KNACK

スポーツを楽しむコツ

スポーツ・アウトドアの魅力や、ウェアのメンテナンスなど、
スポーツを楽しむコツを紹介します。

READY FOR UTMF
レース前に知りたい「UTMF」攻略ガイド 塩見悠(GOLDWIN)

2015.09.16

今回フィーチャーするのは、9月25日〜27日に開催される「UTMF」に挑戦する、塩見悠さん。トレラン歴6年、数多くの国内外のレースに参戦し、すでにUTMFを完走済みという経験豊富なランナーです。UTMFを直前に控え、ギア選びからレース前の過ごし方、当日のエイドの使い方など実践的なTIPSを伺います。

前回の反省点を踏まえた攻略点とは?

どんなに忙しくても、毎月必ず山に入る、という塩見さん。トレランの魅力は、「ダイナミックに移り変わる風景はもちろん、野生動物になったような不思議な感覚を味わえること」と言います。父親の影響で始めたという登山からファストパッキング、そしていつしかウルトラマラソンへ。実際、UTMFは第一回、第二回大会に出走、見事、完走を果たしています。それではさっそく、前回の反省を踏まえたポイント攻略法を教えてもらいましょう。

150731_sports first mag19658
  • 150731_sports first mag19660
  • 150731_sports first mag19674

①ウエア&ギアはコンパクト至上主義
ウエア&ギアについては、とにかくコンパクトなものを選ぶよう心がけます。荒天対策のアウターは、「スピードスターフーディー」。防風・耐水性のある超軽量のウィンドストッパージャケットです。裾と袖口のゴムシャーリングがポイントで、コンパクトながらフィット性を高めた仕様になっています。シャープなカッティングがいいですね。

保温着は、プリマロフト®を中綿に採用した最軽量のインサレーションジャケットをチョイス。レイヤリング時に肩周りの動きを妨げない設計が特長です。シューズは日本企画のロード用のシューズ「ウルトラ レプリュージョン︎ レース」。無駄をそぎ落とした軽量さが特長のシューズです。

②モチベーションを上げてくれる補給食の選び方
ついつい食べ過ぎてしまったり、用意したものが口に合わなかったり、補給に関してはいろいろ失敗も繰り返してきました。それでも適切な補給を行いさえすれば、身体を動かし続けることができるという安心感が気持ちを支えてくれます。ですから何を、いつ、どう摂取するかは戦略上、大切なポイントになってきます。

今回はサポートに預けた補給食をメインに活用する予定で、用意するのはジェルやおにぎり、回復系のサプリ、パンなど一般的なもの。それらに加え、洋菓子のようにモチベーションをあげてくれるものもラインナップに含めようと考えています。山の中でチョコレートバーとパウンドケーキとか、ちょっとしたことが大きな楽しみになるんですよ。

また、ハチミツ入りの紅茶もおすすめ。僕はハニースティンガーを入れて飲むようにしています。これで糖質とカフェインを摂取できますから、眠気防止対策としても有効ですよね。

長距離を走りこんでいると段々、自分の身体に合うものや必要になってくる時間帯がわかってきます。身体にあって、なおかつ好みのもの。好きか嫌いかでもパフォーマンスは大きく変わってくるのです。

150731_sports first mag19689

③レース直前はリラックスを心がけて
自律神経の調節には筋肉疲労の倍の時間、1ヶ月ほどかかると言いますから、レース1ヶ月前からはストレス対策を中心に行います。リラックスしろと言われても、仕事もありますし思うように過ごせないこともありますが、たとえば東洋医学を利用する、自分の身体のメンテナンスを第三者に委ねてみる、など積極的な方法をとっています。

と同時に、たとえば本を読むなど、走ること以外の趣味の要素を充実させ、出来る範囲で気持ちを落ち着かせるように心がけています。
「走らないと落ち着かない」という方もいらっしゃいますが、レース直前は軽く走った後にヨガで身体をほぐす程度。僕にとっては筋肉を柔らかく保つことが第一ですね。レース直前のこの時期は疲労を抜くことを第一に考え、無理な追い込みなども行いません。

④エイドは賢く利用する
僕が参加した2012、2013年のレースはノンサポートだったのですが、今回はサポーターがついてくれます。2014年のUTMFで他選手のサポートを経験したのですが、気づきの多い体験でした。時間のマネージメントですとか叱咤激励はもちろん、選手をもっと前に向かわせる、元気に送り出すためにはどうすればいいんだろう、なんて自分なりに工夫してみました。監督になった気分でしたね。
今回は僕も補給食やジェル交換などで、エイドに待機しているサポーターに助けてもらう予定です。

実は食べ物の好き嫌いが多くて、せっかくエイドに用意された特産物も食べられなかったりすることがあります。ですからエイドでは適宜、フルーツなど身体に必要なものを取り入れるサブとして利用しようと考えています。

そして、塩見さんの2013年大会時のレースタイムラインをグラフで振り返ってもらいました。

sfm_timeline_p

レースのサイクルを24時間で考えると、休憩する時間帯・動き続ける時間帯に分かれてきます。

今年のプランでは、18〜21時と翌朝の7、8時ごろに到着するエイドはきちんとした休憩にあて、オーガニックバーやグミなどの固形物や炭水化物を摂取して身体を休めます。その後、22〜0時くらいのエイドは夜食として捉え、こんぶ茶や「ハニースティンガー」を入れた紅茶、ジェルなどでエネルギーを補います。

明け方4時くらいには「子どもの国」に到着している予定なので、ここで朝食をとり、9時くらいのエイドでも汁物やジェルを補う予定です。

サポーターや他の選手と会話を交わすだけでも寝ぼけ防止になりますし、エイドの存在は心強いかぎりです。

⑤大会に向けて
UTMFは世界でも稀有なレースですからこのスタート地点に立てるだけでも幸せなことだと思っています。去年、サポーターとして参加したときも、来年もう一度ランナーとして参加しようと気持ちを新たにしたものでした。海外のアスリートも多く参加する大会ですから、他選手との交流も楽しみです。

そもそも20時間、30時間と山のなかにいること自体、非日常の体験です。それはレースでなければなかなか体験できないこと。これだけたくさんの人が関わり、苦労して運営されるレースに参加して、みんなで同じ時間を共有する。この幸せをぜひ、たくさんの人に感じてほしいと思っています。

  1. 150731_sports first mag19620
  2. 塩見悠(しおみひさし)
    1984年8月3日、兵庫県川辺郡出身。THE NORTH FACE大阪店スタッフ~丸の内のトレイルランニングショップFLIGHT TOKYOの店長を経験後、THE NORTH FACEの直営店の運営に携わる。UTMF完走経験2回。国内外の多くのトレランレースに出場している。
    幼少期より父に山を教わり、母の銀塩カメラを使って風景やスナップを切り取る生活を送る。傍ら、サッカー選手を目指して在阪Jユースに所属しサッカー生活を送る。学生時代は服装史を専攻し、卒業後は製版・デザイン会社を得て現在に至る。
    休日はシーズン問わずアルプスの稜線を巡り、山の奥深く入ることでまだ見ぬ自然景観に出会うことに魅力を感じる。フィールドで体感したウエアリングやギアの重要性をユーザーに伝える事を大切にし、商品開発に活かせることが自分のできる事。これからも国内外のレースやスピード登山の経験を活かし、新たなアウトドアスタイルやショップを創造したいと思っている。

(写真 八木伸司 / 文 倉石綾子)

RECOMMEND POSTS

RELATED SPORTS