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いつからかスポーツが一番になった

スポーツを一番に考える、SPORTS FIRST な想いを持った
ゴールドウイン社員のライフスタイルに迫ります。

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ユーザーの目線にたち、オートバイを楽しいアクティビティとして認識してもらう
福田 斉

2017.09.04

「実はゴールドウインという会社がどんな会社なのかもよく知りませんでした」
 
現在、ゴールドウイン・モーターグループのマネージャーを務める福田斉さんは笑う。高校生の頃にバイクの免許を取得し、それからは休日になればツーリング三昧。大学生に入ってからは、ミニバイクのワンメイクレースなどに参加するほど2輪の世界にのめり込んでいた。だから、進路も2輪関係を狙っていたという。大学の友人に誘われてなんとなく行ったゴールドウインの会社説明会。その時に渡された資料にはモトクロスバイクの写真とモーターサイクル事業の説明があった。

実はゴールドウインのモーターサイクル事業を開始したのは1983年のこと。当時はモトクロスがブームでオフロードバイクを中心に、2輪業界が盛り上がっていた時代だ。「この部署で働けるんなら、いいなあと思って入社を決めたんです」

ユーザー目線が生んだ妥協のない製品

しかし、入社後に配属されたのはアウトドアの営業部。福田さんは仕事をしつつ、モーターグループへの異動を希望し続けた。それが実ったのが5年後のことだった。前任者が辞めることになったために急きょ、福田さんが商品企画を担当することになったのだ。営業職からいきなり商品企画。最初は右も左もわからない。そこで役に立ったのは、自身のバイク乗りとしての経験だった。

「商品企画のノウハウは無かったんですが、普段、自分がツーリングに行った時などに感じていたちょっとした不満などを、どうやればギアの力で解決できるか、ということを考えていけば、お客様にも満足してもらえるものが作っていけるんじゃないか、と思ったんです」

この考え方は現在の福田さんの商品作りでも続いている。“徹底したユーザー目線でのモノ作り”。これが福田さんの最大の持ち味だ。

「従来品を使っている時に、どうやったらもっと使いやすくなるかなあ、と考えるワケです。どうやったらもっと着脱しやすくなるか。ポケットはどの位置に着けるべきかなど、そういうアイデアは自分自身がある意味ヘビーユーザーなので、けっこう苦労なく出てくるんです」

マーケティング以前に、自分が欲しいと思うものを、きちんと作る。その姿勢は当時から高く評価された。福田さんが商品企画を担当して間もない頃に企画した商品が、いまだにモデルチェンジして現行品として残っているし、海外でテスト販売した時には、その作りや機能の細やかさを「ファンタスティック!」と賞賛されたというほどだ。

「例えばこのバッグは取り付けシステム(Xベルト)が結構画期的なんです。色んなシートの形状に対応でき、従来品に比べて、着脱が圧倒的に容易になりました」

 
ウェアにはベンチレーションを多数つけた。両肩、両腕、そして背面。これを開けることで夏場でも空気をたくさん取り入れることができて快適。さらに防水素材なので突然の雨などにも強い。

「一般的なツーリングジャケットのベンチレーションは、背中にファスナーが1本ついているくらいです。それをここまで細かくすることで、快適性をアップしています」

さらに腕部分のベンチレーションのファスナーを形状記憶素材にすることで、摘まめば大きく開いた状態をキープできるようにしたり、グローブの手の平に低反発素材を配置することで、ライディング時に体に伝わる振動を大きく軽減していたり、じつに細かい所まで配慮された商品が多い。

「その細かさもユーザー目線で作っていることが関係しているかもしれませんね。グローブひとつでウンチクを2時間は語ってられますよ。マニアック、と言われるかもしれませんが(笑)」

スポーツブランドがオートバイ用品を作るメリット

そして、福田さんのそういう細かいアイデアを実際に形にするために、ゴールドウインがスポーツ方面で培ってきたノウハウが大きく役立っているという。

「型紙のノウハウの蓄積はとても大きいですね。たとえば我々が作るツーリングジャケットは、必ずハンドルを握らなくてはいけません。そして前傾姿勢です。つまり通常のウェアではあまりないような姿勢で着用します。そういう状況でいかに体に負荷をかけないか、ということにおいて、ゴールドウインが長年培ってきた立体裁断のノウハウなどはとても活きてきます。あとは素材面。インナーなどで使う吸水速乾系や消臭機能付きの素材だったり、レインウェアの防水素材など、スポーツブランドとしての実績があるので、そういったものの調達もスムーズです。グローブなどでは異素材を組み合わせる技術が必須です。こういうノウハウは他のメーカーにはない強みです」

福田さんがモーターグループに所属してからすでに21年が経つ。いまではマネージャーも兼任しているが、相変わらず自分自身が現場に出て、商品企画も担当している。徹底した現場主義が福田さんのモノ作りの基本なのだ。

サンプルテストも自らの体と経験で

アイデアが形になったら、次はテスト。それももちろん福田さん自身が行う。

「スピードを出して走るのが前提ですから、停まっている時には大丈夫でも、高速走行したらどうなるか? 外で使うものですから耐候性は十分かなど、様々な状況で検証していく必要があります」

会社のテスト用バイクで、パッとテストに行って、帰ってきて改善点があればそれを再検討する。このフットワークの軽さが、数多くの名作を生み出す要因のひとつだ。もちろん、テストに妥協はない。例えばレインウェアの場合は、アウトドアウェアの場合よりも、さらに苛酷なテストが待っている。

「アウトドアのものは基本的な考え方としては、雨は上から降ってくるものですよね。だからマネキンにウェアを着せて、上からのシャワーテストをします。オートバイのウェアの場合は、当然かなりのスピードが出ますから、バイクにマネキンを乗せて、前から水を当ててそれでも水が漏らないかをテストします。ですからジッパーなどの処理にはとても気を使いますね」

モーターバイクは生身で高速道路を走行することもあるので、その状況下においてもきちんと機能するかまでテストしなければいけない。防風性はもちろん、それだけの風圧を受けてもバタつかないようにするなど、細かいところまで徹底して作り込む必要がある。

「台風が来た時なんかは、これはやっぱりテストに行かなきゃいけないかな、って思ってサンプルを着込んで出かけていったりして(笑)」

そう福田さんは笑うが、アウトドアウェアと同様に、人の生き死にに関わる物を作っているという責任感が為せる技だろう。

数々の名作を生み出してきた福田さんが次に考えているのは、二輪を軸にしたクロスオーバーな楽しみ方。

「走るのを楽しむだけではなくて、キャンプツーリングをしたり、そういう旅っぽいものを意識しています。そういう時に使いやすいバッグですとか、ウェアなど、いろんなアイテムを開発しようとしています。オートバイとアウトドアを上手く絡めて、より広がりのある二輪生活を提案したい。両者のノウハウを持っている会社はゴールドウインをおいて他にありません。それは他社との差別化にもなりますし、すごく大きな強みになると考えています」


  1. 福田斉

    1967年、東京都生まれ。高校時代からオートバイにハマり、大学時代からレースにも出場し始める。1990年にゴールドウインに入社し、1995年からモーターグループの商品企画を担当。数々のヒット商品を生み出し、現在はマネージャーも兼任している。ツーリングはもちろん、ツインリンクもてぎで行われる「DE耐!」への出場など、現役レーサーとしても活躍している。

(写真 古谷勝 / 文 櫻井卓)

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