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頭脳スポーツ、スカッシュの魅力をたくさんの人に伝えたい!
プロスカッシュプレーヤー松井千夏×大塚絵梨奈(GOLDWIN)

2015.10.28

テニス人気の高まりとともに注目を集めるようになったスカッシュ。世界でおおよそ2000万人がプレーするというラケットスポーツだ。硬式テニス歴13年というゴールドウインの大塚絵梨奈がプロとして第一線で活躍する松井千夏選手に教えを請い、スカッシュに初挑戦!テニスとは全くことなるスカッシュの魅力とは?

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スカッシュとテニスの違い

大塚 スカッシュというとテニスやバドミントン、卓球と同じようにラケットとボールを使うスポーツというイメージなのですが、具体的にはどんな競技なのでしょうか?

松井 テニスや卓球はネットを挟んで相手と対峙して得点を競うものですが、スカッシュは相手と同じコートに立って戦うという点が、他のラケットスポーツとの大きな違いです。

大塚 前だけではなく左右の壁も使えるというのもスカッシュならではですよね。

松井 前方の壁に向かってノーバウンドで打ち返すのですが、前に加えて左右と後ろの壁も利用できます。自分と相手とでボールを交互に打ち返す、ファーストバウンドもしくはノーバウンドで打ち返す必要があるというのはテニスと同じですね。ボールが床でツーバウンドしてしまう、前方の壁に届かない、ボールがラインに触れる(オンライン)などはすべてアウト、相手の得点になります。1ゲーム11点先取のラリーポイント制で、3ゲーム先取で勝利となります。

大塚 テニス歴が長いせいか、対戦相手と同じコートに立っていることに違和感を感じました。松井さんは戦っていて相手を邪魔だと思ったりしませんか?

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松井 スカッシュでは、「Tポジション」(スカッシュコートの中央にあるT字の部分)を取ることが最も大切だと言われます。相手を四隅に動かして自分はTポジションをキープするというのが、主導権を握るポイントなんです。相手の動きを先読みして4つの壁を有効に利用すれば、相手をうまいこと動かすことができます。邪魔と感じたなら、相手を動かしていないっていうことなんですよ。

大塚 身体はもちろん、頭も同じくらい使いますよね。

松井 だから、うまくキマると気持ちいいんですよ。

相手の細かな動き、表情を読んでボールに反応する

大塚 そもそも松井さんはどうしてスカッシュを始めたんですか?

松井 体育教師を目指して体育大学に入学したときに、スカッシュサークルに入ったんです。もともと、小学校から高校卒業までバレーボールをやっていたんですが、バレー選手にしては小柄だったし高校まででやりきったという思いもあったので、大学では別のスポーツに挑戦してみようと思っていました。小学生のときから趣味でテニスを続けていたのでテニス部を考えていたんですが、先にスカッシュに誘われて。運動神経には自信がありましたしテニスの経験もあるので問題ないだろうと思ったら、ボールの弾みかたも違うし、壁際に突然ボールが飛んでくるしで、全く歯が立たない(笑)。悔しくて練習しているうちに、すっかりハマってしまいました。

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大塚 そうですね、先ほど松井さんにレッスンしていただいたときも、勝手が違うので驚きました。まずボールが全然弾まない(笑)。

松井 そうそう、ボールを打ち合って温めると次第にボールの中の空気が膨張して、ようやく弾むようになるんです。

大塚 周りを見渡す余裕もなくて、結局、前方の壁しか使えませんでした。テニスだと前だけ意識していればいいので、なかなか左右にまで気がまわらないんです。ましてや後ろの壁なんて……。

松井 そうですね、スカッシュでは相手の身体の開き具合とかラケットの面の角度とか、細かいところまで見ていないといけないので。意識としては、身体は前を向いているけれど自分の肩越しに常に四方を見渡すイメージ、でしょうか。そういう細かな情報から相手の動きを読んで、どこにボールが来るか反応するんです。

大塚 確かにテニスとは意識の向け方が全然違いますね。そういえば、松井さんはご自身を小柄とおっしゃっていますが、それでも世界と渡り合っていける強みってなんでしょうか?

松井 テニスと同じで、身長があればその分リーチも長いですから、動かずにボールを取れる範囲が広がります。でもスカッシュは空間全体を使って相手を揺さぶりますから、身長よりも身体のスマートな使い方や俊敏さのほうが求められるんです。現在の女性の世界チャンピオンも、身長は160cmそこそこですから。むしろ小柄な選手は大柄の選手から舐められがちですから、そういう相手の油断を有効に使えるかな。

大塚 松井さんは左利きだということですが、それも有利に働きますか?

松井 そうですね。テニス同様、スカッシュも大半の選手が右利きです。右利きの選手にとっては、左利きは打つタイミングが微妙に違うようで、やりにくいと言われます。逆に私も、戦術が自分と似ていたりするので左利きの選手と戦うのは嫌ですね。そういうちょっと駆け引きや心理面も左右するスポーツなんです。

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経験を重ねて、進化し続ける

大塚 では、松井さんご自身のいちばんの武器ってなんでしょうか?

松井 一つは左利き。もう一つは経験値でしょうか。20代のころはスピード、パワー、俊敏性といったフィジカルな強さが目立っていたんです。ウェイトトレーニングで怪我をしない身体を作っていましたし、筋肉がついてがっちりしていました。でも30代になると、20代のスピードを超えるのは難しくなりますよね。トレーニングにしたって、いかに現状を維持するかという内容に変わってきます。とはいえ、そこには20代とは違う経験値というものが加わります。20代で培ったものをよりよいパフォーマンスとして活かすにはどうすればいいのか、理性的に考えられるようになりました。私の場合、コアトレーニングとバランストレーニングのメニューを取り入れて、それまでに作った筋肉を使いこなすような方向にシフトしました。身体も柔軟になって可動域も広がり、20代よりも30代のいまのほうが動きがスムーズだなって感じています。経験を積んでいけば、年を重ねても進化し続けることができるんです。

大塚 食事や生活面で気をつけていることはありますか?

松井 体重別に戦う競技ではないのでストイックなことはしていません。栄養士のアドバイスのもと、好きなものをバランスよく食べてその分動く、が基本です。海外のツアーには和食を持って行ったりもしますが、あまりナーバスにはならないですね。やっぱり現地のものを食べてコンディションを整えたほうが、バランスがいいですから。「この食品がないと試合ができない」みたいな状態にはなりたくないんです。そうそう、アジア選手権でインドに行った時はものすごく気をつけていたにも関わらず、団体戦の前に食中毒になってしまって。あのときは大変でした(笑)。

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世界のスカッシュ人口は2000万人以上!

大塚 松井さんにはいつもエレッセのウエアを着ていただいていますが、着心地はいかがですか?

松井 エレッセとは10年近いおつきあいになるんですが、ウエアが動きを妨げずあらゆるパフォーマンスに追随してくれるから、練習はもちろん試合でも活躍しています。エレッセの前に着ていたのはテニスウエアではなくてフィットネスウエアだったので、とくに肩周りなど上半身の動きに関して限界を感じていましたから。また、スカッシュの場合はタイムアウトもないしゲーム間の休憩もたった90秒ですから、着替える暇がないんです。試合の始まりから最後まで、吸汗・速乾を感じられる機能性素材でないと。その点、エレッセのウエアは最後まできちんと機能してくれます。

大塚 今後の松井さんの目標はなんでしょうか?

松井 世界のスカッシュ人口は、185カ国で約2000万人だと言われていますが、日本ではまだまだ競技人口が少ないスポーツ。まずは日本各地でコートを増やし、スカッシュ愛好者を増やしていきたいので、地方での試合やデモンストレーションには積極的に出かけるようにしています。

大塚 プロのパフォーマンスは間近に見られれば、そのスポーツに対するイメージも変わりますよね。

松井 海外では4面をクリアボードで囲った「クリアコート」が主流で、見た目も派手でエンターテインメント性も高いのですが、魅力的なコートが日本に導入されるようになるといいとも思っています。あとは日本スカッシュ協会が現在、エアースカッシュを取り入れて体験イベントなどを行うなど普及に努めているんです。エアースカッシュは空気で膨らむコートを使い、スカッシュのボールよりも大きなボールを用いて、スカッシュの基本的な動きを手軽に楽しめるというものですが、野球やサッカーのように「スカッシュをやったことがある」という人を一人でも増やして、競技の認知度をあげていきたいんです。

大塚 はじめてのスカッシュでしたが、ボールが実際にどう飛んでくるのかわからなくて、かなりツボにはまりました。これから継続してレッスンを受けてみようかなと思っているくらい。専用コートを増やし認知度をあげるべく、私たちゴールドウインのスタッフも松井さんのサポートを務められるようがんばります!

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  • 松井千夏(まつい ちなつ)
    1977年8月8日生まれ。神奈川県川崎市出身。小・中・高とバレーボール部に入っていたが、身長が157cmと低めだったことから大学ではテニスに転身しようとするも、初めて体験したスカッシュの魅力にとりつかれ、現在も日本のスカッシュの第1戦で大活躍中。また、自らコーチとしてスカッシュの指導にも取り組み、日本ではまだまだ人口の少ないスカッシュの普及活動にも積極的につとめている。

    所属:SQ-CUBE PRO
    主な成績:
    2014 年東アジア選手権 女子団体銀メダル
    2001、04、07、08 全日本優勝(通算4回)
    2002、03、05、10、11、12、13、14 全日本準優勝

  • 大塚絵梨奈(おおつか えりな)
    1990年4月10日生まれ。愛媛県松山市道後出身。小学校5年生で硬式テニスを始め、学生時代は筑波大学体育会硬式テニス部に所属。選手、トレーナー、コーチを経て、現在は趣味でテニスを続けている。最高成績は、全日本学生テニス選手権ベスト8。大学卒業後は筑波大学大学院に進学し、スポーツバイオメカニクスの分野で、スポーツ動作の研究に没頭。「スポーツで子供たちのフィールドをアウトドアに拡大したい」という想いで、2015年ゴールドウイン入社。

    ゴールドウイン事業部C3fitチームに所属し、入社のきっかけとなったブランドの一つに携わっている。今はまっているのはゴルフと温泉巡り。

(写真 古谷勝 / 文 倉石綾子)

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