KNACK

スポーツを楽しむコツ

スポーツ・アウトドアの魅力や、ウェアのメンテナンスなど、
スポーツを楽しむコツを紹介します。

500mmは広角レンズ!? 野鳥撮影の奥深きギアを紹介

2019.02.26

野鳥撮影。なんだか特別な響きを持つアクティビティですが、少しその世界を覗いてみませんか? アウトドアに興味のある方ならきっと楽しめる、野鳥撮影のギアとノウハウをご紹介しましょう。

birdshooting

教えてくれるのは、THE NORTH FACE福岡店の森本勇輝さん。3年前から野鳥撮影を始め、いまでは休日のたびに野鳥を撮るためフィールドに出ているとか。九州のみならず、冬の北海道でも撮影するという森本さんが、フィールドでの使用を経てたどり着いたギアとは?

birdshooting

「今回の装備は、冬の北海道を想定したものになっています。この時期は、九州から北海道に行くバードウォッチャーも多いんですよ」そう語る森本さん。手元には、雪降る北海道で撮影したというタンチョウ鶴の写真が。まずは野鳥撮影時に持ってくるギア一式を広げてもらいました。

birdshooting

左から1.ビブパンツ、2.ダウンジャケット、3.長靴、4.カメラ、5.グローブ、6.バックパック、7.一脚、8.三脚

1.ビブパンツ RTGプロビブ(THE NORTH FACE)

バックカントリースキー用のビブパンツです。バードウォッチングでは静態していることが多く、お腹周りが冷えてしまうので、ビブパンツが必要です。北海道で探索をするときは、雪が腰の高さまで積もっている中を通ることもあるので、体に雪が入ってこないようビブが有効。

birdshooting

RTGプロビブは、防水性と引き裂き強度が高いのが特徴。バックカントリースキーでは枝に当たりながら登って滑りますが、これは山に入るフォトグラファーも同じです。このビブの下には、「レッドラン」(THE NORTH FACE)の化繊ダウンパンツを履きます。

birdshooting

2.ダウンジャケット ビレイヤーパーカ(THE NORTH FACE)

冬のアウトドアですごく使えるジャケットです。防水ジャケットの上から羽織れる作りになっていて、体温の調整がしやすいんです。内側も撥水仕様になっているので、付着した雪が溶けて濡れたシェルの上からでも着ることができます。フードも大きく、顔まわりもしっかり保温。北海道の条件下でマイナス20度でもある程度の時間なら耐えられます。

北海道では雪がとにかくすごいので、まずは雪を掘って壁にして、そこで待機します。体感気温もそれで少し安定します。

3.長靴

見ての通りの長靴です。水辺での撮影も多いので、泥がついています。1足クルマに積んでおけば、何かあった時でも安心です。

birdshooting

4.カメラ

NikonのD500を使用しています。スポーツ向けのフラッグシップモデルですね。シャッターが1秒に10枚切れて、被写体の追随能力が高いので飛んでいる鳥にバシっピントを合わせることができます。撮るときはずっと連写モードにしています。野鳥の表情は0.2、0.3秒でころころ変わりますから。カメラの映像素子サイズはAPS-Cです。500mmのレンズでも画角が750mm相当になるので、野鳥撮影ではAPS-Cが主流です。

バッテリーグリップも装着しています。バッテリーの持ちのため、というよりは縦位置撮影時の安定性と、そもそもレンズが重いのでボディとのバランスをとるために、使用しています。レンズは、「ゴーヨンレンズ」と呼ばれる基本のレンズです。500mmのf4です。野鳥撮影の世界では、どちらかと言うと広角のレンズです(笑)

5.グローブ (THE NORTH FACE/現在は廃盤)

僕はグローブにはかなりこだわる、グローブマニアです(笑) 今回持って来たのは、バックカントリースキー用のグローブです。よくあるゴアテックス製で中綿入りのグローブは、カメラを使用するときに扱いづらいんですよ。このグローブは全部フリースになっていて、柔らかく手に馴染んでカメラの細かいタッチを感じられるんです。そういう操作性の良いグローブを選ぶのが大事です。

それでも状況次第ではグローブを外して指先の感覚に頼ることがあります、しかしマイナス10度以下の環境では素手だとすぐに感覚が麻痺するため、インナーグローブをつけています。人差し指と親指には自分で穴を開け、直接ボタンに触れるようカスタマイズしています。

birdshooting

6.バックパック CHUGACH 40(THE NORTH FACE)

これもTHE NORTH FACEのバックカントリー用コレクションSTEEPのアイテムです。普通の40Lのバッグだと雨蓋がついているものが多いんですが、これは直でファスナーになっていて、荷物へのアクセスが容易です。背面がバカッと開くので、カメラバッグ的な使い方もしやすいところが気に入っています。雪の上に置いて、カメラや荷物を取り出すのには背面開きは便利です。

birdshooting

基本的に野鳥撮影ではレンズ交換をしないんですが、風景だったりそのほか違うものを撮りたいな、というタイミングで使えるように交換レンズをポーチで持っていくこともあります。

birdshooting

7. 一脚(GIZTO)、雲台(KIRK Enterprise Solutions)

野鳥撮影において一番使用率の高いアイテムが一脚です。基本的に、歩き回るときは三脚は持っていきません。カメラとレンズで5kgになるので、それを支える一脚、もっと言えばただ支えるのではなく、5kgが傾いた時にも支えられる一脚が必要です。なので、通常の三脚の雲台では役者不足です。KIRK Enterprise Solutionsの雲台は日本で売っているところが限られるのですが、36kgまで耐えられる強さがあります。他社の7kgに耐えられる雲台というのを試しましたが、すぐにお辞儀しちゃいました。

birdshooting

8.三脚(GIZTO)、雲台(sachtler)、ボールアダプター(hobbysworld.com)

では三脚が必要なときは何かというと、野鳥撮影の定番はビデオ用三脚です。カメラの向きを変えるときにスムーズに動くのと、強度がありお辞儀もしにくいからです。sachtlerの雲台は、安定感があります。三脚と雲台をつなぐボールアダプターは、さらなる安定性を求めて野鳥専門ショップのhobbysworld.comで発注しました。

birdshooting

9. その他 レンズ・三脚カバー

カモ柄なのは、どちらかというと人間の気持ちを満足させるため(笑)なのですが、多少は鳥の警戒心も薄くなるのを期待しています。冬の北海道だと、ものすごく気温が下がるので、鉄の製品は触れなくなります。カーボンの製品だと暖かく感じるのですが、それでも気温によっては冷たくなりすぎるので、こうしたネオプレン製のカバーをレンズや三脚に装着します。

birdshooting

寒い時期のウェアリングの基本

ストップアンドゴーを行うアクティビティを想定したレイヤリングが基本ですが、待機時間が長いのでより防寒面に重きを置いて考えます。オーバースペックじゃないか、と思うくらいのもの。THE NORTH FACEならヒマラヤンパーカや、バルトロライトといったアイテムが冬場は困らないかと思います。ただ歩き回る場面では、どうしても脱がざるを得ないので、ミッドレイヤーはフリースを着ます。汗の乾きも早くなりますし。登山もできるくらいのレイヤリングが理想です。個人的には丈が長めがいいので、STEEPのジャケットなどを着て、お腹が出ないようにしています。冷えは大敵です。

これがあると便利

カモフラ柄のシート
人によっては、テントを張ってその中からカワセミ・ヤマセミを狙うこともあります。僕の場合は、機動性を考えて動きやすいこういう種類のシートを使います。一箇所に止まって撮る時には、このシートにくるまって、狙います。動いていないと季節によっては虫が来ることもあるので、その防御幕にもなりますね。ハチなどは水場にも多いので、注意が必要です。

birdshooting

双眼鏡
今日は持ってきませんでしたが、双眼鏡はあるといいと思います。慣れてくると、肉眼でも遠くにいる鳥が何かわかってくるので、つい持ってこなくなってしまうんですが。バードウォッチングをするのなら必携です。

野鳥図鑑
僕は撮影現場には持っていかないですね。撮った鳥の種類の同定は家に帰ってからの楽しみにしています。オスとメスで見た目が全然違う鳥もいるので、撮っていても正直なんの鳥だかわからないこともあります。一般的にはメスの方が地味なことが多いですね。

birdshooting

若い世代にもっと野鳥を楽しんでほしい

野鳥撮影という、ちょっと変わったアウトドアアクティビティを日々楽しんでいる森本さん。若い世代がアウトドアを楽しむ中で、もっと自然を知っていくためのきっかけとして、野鳥撮影にトライしてほしいと語ります。森本さん自身、野鳥撮影を始めてからは、自然との付き合い方にも変化が訪れたそう。

「自然の中で一人で過ごすことがすごく楽しくなって来たんです。高い山を目指すのではなく、人の声も聞こえない静まり返ったところにひとりでいるときに、自然を強く感じます」

あなたも身近な野鳥を探してみるところから、始めてみませんか? きっと知らなかった自然に出会うことができるはずです。

  1. 森本勇輝
    1990年生まれ、長崎県出身。オートバイを愛好し、グローブには並々ならぬこだわりがある。TV局のカメラアシスタントを経て、THE NORTH FACE長崎店へ。野鳥撮影で身につけたスキルを発揮した長崎店のSNS投稿が評判となり、2018年10月より福岡店へ。一番好きな鳥は、生涯で初めて撮影したヤマガラ。

(写真 丹野 篤史 / 文 小俣雄風太)

RECOMMEND POSTS

RELATED SPORTS