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いつからかスポーツが一番になった

スポーツを一番に考える、SPORTS FIRST な想いを持った
ゴールドウイン社員のライフスタイルに迫ります。

最高にライフスタイルに合っている仕事 野中研二

2020.11.12

天高く馬肥ゆる秋、富士山麓のキャンプ場の一角は厨房と化していた。THE NORTH FACEでキャンプグッズやギアの開発に携わる野中研二さんは、屋外でも手際良く料理を進めていく。驚くべきは、そのしつらえだ。

自身がデザインしたテント内には、薪ストーブ(!)がくべられ、父から譲り受けたという年季物のイワタニ・プリムス製ツーバーナーコンロの火力は十分。フライパンにはスパイスカレーがぐつぐつといい音を立てている。外なのに、ここはまるで厨房なのだ。

夏のキャンプは、野中家で年に数回の恒例行事。小学生の頃からキャンプが楽しみだったという野中さんは、やがて大学生になり、自身でキャンプを楽しむようになる。始めはテントを立てるのにも苦戦して父の偉大さを知ったそうだ。そのうちにキャンプ経験のない友人をキャンプに誘い出すようになる。そしてそこでは、趣味の料理を振舞うのだという。

「道具を持っている人がいないので、全て一人で準備するようなキャンプが多かったですね。それはそれで嫌いじゃないんです」とはにかむ野中さん。ホスピタリティの塊のような人だ。しかしなぜ、外で料理をするのだろう。その魅力を聞くと、説得力のある答えが返ってきた。

「友達や家族とキャンプに行く時は、料理をする過程が楽しいんです。コミュニケーションの要素が強いかもしれません。家にいるとみんなで料理を作る、ってことはあんまりありませんが、キャンプだと力を合わせて、協力してできる。非日常的な要素だと思います。あとは、外で食べる時点でもう美味しいので、失敗してもいいやと思えるところですね(笑)」

果たして出来上がってきたスパイスカレー、キャロット・ラペ、夏野菜の鶏肉グリルは絶品で、取材班一同も舌鼓を打ったのであった。ご馳走様でした。

最高にライフスタイルに合っている仕事

野中さんはTHE NORTH FACEで、バッグやギア、アクセサリーなど「アパレルとシューズ以外の、すべての企画・開発」を担当している。折しもブランドはキャンプグッズを拡充しているタイミングで、野中さんは『好き』を仕事にしていると言えそうだ。

「仕事とプライベートが密接に関わっているので、分けたいと思う時がある反面、分けたくないと思うことも多々あります。こうやってキャンプをしながら、ものづくりを考えることは、やめたくないし、ずっと仕事をしているといえばそうなりますが、嫌じゃないんです。『おっ! こんなのはどうだろう』ってアイデアを思いつくこともあるので」

アウトドアギアが好きで、THE NORTH FACEに入った野中さん。この日立てた新作のテントにも関わるなど、自身の経験を生かしたものづくりを日々行っている。美大で学んだデザイン哲学は、野中さんのものづくりの根幹にあるという。

「例えば何かものを作るとして、素材の選定から販売、プロモーションに至るまで、その全体の流れを整えるのがデザインだと思っています」 

ただ見栄えを良くすることはデザインにあらず。実際に使える製品を、どのように作り、どのようにカスタマーに届けるか。その意味で、日々フィールドに出ている野中さんは開発者として、あるいはひとりのユーザーとして大局的にものづくりを考えることができる。これは彼の強みだ。

「だいたい週末はキャンプをしているので、週末ごとにテストをしている感じです。だから最高にライフスタイルに合っている仕事ですね」と笑う。

キャンプ人だから作り得たソフトクーラー

そんな野中さんが自信を見せるのが、ブランド初のソフトクーラーボックス〈フィルデンスクーラー 12〉だ。野中さんが感じたフィールドでのニーズを製品に落とし込んでいる。

「よくあるハードタイプのクーラーボックスは、保温力は高いのですが、重い上にクルマに積むとスペースを食います。ソフトクーラーは便利ですが、ジッパーを締め忘れると保温力が下がります。いかんせんジッパーの開け閉めがめんどくさいんです。それを踏まえて、このバッグでは蓋をこのままポンと上から下ろすだけで、ジッパーを占めなくても保温力が保たれるように隙間ができない形状にしました。しかもマグネット内蔵でしっかりと締まるんです。折りたたみはできませんが、保冷力はハードクーラー以上と製品テストでもデータが出ているんですよ」

保温力という性能は折り紙付き。それでいてサイズ感は、キャンパーの痒いところに手が届く設定にしているのだとか。

「焚き火を囲みながら語らっていても、スッとビールが出せるんです。緩くなりません。サイズ感にはこだわっていて、350mlのビール缶の上下に保冷剤が入るようにスペースを作っています。また、1〜2名でのキャンプで必要なお肉のパックサイズもリサーチを重ねまして、ちゃんと収まるサイズでもあるんです」

もっとフィールドにTHE NORTH FACEのテントを増やしたい

自身の興味関心を形にする仕事を、目を細めながら語る野中さん。THE NORTH FACEというブランドでそれができることにも、意義を感じているという。

「THE NORTH FACEの、常に最先端に挑戦する姿勢は魅力的だと思います。〈Never Stop Exploring〉というタグラインがありますけど、山でもフィールドでも、自分自身の人生でもそうありたいと思っていて、共感しています。ギアに関しても、いま主流のドームテントも最初に作ったのはTHE NORTH FACEですから。そうした歴史を引継ぎつつ、ブランドの新しいチャレンジに自分も貢献できればと思います」

職業人としての野望を聞いてみた。

「今こうしてキャンプ場を見渡してみてもまだまだTHE NORTH FACEのテントは少ない。もっともっと増やしたいですね」

それはそう遠い未来のことではないのかもしれない、そう思わせる熱量を感じさせてくれる野中さんだった。

  1. 野中研二
    〈THE NORTH FACE〉のバッグやギア、アクセサリーなど「アパレルとシューズ以外の、すべての企画・開発」に携わる。趣味は週末ごとのキャンプと冬のスノーボード、そして料理。目下のところ、キャンプ道具を出し入れしやすいガレージ付きの家を夢見る根っからのキャンパー。

(写真 古谷勝 / 文 小俣雄風太)

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