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スポーツを楽しむコツ

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ニュージーランドの風土が産んだ、“経年変化”を楽しむバックパックの魅了
松田清忠

2017.12.28

デニムやレザーのように、5年、10年使いこむほど味が出て、“経年変化”を楽しみながら使えるパック、それが「macpac」。今回は、100マイルレースを完走するトレイルランナーであり、macpacの商品企画に携わる松田清忠さんに、ブランドヒストリーや製品の特長について伺いました。

    ニュージーランドの風土だからこそ、生まれた素材

    macpac は、1973年にニュージーランド・クライストチャーチで生まれました。創業者は、当時19歳だったブルース・マッキンタイヤ。彼は山登りが大好きで度々出かけていましたが、自分の理想のパックがなかなか見つからなかった。ならば自分で作ってしまおうということで、バッグの縫製技術も持っていたマック(マッキンタイヤのニックネーム)は “流通しているどのパックよりもいいパックを作る“ことを掲げ、自宅の倉庫で自分の使いたいパックを作り始めました。それがmacpacのはじまりです。ブランド名は、マックさんの作ったパックということで、macpac(マックパック)と名付けられました。

    特長は、ずばり素材。独自開発した「アズテック」という素材を多くのパックに使用しています。この「アズテック」は、コットンとポリエステルを混紡した糸を高密度に織り、特殊なワックスを染み込ませているので、耐水性に優れています。それに、デニムやレザーのように使っていくうちに素材の表情が変化し、独特の風合いを楽しむことができます。

    ただ、高密に織っている分、ワックスをうまく染み込ませるのが大変なんですね。そこで、水とワックスを乳化させるなど工夫を凝らし、生地にしっかり染み込ませました。水分は製造段階で蒸発しますから、最終的にはワックスだけが生地に残る。繊維の性質上、ポリエステルには染み込みませんが、コットンと一緒に織っているのでワックスがコットンの部分にしっかり溜まり、織りの隙間を埋めることができました。

    フラッグシップモデル「ゲッコ クラシック」の3世代。レッドは~2012年、ブラックは2012~2016年、カーキは現行モデル。ストラップの色をブラックで統一し、街でも使いやすいようにアップデートした。

    「カウリ クラシック」。左・真ん中が現行モデル。右は実際に10年使い込んだ旧モデル。生地がヘタることなく、丈夫な様子が見てとれる。まだまだ現役。

    一般的なパックは、ナイロンやポリエステルにウレタンなどのコーティングをして撥水性と強度を出すのが主流です。しかし、ウレタンは比較的短命のため、いずれは寿命がやってきます。特に大型パックの使用頻度って、年に数回程度の方が多いと思うんですね。ハーネスなんかは使い込むほどより自分の身体にフィットして使い心地がよくなることがあるのに、何年か経ってようやく馴染んできたころに、寿命がきてしまうのは悲しい。

    その点、macpacは使った分だけ馴染みが蓄積されていくので、どんどんおいしくなっていくわけです(笑)。たとえパーツが壊れたとしてもほとんどのケースで修理可能ですし、キズがついても、その時の旅の思い出として刻まれていく。デニムの膝のシワの出方のように、その人の体型や使用環境によって仕上がりも変わります。経年劣化によって新品を購入するのではなく、使い込んだ風合いを楽しめる、それが“macpac”のよさです。

    テント泊山行で使い込まれた「アセント」の旧型。

    ナイロンではなく、ポリエステルを採用する理由

    南半球に位置するニュージーランドは、オゾンホールが近いので紫外線が強いんです。なので、紫外線による劣化が少ないとされるポリエステルが選ばれました。

    macpacが創業した1970年代は、世界的にナイロン素材の軽いパックが多く出てきました。ナイロンは軽いし、光沢があって発色がきれい。とても優れた素材です。しかし、ニュージーランドはヤブが多く、ときには道なき道を行かなくてはならない。それに、国の人口は1980年ごろは300万人ほどで、一日トレイルを歩いていても、ほとんど人に出会わない。となると、山の中でパックが破れたり、壊れたりしたらものすごく困ります。それに、ニュージーランドは一日に四季があるといわれるくらい天気がコロコロ変わるため、生死に関わることだってあるかもしれません。縫い目を減らし、極力一枚布で仕立てているのは、“壊れないシンプルなものを作る”という、風土を反映した概念からきているんです。

    (左)2018年春より展開する「ライトウェイト ウェカ」。パッカブル式で、サブバッグやアタックザックとして便利。軽量でコンパクトに携行できる。(右)「ウェカ30」。背中のフィット感を高めるためノーフレームにしているが、よれにくく、背負い心地もいい。ポケットをのぞき、ボディは一枚布で仕立て、防水性と軽さを向上させている。

    リタイヤさせる前に、リペアする
    末永く使ってもらえるよう配慮しているのは、素材の丈夫さだけではありません。部分的にはどうしても傷む部分が出てきてしまうので、そこはリペアで治せるというのがポイント。極端な話、ハーネスが壊れても修理可能です。それに、macpacには完全オリジナルのパーツというのは少なくて、世界中で使われているオーソドックスなパーツを使っています。それはなぜかというと、特殊なものだと入荷するまでに時間がかかったり、場所によっては入手困難だったりしますが、汎用性の高いものなら、仮に旅先で壊れたとしても手に入りやすいですから。永く使っていただくため、リペアに関しても徹底しています。

    30年変わらないデザインの「ライトアルプ」。本国では、ランドセル代わりとして子だもたちが背負っているそう。

    堅牢性と操作性の高さを両立した「ファナティック クラシック」。その性能の高さは、かつてニュージーランド警察からも注目され、同警察の特殊部隊専用パックのベースモデルとして採用されたほど。

    自身がユーザーであり、テスターであり、企画者である

    僕のスポーツ経歴は、小学二年生から高校三年生まで水泳一筋でした。とにかく、水が好き。水の中にいると、なんだか安心するというか。でも、中学校に上がったら水泳部がなかったので、親にお願いしてスクールにずっと通っていました。高校では念願の水泳部に入りましたが、シーズンオフは泳げないので、その時だけスクールに行って泳ぐ。本当に水泳一本でしたね。

    アウトドア遊びに触れたのは、大学に入ってから。当時の僕には、アウトドア=山岳といった概念がなく、キャンプをしながら旅をするスタイルでした。大阪から車で北海道まで行って、幕営しながら道内を一周したり、MTBで四万十川の源流に行ってみようと仲間8人で計画して、フェリーに自転車を積んで出かけたりしましたね。当時はテントとか道具すべてが大きかったですし、自転車もクロモリで重くて。色々大変でしたが、いい思い出です。

    ゴールドウインに入社した後、トレイルランニングに魅了されて、STYに2回、UTMFは1回完走しました。一昨年はボランティアスタッフとしてUTMFのお手伝いをさせていただきましたが、来年は再びレースに挑戦したいと思っています。やっぱり我慢できなくなっちゃって(笑)。と言いつつも、実際は走るのが苦手なんです。でも、山は登り下りがあって平坦ではないから、ぼーっとする時間がない。そしてなにより山の匂い、自然の匂いが大好きなんです。

    レースに出るからにはリタイヤしたくないので、トレーニングのために山を走ったり、縦走したりするんですが、その時にmacpacの製品をテストして、本国にフィードバックしたり、日本企画アイテムの構想を練ったりしています。2018年の春からは日本企画のラインが始動し、日本のマーケットに合ったライフスタイルアイテムの展開をスタートします。アズテック素材を敢えて染めない無染色(生成り)タイプもこちらからお願いして作りました。日本限定モデルとしてスタートします。

    また、サコッシュやコインケースなど小物アイテムのバリエーションを増やしていきます。登山用はもちろんのこと、ライフスタイルでも永く付き合えるアイテムとして、みなさんに愛用してほしいなと。今後もmacpacの大きな特長のひとつであるアズテックという素材を使って、化繊にはない、自然な風合いを楽しんでもらえるようなモノづくりをしていきたいですね。

    1. 松田 清忠(まつだ・きよただ)
      1971年生まれ。大阪出身。小学二年生からスイミングスクールに通い、高校三年生まで水泳に没頭。大学時代は、キャンプしながら旅をすることの楽しさに目覚め、四万十川の源流を求めて探険するなどアウトドアにのめり込む。現在はトレイルランニングに魅了され、STY2回、UTMFを1回完走。ロードランニングよりも山のロングレースを好む。2006年ゴールドウイン入社。ヘリーハンセン、ノースフェイスの営業を経て、現在はマックパックと、ザ・ノース・フェイスのエキップメントの企画に携わる。本職と並行して簿記や販売士の資格取得、マーケティングも学び、多角的な視野で従事している。

    (写真 三浦安間 / 文 山畑理絵)

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