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人生に足りなかったのは“ラン”だったのかもしれない 田嶌一徳

2020.03.16

ランニング、特にトレイルランの場合、やったらいきなり走れてしまった、という人は案外多い。人間の身体は走ることに最適化されていまの形に進化したという説もあるくらいだから、分からないこともないんだけど、なんとも羨ましい話だ。ザ・ノース・フェイスでデザイナーとして働く田嶌一徳さんも、そんな“やったらできた”系ランナー。

ボルダリングや登山などに親しんではいたものの、もともと「走ることには苦手意識があった」という田嶌さんが走り始めた理由は、決して積極的なものではない。

「僕の所属する企画チームでトレイルラン用のバックパックを開発していますし、走るのが嫌いという理由でトレイルランをやらないというのは、ちょっと仕事的にもどうかなと」

きっかけは、あくまでも仕事に関して、良い経験が得られそうだからというもの。もともとチャレンジ精神は旺盛で、フライフィッシングや沢登りなども知人から誘われたら、とりあえず1度は体験してみるというタイプ。未知の物でも興味を示せば変化を恐れない性格だ。

仕事にしても、元々は家電などのプロダクトデザインを手がけていた。そこから一転して4年前にザ・ノース・フェイスへ。固いものから柔らかいもの。未知への挑戦だ。

「布を扱うことに可能性を感じたんです。家電の場合は中身の部分は触れないところも多いです。でも布ものの場合は機能面も含めて自分でデザインしていける。特にザ・ノース・フェイスならギア的な側面と、ファッション的な側面の両方からアプローチできることに魅力を感じました」

田嶌さんが最初に出場したのは、2018年9月。ザ・ノース・フェイスが協賛している「上州武尊スカイビュートレイル 30km」だった。1度自宅からロードで30km走ってみたくらいで、本格的な練習はほとんどやっていなかった。

「スタートラインに立った時は、不安が半分、ワクワクが半分といった感じでした。でも一緒に走った友人の励ましなどもあって、無事にゴールできました。実際走ってみて、辛かったという気持ちはなかったです。楽しかったのと、そして悔しかった。上位半分以内には入れましたが、もっと自分は頑張れただろうって。そこで火がついたわけではないんですが、もうちょっと知ってみたいという気持ちになりました」

そこから田嶌さんのレースラッシュが始まる。デビュー戦の2ヶ月後には「神流マウンテンラン&ウォーク 40km」に参加。その後も「ハセツネ 30km」「スリーピークス八ヶ岳トレイル 41km」「スパトレイル 56km」と2ヶ月に1回のペースで参加。「信越五岳トレイル 110km」も完走し、距離もタイムも確実に更新してきた。そしてランデビューからちょうど1年後の2019年9月、「上州武尊スカイビュートレイル」へ、今度は70km部門で出場。上位10パーセントに入るという驚くべき成長っぷりだ。

田嶌さんの成長のキーとなったのは友人たちの存在。階段練やロング走など、なかなかスパルタンな練習を続けられたのも、仲間の存在が大きかったし、登山仲間と一緒に10kmほどの距離を走り銭湯をゴールにする銭湯ランでは、走る楽しさも知った。

「自宅周辺10km半径にある銭湯を探すんです。これが予想以上にいっぱいあって、1年ほど続けてますが、まだまだ行っていない銭湯もあります。友人と銭湯まで走って、その後は居酒屋で飲んで電車で帰ってくる。その時間がすごく楽しいんですよね」

もちろん、レースにも参加し続けている。ロードのレースも3本経験したし、昨年12月には「The North Face Hong Kong 100km」で海外デビューも果たした。当初の目論みだった仕事へのフィードバックも順調だ。

「サンプルなどを自分自身でフィールドテストをすると、責任ある物作りをしなければ、という気持ちになります。100kmを超えて夜通し走るレースでは、疲労のせいで段々と判断力なんかも鈍ってきます。例えばザックのどこに何を入れたかとか、そういうことも分からなくなるし、細かい操作なんてできないんですよ。だからトレイルランのザックは、できるだけシンプルに作るべきだとか、そういうことは実際に長いレースに出てみないとわからないことでした。自分の趣味と仕事がシームレスに続く環境なので、今後もいろんなことにチャレンジしてデザイナーとしての幅を拡げていきたいですね」

田嶌さんが次に目指しているのは100マイラー。周囲の仲間には100マイラーも多く、彼らが見てきた世界を自分も知ってみたいという好奇心が田嶌さんの背中を後押しする。

「とりあえず、100マイルは走ってみたいですね。その先にさらに100マイルを重ねて行くのか、もっと短いレースに絞っていくのか、ひょっとしたら300kmとかのロングディスタンスに挑戦したくなるかも……」

100マイルはあくまでも通過点。田嶌さんの好奇心はすでにその先にある。ランを始めてまだ1年半。田嶌さんの中にもともとあった、肉体的、精神的スペースにトレイルランというパーツがバチッとハマッた。ついに運命の相手、トレイルランと出会ってしまった。そんな感じなのだ。

  1. 田嶌一徳(たしま かずのり)
    1985年生まれ。奈良県出身。父親の仕事の関係で奈良、大阪、静岡と移り住み、小学校1〜5年生まではエジプトのカイロで過ごす。美大を経て家電などを中心としたプロダクトデザイナーになる。ザ・ノース・フェイスに転職するきっかけとなったのは、知人に誘われて始めた登山。ボルダリングや沢登りなども楽しみつつ、いまはトレイルランに夢中で2020年には初100マイルの予定。現在はザ・ノース・フェイスのバッグを主にデザインしている。
  2. (写真 古谷勝 /文 櫻井卓)

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