんです。不可能を可能にする、限界を超えて挑戦するというクライミングの醍醐味にもう一度向き合えたという意味で、転機になったツアーだった。だからあそこへ戻るのを楽しみにしています。私の主戦場はコンペだけれど、オフシーズンに入ったいまは、とにかくいろいろな岩場でクラミングをしてみたい。もちろん、来年が世界選手権のある年ですから、それに向けて少しずつトレーニング環境を整えていきます。

永山 まずは来春のTHE NORTH FACE CUP、4連覇を期待しています!

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  2. 野口啓代(のぐち あきよ)
    1989年5月30日生まれ。小学5年生の時、家族旅行のグアムでフリークライミングに出会い、翌年行われた全日本ユース選手権では中高生を抑え、優勝するなど瞬く間に頭角を現す。2008年、日本人女性として初めてワールドカップ ボルダリング種目で優勝。この年から設立されたオーバーオール部門(ボルダリング、リード、スピード)で初代チャンピオンを獲得し、翌2009年は2年連続でワールドカップボルダリング年間総合優勝を飾る。2014年は4シーズンぶりに年間総合優勝に返り咲き、2015年も自身4度目のタイトルに輝く。ワールドカップなどを中心に世界を転戦する日本が誇る世界屈指の女性クライマー。近年は外岩での活動も積極的に行い、2013年にはスペインにある「MindControl」8C+(5.14c)で日本人女性最高レッドポイントグレードを更新。2015年3月には自身の念願でもあったアメリカにあるMandara(V12)を完登するなど幅広く活躍中。

    【2015年コンペティション戦績】
    ワールドカップ トロント大会(カナダ)2位   
    ワールドカップ ヴァイル大会(アメリカ)  2位
    ワールドカップ 重慶大会(中国) 優勝  
    ワールドカップ 海陽大会(中国)  2位
    ワールドカップ ミュンヘン大会(ドイツ) 4位

    【外岩】
    2013年 
    MindControl (5.14c)

    2015年
    Mandara (V12)

    【クライミング・ワールドカップ・ボルダリング部門年間ランキング1位】
    2009年、2010年、2014年、2015年 

    【クライミング・ワールドカップ・オーバーオール部門総合優勝】
    2008年、2009年、2014年

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  2. 永山貴博︎(ながやま たかひろ)
    1984年埼玉県さいたま市出身。幼いころからスポーツが大好きで小学校時代の体操、中学での水泳、高校では水中の格闘技ともいわれる水球と出会い、のめり込む。その傍らではスキーを続け高校時代にはSAJ1級を取得し、スノーボードにも没頭。大学卒業後は不動産関係に就職するも、「本当に自分のやりたいこと」を求めて転職活動をはじめ、幼少期のキャンプや山好きの両親との登山などの経験から、もっと自然と触れ合える職に就きたいと願い2012年株式会社ゴールドウインに入社。ザ・ノース・フェイス 原宿スタンダード店のスタッフを経て現在はザ・ノース・フェイスのプロモーショングループに。

    ザ・ノース・フェイスで働くようになってからクライミングを本格的に始める。基本的には外岩派だが、日々の練習はクライミングジムでリードもボルダーもこなす。今シーズン初出場のコンペティション「TNFカップ2016」は予選で惨敗してしまい、来年はリベンジを狙い日々練習中だ。ザ・ノース・フェイスのPRとしてブランドを体現できるように様々なアクティビティと向き合い活動している。

(写真 阿部健 / 文 倉石綾子)

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