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HOW TO低酸素トレーニング 先端トレでスマートにパフォーマンス・アップ!
トレーナー 宮﨑喜美乃×青柳友梨(GOLDWIN)

2016.09.28

1960年代から注目されてきたという、高地環境によるトレーニング効果。高地と同様の低酸素状態を人為的に作り出し、その環境に順応しようとする生理反応を利用してトレーニングを行うというものです。オリンピックや世界選手権に臨むトップアスリートの多くが利用する最先端のトレーニングメソッドですが、一般向けにアレンジしたプログラムを展開するのが「NEUTRALWORKS. BY GOLDWIN」の低酸素ルーム、「OXYGEN with MIURA DOLPHINS」。2013年、80歳でのエベレスト登頂も記憶に新しい三浦雄一郎さんをサポートしているミウラ・ドルフィンズの低酸素トレーニングチームが監修を行っています。THE NORTH FACE事業部の青柳友梨がそのトレーニング概要と効果を、専属トレーナーの宮﨑喜美乃さんに伺います。

    《LESSON① まずは「低酸素状態」を理解しよう》

    「OXYGEN with MIURA DOLPHINS」では常圧の低酸素ルームを2部屋、備えています。地表の気圧は高度が上がるほど低くなるため、高地では酸素の濃度は変わらないものの酸素分圧が低くなり低酸素状態になります。一方低酸素ルームでは、気圧ではなく酸素濃度を調整することで酸素の量を少なくし、高地のような低酸素状態を作り出します。「OXYGEN with MIURA DOLPHINS」では標高に換算して2,000m〜4,000m相当の低酸素環境をシミュレートすることができるのです。ちなみに海抜0メートルあたりの酸素量はおよそ20.9パーセント、一方でエベレスト山頂付近となると約6.6パーセントにまで下がります。ヒマラヤの山々がいかに過酷な状況にあるか想像できるでしょう。

    ※資料提供 「MIURA DOLPHINS」

    それでは早速、トレーニングを始めましょう。今回は標高3,000m相当、酸素濃度14.5パーセントの環境の中でトレーニングを行います。低酸素ルームに入る前に、まずは腕時計型のモニターを装着します。モニター上段の数字は脈拍数を、下段は動脈血酸素飽和度を表しています。酸素飽和度は97〜100パーセントが通常の状態。90パーセントを切ると身体が酸素をうまく取り入れられていないことになりますが、酸素濃度が低くなると私たちの体は酸素を取り込みにくくなり、酸素飽和度が低下して酸欠状態に陥るのです。

    爪の血色が悪くなる、唇が青くなるなどの症状が出たら要注意。ちなみに標高3,000m安静時での酸素飽和度は平均88パーセント。登山者におなじみの高山病は酸素分圧の低下に伴う、人体に生じるさまざまな症状のことをいいますが、ひとつの要因として、酸素飽和度が下がりやすい人ほど高山病になりやすいと言われています。
    さて、低酸素環境において人体はそこに適応した酸素濃度を確保するため、心拍数を上げたり、血液の流れを早めたり様々な反応を起こし、必要な酸素量を効率よく取り入れようとします。こうした生体反応を利用してパフォーマンス向上を目指すのが低酸素トレーニングです。

    《LESSON② 低酸素トレーニングのメリットを知ろう》

    低酸素環境における酸欠状態を改善してくれる対処法が水分摂取と呼吸です。特に低酸素ルームでは呼吸を意識していただきます。上手に呼吸すると動脈血酸素飽和度の数値はすぐに上昇します。逆に、呼吸がうまくできていないと数値は改善されないか、さらに低下します。例えば標高4,000m地点においても呼吸を意識するだけで酸素飽和度は劇的に改善されます。このようにモニターに現れる数値の変化で自身の生体反応をモニタリングしながら、トレーニングを進めていきます。

    低酸素ルームで使用するのはトレッドミルやエアロバイクなどの有酸素運動用のマシーンや、コアを鍛えるバランスボール、ストレッチポールなど。パーソナルトレーニングなのでメニューは人それぞれ。通常は軽いウォーキングなどでウォーミングアップを行ってからダッシュやインターバル走などで心拍を上げ最大能力を伸ばす。または中強度のエンデュランス系トレーニングで耐久力を養うことが多いようです。

    低酸素環境で運動を続けると少ない酸素をより効率よく運ぶため、心肺機能や筋持久力を高める効果が期待できるほか、基礎代謝や脂肪代謝をアップさせることで効率よく脂肪や糖質を燃焼させることができます。また血中の乳酸の中和が促されるので、低地で行うよりも短時間で効果が得られやすいのです。
    例えばレースにおいて今まで以上のパフォーマンスを叶えたい、あるいは脂質・糖質の代謝をアップさせて生活習慣病を改善したいなど、トレーニングの目的もさまざまです。もちろん、THE NORTH FACE がサポートするアスリートたちも積極的に利用しています。アスリートから一般の愛好家まで、幅広い層に応用できるトレーニングメソッドなのです。

    生体反応をモニターしながら自分を追い込む

    青柳 現在、週に2回、8kmほどのランニングを楽しむファンランナーです。低酸素ルームではただ走っているだけでも「あれ?」っていうくらいキツくて。最後はバテバテを通り越して「ふわ〜」という状態になりました。

    宮﨑 トレーニング最後の追い込みでは、トレッドミルの傾斜をつけて負荷をかけつつ、速度も上げて走ってもらいました。また、トレッドミルでの下り坂走(逆走)はテクニックも必要とされるので、初めての方は1人で行う際、注意していただきたいですが、ランニングにとても有効的なので、今日は少しだけ試してもらいました。ただ“走る”ということに対しても、色々なアプローチが大事だということ知っていただきたくて。

    青柳 いまはロードを中心に走っているのですが、先日、初めてトレイルのレースに参加したんです。来年のSTY(富士山麓を半周するレース「STY=静岡から山梨(英名=SHIZUOKA To YAMANASHI)」)出場を目指して本格的なトレーニングをしたいと思っていたところだったので、いい経験になりました!ところで、低酸素ルームを利用される方ってどんな人が多いのでしょう。

    宮﨑 代々木にあるミウラ・ドルフィンズでは標高4,000〜6,000mという高地環境を求める登山家がメインですが、NEUTRALWORKS.TOKYOではパフォーマンスが低下してしまう高地でのレース(1,500~2,500m)で自分の力を最大限に出せるよう、トレイルランナーの利用が多いですね。低地と比べて同じ運動でも心拍数が上がるので、仕事が忙しい方でも短時間で効果を得たい方、種目に関係なく体力増強やダイエット目的といった利用も多いです。

    青柳 今日ははじめに走り込んだ後、BOSUというトレーニング器具を使ったバランストレーニング、さらにバランスボールを使ったコアトレーニングを10種、最後にトレッドミルの逆走という、なかなかハードなメニューで。

    宮﨑 世界3階級を制覇した女性ボクサーが、標高の高いメキシコでの試合の前に高地順応のために利用されたのですが、低酸素ルームでボクシングのミット打ち→30秒のレストというインターバル・トレーニングでコンディショニングをされたという例もありますよ。

    青柳 低酸素の刺激を体に与えるとどんなメリットがあるんでしょう。

    宮﨑 心拍数を上げる、血圧を上げるなど、生体反応の切り替えがスムーズに行われると考えられています。つまりスイッチの入りやすい身体を作るんですね。高地へなかなか行く時間がない方にもオススメです。

    青柳 同じトレーニング負荷でもより多くの心肺負荷をかけられるので、筋肉や関節に無理な負担がかからないと聞きました。今後はリハビリ目的などの利用も増えそうですね。

    宮﨑 同じフロアにあるストレッチルーム「REBOOTstretch by Re.Ra.Ku」との併用もオススメしています。プロスキーヤー、佐々木明さんとリラクゼーションスタジオ「Re.Ra.Ku」が監修するパーソナルストレッチプログラムを受けられるんです。いい状態に仕上がった身体でトレーニングを行えば、さらに効果的ですから。

    青柳 今日の体験を生かして、STYに向けてスイッチの入りやすい体を作っていこうと思います!

    1. 宮﨑喜美乃(みやざき きみの)
      1988年、山口県下関市生まれ。ミウラ・ドルフィンズ所属の健康運動指導士、低酸素シニアトレーナー。鹿屋体育大学修士課程にて登山の運動生理学を研究、修了後にミウラ・ドルフィンズの低酸素室にてトレーニングサポート及びデータ収集・解析などを行う。2016年4月より「OXYGEN with MIURA DOLPHINS」のトレーナーに就任。自身も小学校で陸上競技を始め、高校、大学ともに全国駅伝に出場したという長距離ランナー。近年はトレイルのレースにも積極的に参加、トレイルレース・デビューとなる日本山岳耐久レース(2014年)女子総合11位、IZU TRAIL Journey(2015年)女子総合2位、STY女子総合優勝(2015年)、SPATRAIL女子総合優勝(2016年)など入賞多数。週1・2回、低酸素ルームでのトレーニングを日課にしている。
    1. 青柳 友梨(あおやぎ ゆり)
      THE NORTH FACE 事業部PERFORMANCEグループ所属。東京都出身、10歳までをベルギーで過ごす。高校時代に熱中していたテニスで右膝の靱帯を断裂。リハビリをきっかけに、身体機能を向上させるトレーニングに目覚める。大学ではアスレチックトレーニングを学ぶ傍ら、体育会ラクロス部でチームトレーナーを経験するなど、さまざまな立場でトレーニングに関わるように。GOLDWINに入社後はさらに多くの層にスポーツやトレーニングの奥深さ、楽しさを伝えたいと、ランニングウエア&トレーニングウエアの商品企画・マーケティングに携わる。現在はランニング、ヨガ、キックボクシング、合気道と幅広いスポーツをマイペースで楽しんでいる。

    NEUTRALWORKS.TOKYO
    東京都港区北青山2-7-22 H・T・神宮外苑ビル
    ☎ 03-6455-5964(3F 予約受付)
    HP:http://www.goldwin.co.jp/neutralworks/

    NEUTRALWORKS.TOKYOの詳細は、こちらから

    (写真 阿部健 / 文 倉石綾子)

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