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スポーツを一番に考える、SPORTS FIRST な想いを持った
ゴールドウイン社員のライフスタイルに迫ります。

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ゴルフは自分に厳しく、他人を思いやるスポーツ 岩井浩一

2018.09.10

2018年の酷暑は富山県西部の小矢部市でも猛威を振るった。翌日に小学生から高校生までのジュニアによるゴルフ大会が開催されるゴルフ倶楽部ゴールドウインのグリーンの芝も悲鳴を上げていた。

「20日以上まとまった雨が降っていないんですよ。美しい芝をお見せできなくて残念です」

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翌日に控えた「ゴールドウインジュニアチャレンジゴルフ大会」の運営責任者を務めるクラブの営業部副部長・岩井浩一さんは、クラブハウス2階レストランの広い窓から目を細めてコースを眺め、本当に残念そうにそんなことをいう。引き締まった身体をした長身のスポーツマン体型をしている彼は、学生時代は神戸学院大学で体育会ヨット部に在籍していた。近頃はランニングを日課とし、フルマラソンにもチャレンジしているというが、さほどストイックな印象は受けない。どこか隙があるというか、人なつっこさと柔らかさがにじみ出るような人物だ。

「1番と10番のスタート、それに9番と18番の上がりのホールがクラブハウスから全部見渡せるのは全国でも珍しいんですよ」と窓からの景色を説明してくれる。創立時に新卒で入社して以来27年間ここで働いてきた岩井さんにとって、クラブハウスもコースもまるで自分の身体の一部のように熟知しているのだろう――。

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株式会社ゴールドウインによって1991年に開業したゴルフ倶楽部ゴールドウイン。ゴールドウインの巨大なテクニカルセンターが建つ本店所在地から南西に4kmほど離れた丘陵地に位置する。存命だった創業者の西田東作氏が創業地の裏山にゴルフコースを造成した格好で、世界のスポーツウェア業界で社交性を発揮した西田氏のもてなしの心が細部に息づいている。高級路線のゴルフ場として開業したため、一流のコースデザイナーを起用し、クラブハウスは迎賓館を思わせる豪壮な造作で、それに見合ったサービスの研修にも力が入れられた。

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ドレープのカーテンがかかったレストランの窓辺から離れると、岩井さんは「少しコースを案内しましょう」と柔らかい物腰で提案した。岩井さんの先導にしたがい、バーコーナーを過ぎて1階のロビーへ降りる。コースへの扉を出ると、フリードリンクや氷、おしぼりが用意されており、GPSが搭載されたゴルフカートがプレイヤーたちを待っている。

真夏の太陽が照りつけるコースへ出ると、岩井さんは「残念」と言ったが、日に何度も行われる散水でフェアウェイやグリーンは鮮やかな緑色を保っていた。言われてみればグリーンの周縁部には若干の退色が見られるものの、グリーンキーパーによる丁寧な保守作業が施された敷地は、西洋庭園のような隅々まで神経が行き届いた人工的な美しさで、トロピカルカラーのウェアに身を包んだ年配のプレイヤーたちを迎えていた。

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 レストランのスタッフやキャディー、受付スタッフなど女性が多い職場で岩井さんは中間管理職の立場にある。部下たちから上がってくる多くの要望と上司からの指示に挟まれ、ストレスは多いはずだ。しかし入社時から岩井さんを知るスタッフによると、彼は一度も声を荒げたことがない。会員たちから「岩井ちゃん」と呼ばれ、皆に愛されるキャラクターだという。

「いまスタッフの中にはゴルフをやったことがない人もいるんです。それはとても残念なことで、せっかくこの環境で働いているんですから、コースを回ってゴルフの楽しさを知り、お客様の気持ちになって接客できるようになってほしいんですけどね」

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決して押し出しは強くないが、岩井さんは静かに情熱を燃やすタイプだ。「スポーツは楽しむもの」という確信を持って仕事にあたっている。

「ゴールドウインジュニアチャレンジゴルフ大会」は2010年に始まり、今年で9度目の開催を数える。エントリーフィーは3000円ほどと格安で、賞品も用意されている。一つのゴルフ場が主催するジュニアの大会は希だが、ゴルフ倶楽部ゴールドウインの経営方針の一つに「社会貢献」があり、ジュニア育成・ゴルファーの底辺拡大を目的として行ってきた。

「小学4年生から高校生までのジュニアゴルファーを対象に、競技力の向上だけでなく、ルールやマナーを学んでもらうことを目的に開催しています」

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ゴルフ倶楽部ゴールドウインは、この12年間で8度、中部ジュニアゴルフ選手権の北陸地区予選の会場に選ばれている。今年も7月23日にここで開催されている。上位入賞者はさらに中部予選を経て、石川遼、宮里藍といったトッププロが優勝している日本ジュニアゴルフ選手権に進むことができるプロゴルファーの登竜門的な大会となっている。

 とはいえ、岩井さんは「ゴールドウインジュニアチャレンジ」に出場する少年・少女たち、またその親たちが、いずれプロになることを目指してゴルフをやっているかどうかには無頓着だ。

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「参加するこどもたちの様子は、無邪気で真剣で、OBを叩かないように慎重に、グリーンでは芝目を読む姿があったりと、一生懸命やっています。でも、スポーツは楽しむのが一番です。楽しくのびのびとやってもらえれば」

例年小中学生を中心とした30名ほどが参加してきたが、今年は猛暑と、他の大会が重なったために、参加者が17名と少なくなってしまったことを残念がっていた。

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 大会当日、岩井さんはスーツ姿で受け付けに立ち、緊張した面持ちのジュニアゴルファーたちに声をかけている。30分ほどのわずかな時間を利用して、参加するジュニアゴルファーたちは練習場へ急ぐ。ジュニアたちのショットは歯切れのいい音で癖のない真っ直ぐな球を打ち出している。アマチュアゴルファーの間では「100切りを目指す」などと言われるが、ジュニアたちの目指す優勝ラインは18ホール・パー72のこのコースで70台。7月にここで行われた中部ジュニアゴルフ選手権で予選トップ通過した高校生女子が69、中学生男子でも71という好スコアを記録している。

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ジュニアたちは付き添いの親に世話を焼かれながらアプローチやパッティングの練習を慌ただしく済ませると、開会式が始まるコンペルームへと集まってきた。開会式のスピーチを真剣な表情で聞いているうちに、緊張が高まっていく。

岩井さんは開会式を終えるとゴルフウェアに着替え、大会をサポートするスタッフらと打ち合わせをしている。第1組のインスタートは9時2分。各組には大人が1人付き添い、熱中症など体調不良がないかを見守り、必要に応じてルールの説明などを行う。岩井さんは第2組の中学生男子3人の組に付き添ってコースを回る。

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ジュニアの大会は、ゴルフ場への送迎こそ親が担うが、スタートホール以外のコースへの付き添いは禁じられている。プレイが始まれば子供たちだけの真剣勝負が始まる。帽子を脱いで組ごとに神妙な面持ちでルール説明を聞くと、選手たちはティーグラウンドへ移動した。

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 ドライバーショットを上手くフェアウェイへと運ぶ子もいれば、ラフに打ち込んだりバンカーにつかまる子も多い。コースは広くはないが、丘陵地にあるためフェアウェイがうねっており、バンカーやウォーターハザードも多く、テクニックが求められる。暑さの中苦戦するジュニアゴルファーたちを、岩井さんは静かに見守っている。

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長年知っているジュニアたちも多く参加し、今回が初めてという子もいるなか、岩井さんはあくまでも公平に子供たちに接する。ときどき声はかけるものの、基本的にはジュニアゴルファーたちの自主性に任せて黒子に徹するスタンスだ。

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「ゴルフは審判がいないスポーツですから、正直でなければならないんです。マナーも数え切れないほどたくさんあります。自分に厳しく、他人を思いやり、気づかいをしなければ成立しないスポーツなんです」

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 ハーフを終えるとクラブハウスで昼食休憩をとり、後半戦が再開。何度もラフに打ち込みやる気を失ってしまった子もなかにはいたが、みな集中を切らさず18ホールを終えて、クラブハウスへ戻ってきた。

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「大変な猛暑の中をひたむきにプレイする姿は、いつみてもまぶしいですね。ロングホールで2オンを狙ってみる。OBを叩かないように慎重にプレイする。3パットをしないようにグリーンのラインをよく読む。いろいろなチャレンジがあったかと思います。子供に限りませんが、チャレンジしている人は目が輝いていますよね。いい表情をしている子を見ているのは気持ちがいいものです。今年も若いエネルギーをもらいました」

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 大会の集客から組み合わせの決定、案内の発送などの作業は1人で行ってきた。当日も開会式や閉会式の準備から人員の配置や付き添いなど忙しく立ち働いていたが、疲れた様子を見せずに岩井さんは笑顔で感想を述べていた。

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「ただ、ジュニアゴルファーの減少傾向は深刻な問題の一つ。他のスポーツでもそうでしょうが、ゴルフをやる子供の減少に歯止めがかからないんですよ。大会を続けることで子供たちにゴルフの楽しさを少しでも知ってもらい、いつか大きくなって振り返った時に『ゴルフ倶楽部ゴールドウインでプレイして楽しかったな』『ゴルフ倶楽部ゴールドウインの〇番ホールでこんなこともあったな』と思い出してもらえたら嬉しいです。大人になって再びプレイしに来てもらえたら大歓迎です。なんなら、一緒に働けたら最高なんですけどね」

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 支配人がゴルフ場の顔だとすると、岩井さんはあくまでも実務を担う裏方だ。裏方がしっかりした組織は盤石だろう。同僚によると入社時からほとんど変わらぬ容貌で、岩井浩一さんはゴルフ倶楽部ゴールドウインで今日もゴルファーたちを迎えている。

  1. 岩井浩一
    1968年富山県高岡市生まれ。神戸学院大学で体育会ヨット部に在籍。1991年ゴルフ倶楽部ゴールドウイン開設時にゴールドウイン開発株式会社に入社。同倶楽部の歴史と同じ勤続27年のベテラン。現在は営業部副部長として顧客の開拓やイベントの企画・運営などに携わる。趣味はランニングとビーチボール。2年前からフルマラソンにチャレンジしている。

(写真 古谷勝 / 文 池田潮)

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