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ゴールドウイン社員のライフスタイルに迫ります。

お客様にもスタッフにも、フィールドに出る喜びを 倉成直亮

2019.11.26

オーストラリアでは格闘技に打ち込み、浜松では板前として腕を奮った。〈THE NORTH FACEららぽーとエキスポシティ〉の店長を務める倉成直亮さんは異色の経歴の持ち主だ。

少年時代にはボーイスカウトの活動を通じて、アウトドアには早くから親しんだという倉成さん。持ち前の運動神経の良さと好奇心から様々なアクティビティやスポーツを楽しんできた。高校時代はサッカーに打ち込み、次第にサーフィン、登山とその幅の広さには驚かされる。

THE NORTH FACEの店舗を切り盛りするのに、うってつけとも言えるアクティビティの経験。実際に倉成さんにとって、THE NORTH FACEはずっと、ファッションではなくアウトドアブランドという認識だったという。ボーイスカウト時代からTHE NORTH FACEは頼れるギアとして傍にあった。ファッションブランドとして人気を集める近頃の、世間が抱くブランドイメージとは正反対だ。

実際に感じた“リアル”を伝えるために

THE NORTH FACEのファッション面に魅力を感じてお店にやってくる人は多い。お客様はもちろんのこと、店舗スタッフも入り口はファッションが圧倒的に多いのだとか。それ自体は悪いことではないとしつつも、倉成さんはアウトドアブランドとしての魅力や機能をもっともっと知ってもらいたいと意気込んでいる。

「スタッフには、実際に製品を使った経験を踏まえた上で、お客さんにブランドのバックボーンを伝えられるようになって欲しいですね。いまは情報だけならネットでいくらでも手に入りますが、やっぱりフィールドに出て、『こういうところでは薄手のダウンが必要だな』のように実際に感じた“リアル”を伝えられるのは大事なことですから」

嘘のない、一次情報をいかに伝えることができるか。接客業の基本でもあり、それはショップの財産にもなる。一番に考えるのは、ギアがお客様のアクティビティの快適さに貢献すること。そのためなら、ダメなところはダメとはっきり言うことも必要だと考えている。

「うちの接客は売って終わり、ではなくてそこから先が大事だと思っています。自社製品を使った上で良い、悪いということを話せるのが直営店のスタッフです。人によってシューズなどどうしてもフィット感が合わないことはある。そういう時は、無理に勧めることはしません。合わないシューズを売ることで、山に行ったお客様が靴擦れをするかもしれない。そうしたら、そのまま山が嫌いになってしまう可能性だってあるんです」

確かに、人とアクティビティをつなぐ立場として、ショップでの接客は責任の大きい仕事だ。けれど裏を返せば、いろんな人をアクティビティに夢中にさせる橋渡しができるということでもある。そんなショップスタッフをまとめるのに、倉成さんは積極的にスタッフをアクティビティに連れ出すという。スタッフも、どんどんフィールドでアクティビティを楽しむべきだという考えだ。この日も、午後からスタッフと一緒に釣りに行くことになっている。

釣りはひとりでも、みんなでも楽しいアクティビティ

様々なアクティビティを経験してきた倉成さんが「一番長い趣味」と語るのが釣りだ。少年時代からずっと続けているという釣りは、4年前に明石へ越してきて以来、海まで至近の住環境を得てからはとりわけ頻繁に楽しんでいるという。週に3回は釣り場に立つというから、その熱中ぶりは推して知るべしだ。

ふと、兵庫県明石市にお住まいと聞いて驚いた。職場である大阪北部のららぽーとエキスポシティまでは通勤時間にして片道1時間半。なぜ、という問いは野暮だろうか。海の近さに惹かれて今の住まいを選んだんです、と本人はカラカラと笑う。生粋の釣り人である。それは、倉成さんの「釣り部屋」を見ても明らかだ。

この日狙うのは、晩秋のメインターゲットであるタチウオ。夕暮れ時、淡路島までクルマを走らせ、釣りしているとほどなくして釣り仲間のみなさんも合流。みんな、THE NORTH FACEで働く仲間だ。もとから熱心な釣り人もいれば、倉成さんに誘われて釣りを始めた方も多いとか。わいわいと楽しげな雰囲気の中、めいめいにルアーを投げていく。

釣りは一人でも大人数でも楽しいアクティビティだ。みんなで釣りをする時は、釣れた喜びを分かち合うことができるし、釣れない時にはああでもない、こうでもないと会話は止むことがない。実際のところ、この夜は魚信があまりなく、「釣れない」「なんでだろ」「ワインドを使ってみたら?」とみんなで試行錯誤に。

そんなやりとりを見ていると、到底職場の上司と部下というようには見えないのだった。それこそ、倉成さんがスタッフをフィールドに連れ出す理由でもあった。

スタッフと共にフィールドに出る意味

「多くのスタッフと年は一回りくらい離れてるんですよ。お店だと店長という立場もあり、お互い仕事モードでなかなかフランクに話すことも難しくて。でもプライベートで行くと、ふざけた話ばっかりする中で、あぁ、彼はこんなこと考えたんだ、と気付かされます」

日もとっぷりと暮れ、真っ暗な中で一行は黙々と竿を振り続ける。するとにわかに歓声が! スタッフの一人が、本命タチウオを見事にゲット。しかもかなりの大型だ。みんなで喜び合い、場が和むのがわかる。

「自分が釣れなくても、誰かが釣れると盛り上がる。これも釣りの好きなところです」

倉成さんたちの釣りは、釣っただけでは終わらないのだという。釣り場に近い倉成さんの家に獲物を持ち込んで、美味しくいただくのが定番コース。元板前の面目躍如、しかし釣りに連れて行ってくれて、料理までしてくれる上司なんてずいぶん理想的な存在だ。

「仕事の時は僕も言いたいことを言うので、アメとムチじゃないですけど……。プライベートの時はみんなに楽しんでもらって、明日への活力になればいいと思っています。一人暮らしの若い子も多いので、まともなご飯を食べさせてあげたい気持ちになりますしね(笑) すごい食べてくれるから嬉しいですよ。料理が得意で良かったとも思います」

フィールドで同じ時間を共有し、同じ釜の飯を食べる。店長としてチームビルディングの意識は常に持っている。

「やっぱり店舗なので、自分だけじゃなくてみんなを巻き込んでいかないといいお店にならないんですよね。ただ職場だけのビジネスライクな付き合いだとお店の魅力も無くなってしまう」

お客様にも、スタッフにもフィールドに出る喜びを味わってほしいと常々考えている倉成さん。店長になる前にはイベント担当として〈キッズネイチャー〉やキャンプイベント、UTMFの山岳サポートなどを行ってきた。ブランドが一番に輝く現場での仕事にも思いは強い。

「アウトドア環境でTHE NORTH FACEをどう見せていくかということに興味があって、ずっとそれを目標にしているんです。やっぱり、外が好きですから」

アウトドアの世界への扉を、スタッフにもお客様にも開いている倉成さんの活躍の場は、まだまだ広がっていきそうだ。

  1. 倉成直亮(くらなり なおあき)
    1984年1月30日生まれ。〈THE NORTH FACEららぽーとエキスポシティ〉店長。横浜に育った幼少期から釣りにのめりこみ、今もジャンルを問わず週に3度は釣竿を振る。オーストラリア在住や板前を経て、アウトドアブランドとしてのTHE NORTH FACEを広めるべく現職に。釣ってきた魚を調理してスタッフに振る舞う、『板前店長』としての顔も。サーフィンや登山など、根っからのアウトドア好き。
  2. (写真 辻啓/文 小俣雄風太)

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